教育予算確保、幼児教育無償化は進展はあったが、財源のめどが立たず
大学改革は既存制度との関連が不明確で、大学側の理解も進んでいない
【教育】評価の視点 | 2.8点(5点満点) 昨年:2.9点 |
評価の視点 |
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【初等中等教育】 |
【教育】個別項目の評価結果
初等・中等教育
OECD諸国など諸外国における公財政支出など教育投資の状況を参考とし、必要な予算を確保する 「教育振興基本計画」「新学習指導要領」で恒久的な財源確保、OECD諸国並(5%)の公財政教育支出を目指す |
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教育再生実行会議により、必要な予算額の試算は示される経済協力開発機構(OECD)は11月、2012年の加盟各国の国内総生産(GDP)に占める学校など教育機関への公的支出の割合を公表した。それによると日本はOECD平均の4.7%を大きく下回る3.5%となり、比較可能な32カ国中で5年連続の最下位だった。一方、教育再生実行会議は7月、「教育立国実現のための教育投資・教育財源の在り方について(第八次提言)」を安倍首相に提出した。同提言は「これからの時代に必要な教育投資」に関す施策を示す際、それぞれに必要な予算の試算額を併せて示している点にこれまでの提言と異なる特徴がある。例えば、「幼児教育の段階的無償化及び子ども・子育て支援新制度に基づく幼児教育等の質の向上」に約1兆円、「高等学校教育段階における教育費負担軽減」に約5000億円、「大学生の奨学金の充実など高等教育段階における教育費負担軽減」に約7000億円、「教育の革新を実践できる教師の養成・採用・研修の改革」に約2000億円、「安全・安心で質の高い国公私立学校施設の整備」に約1兆8000億円などを積み上げ、合計では約4兆4000億円となっている。 OECDデータを参照すること自体の妥当性に疑問も教育を「経済成長・雇用の確保、少子化の克服、格差の改善、社会の安定といった我が国社会が抱える課題を解決する鍵」と位置づけ、「未来への先行投資」として教育投資の充実を図っていくというものだ。しかしながら、OECDデータの見方については批判があり、単純にOECDデータを参照すること自体に疑問がもたれる。例えば、日本の子供(在学)数が試算に反映されておらず、それを反映すると日本の順位は9位に位置することになる。在学者一人あたりの公財政支出は、OECD平均を上回り13位となる。適正な数値のもとで、予算額ありきとしない議論が必要ではないか。目標達成には10兆円の支出増が必要だが、恒久財源確保のめどは立っていないまた、財源については、将来的に10%を超える消費増税をした場合、「税収の使途を年金・医療・介護・少子化対策に加え、『教育』にも広げることを検討」すべきとしているが、安倍政権は現時点では10%を超える引き上げには否定的である。そもそも増税は、税と社会保障の一体改革として国民の合意を得たものであるのだから、それ以外への使途については疑問であり、安倍政権が首を縦に振らないのももっともであろう。また、寄附など民間資金の活用による財源確保を提言しているが、これは安定的な恒久財源とはいえない。 そのため、先の予算確保の実現可能性は低いと言わざるを得ない。なお、前述のとおり、「OECD諸国並み」という目標の妥当性が疑問視されるが、仮に彼らの言う「OECD諸国並み」の水準にするためには、教育に対する公財政支出を約10兆円引き上げる必要があるその目標達成は極めて困難である。 |
全国学力・学習状況調査を全国一斉の学力テスト(悉皆)として継続的に実施し、全ての子供の課題把握、学校・教師の指導改善に生かす。土曜授業のさらなる普及を目指す。道徳教育については、道徳の特性を踏まえた新たな枠組みにより教科化し、誇るべき先人の伝記を学ぶなどわが国の伝統に根差した指導を充実する。 「人間力」「基礎学力向上」で全国一斉の学力テストに戻す他、土曜授業を実現、道徳教育の充実などを行う |
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【学力テスト】
平成 27年度の全国学力・学習状況調査(学力テスト)は4月に全員参加方式により実施された。そのためマニフェストで掲げた公約は実行した。 |
義務教育における「六・三」の画一的な学制を改革する。 世界トップの教育立国に向け6・3・3・4制の見直し等「平成の学制大改革」実施 |
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小中一貫校は法制度化により、浸透が期待される6月、小学校と中学校の9年間の義務教育を一貫して行う小中一貫校を制度化する改正学校教育法が成立した。小中学校と同じく、同法第1条で学校に位置付け、名称は「義務教育学校」とする。2016年4月から施行する。義務教育学校では既存の教員免許や、学習指導要領を活用することになるが、現在「6・3制」となっている小学校と中学校の学年の区切りは、学校が柔軟に決められるようになり、「4・3・2制」や「5・4制」などの多様な区切りも可能になる。前期課程(小学校段階)と後期課程(中学校段階)に分かれ、学校の形態は前期課程と後期課程が同じ校舎にある「施設一体型」、前期課程と後期課程などの校舎が別々の場所にある「施設分離型」の2タイプになる。 従来の「6・3」制の下で以下のような課題があるとされた。すなわち、中学校に進学した際にいじめや不登校が増える「中1ギャップ」や、子供の発達の早期化で、現状の学年の区切りでは対応できていない点などである。そして、これらの課題解決及び学力の向上を目的に今回の制度化が実施された。本制度前より一部の自治体が既に特例で小中一貫教育を実施していたが、今回の制度化で一貫教育の浸透が期待されるところである。 なお、文科省の実態調査によると、全国1743市区町村1130校の9割が「中一ギャップ」の解消について、「成果がある」と答え、学力向上に効果があるとした学校も4割を超えるなど、制度導入による効果が示唆されている。 一貫校の新設に必要な自治体の財源確保が課題但し、一貫校を新設する場合、市区町村が負担する1校あたり30億~50億円の費用が必要とされるが、このための財源を各自治体がどう確保するかは課題となる。 |
希望する全ての子供に幼児教育の機会を保障するため、財源を確保しつつ、幼児教育の無償化に取り組む 幼稚園、保育所、認定保育園、家庭での子育て支援を充実、幼児教育の無償化に取り組む |
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「第3子以降」の無料化方針は決まる12月、政府は幼児教育の無償化に向け、2016年度から子どもが3人以上いる年収約360万円未満の世帯を対象に、第1子の年齢にかかわらず、第3子以降の幼稚園の保育料を全て無料にする方針を決めた。保育所についても年収約360万円未満の世帯は3人目以降を全て無料とする。現行制度では保育園の場合、第1子が小学校入学前なら、第2子の保育料が通常の半額に、第3子以降は無料になる。第1子が小学校に入ると、第2子は半額負担から全額負担、第3子も無料から半額負担と負担増になる仕組みだが、来年度からは第1子の学年に関係なく、第2子の保育料はすべて半額に、3人目以降は無料になる。幼稚園に通わせる世帯の場合も現行制度では第1子が小学3年生以下なら、第2子の保育料は半額に、第3子以降は無料になるが、こちらも第1子の学年を問わずに負担軽減策の対象とする。 新たに必要支出総額は国と地方を合わせて、保育園分が370億円程度、幼稚園分では約55億円が見込まれている。幼稚園分は、高校無償化の対象に所得制限を設けることで浮いた財源を充てる。保育園分は当初、児童手当などの財源として企業が負担する「事業主拠出金」の活用を模索したが、財界の協力を得られず、これまでの予算の見直しによって財源を確保した。 「全ての子供」の無償化に必要な財源確保の見通しは立っていない以上から、昨年よりは進捗はしていることがわかる。だがそもそも自民党のマニフェストでは、「全ての子ども」を対象とすることを掲げている。しかし、3~5歳の保育料の無償化にかかるコストは7900億円であり、この財源確保の見通しは全く立っていない。そのため、「希望する全ての子供に幼児教育の機会を保障する」という目標実現は極めて難しい状況である。 |
高校授業料無償化については、所得制限を設け、返還不要の給付型奨学金の創設や、私立学校の高等学校等就学支援金の拡充、経済的に修学困難な専門学生への支援など、低所得者支援の充実や公私間格差の解消を図っていく。 高校授業の無償化は所得制限に転換 |
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所得制限と給付型奨学金は導入され、対象者も拡大所得制限の導入は昨年4月1日から施行された。この所得制限の導入により捻出された財源で低所得者支援の充実や公私間格差の解消を図ろうとしている。まず、高校生がいる市区町村民税所得割非課税世帯(年収250万円程度)の教育費負担を支援するため、返済不要で使途は限定せず、授業料以外の修学旅行費や教材費などに充てられる「高校生等奨学給付金」(給付型奨学金)が昨年4月に始まった。その申し込みが2014年度予算で計上した13.1万人分を大きく上回り、17万人分に上ったため、2015年度予算では給付額を一部増額、対象者も拡大した。また、公私間格差の是正のための施策として、私立学校等の就学支援金の加算の拡充を行った。これまでは私立高校生には公立高校の授業料相当の年額11万8,800円が就学支援金として支給されていたが、年収約250万円未満の世帯の加算を2倍から2.5 倍に、年収約250万円から約350 万円未満の世帯の加算を1.5倍から2倍に拡充した。年収約350 万円から約590万円未満の中間所得世帯についても、1.5倍を支給している。さらに、広く高等学校段階の学びを支援するという観点から、新たに専修学校(一般課程)及び各種学校のうち国家資格養成課程(中学校卒業者を入所資格とするもの。准看護師、調理師、製菓衛生師、理容師・美容師)を置くものも対象とした。 私立高校の授業料が増加する中、支援充実がどこまで図れるかは判断できない現時点の就学支援は概ね進捗していると評価できる。ただし、少子化による経営悪化を背景に、私立高校の平均授業料は、毎年、増加傾向を示している。そのため教育費負担が増加することになる。こうした中、低所得者への支援充実が今後どこまで図れるかは現段階では判断できない。 |
首長が議会の同意で任命する「常勤」の「教育長」を教育委員会の責任者とするなど、教育委員会制度を抜本改革 【2014年はマニフェスト、J-ファイル共に記載なし】 |
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必要な法改正は実現したが、自治体側の新制度への移行は進んでいないこれまで教育委員会が任命していた教育長を首長が任命し、その教育長が教育委員会を代表し、その会務を総理することや、総合的な施策の大綱を策定し、その協議等を行うため、総合教育会議を設置することなどを定める「改正地方教育行政法」が4月に施行された。新教育委員会制度の6月1日時点での運用状況を見ると、まず教育長については旧体制のままの自治体が多い。文部科学省の調査によると新教育長が誕生したのは都道府県・政令市で38.8%、区市町村で19.4%だった。教育委員会と首長が教育施策について議論する総合教育会議は、改正法で設置が義務付けられ、6月1日時点で同会議をすでに開いていた自治体は都道府県・政令市の68.7%、区市町村では39.8%あったが、一方で開催未定とした自治体も21.8%あった。自治体の教育行政の基本的方針である大綱について「策定済み」なのは、都道府県・政令市では17.9%、市町村では17.2%にとどまるなど、全体的に新制度への移行は進んでいない。 教育行政の継続性への懸念もあり、真に実効的な改革になるかは判断できないまた、新制度は各自治体の裁量に委ねられている部分が多く、運営面でも手探りの状態が続いている。例えば、これまでの制度では、教育行政の事務局の責任者である教育長(常勤)と、合議制の執行機関である教育委員会の代表者の教育委員長(非常勤)がおり、「長」が2人いると、誰が責任者かわかりにくいという問題があった。改正法では教育長が事務執行の責任者であり、執行機関の代表者となったので責任の所在は明確になったが、その分、権限が教育長に集中することになる。その場合、教育長のチェックは一義的には任命した首長が担うことになるが、チェック方法については各自治体で対応は異なる。以上のように、しばらくは試行錯誤が続くことも予想される。首長や教育長の権限が強まったことにより、各地の教育行政が個人によって大きく左右されないか、さらには、その交代によって教育行政の継続性、安定性に支障が出てくるのではないかなどの懸念の声も出されており、この教育委員会改革が真に実効的なものになるかは現段階では判断できない。 |
高等教育
高等学校基礎学力テスト(仮称)や大学入学希望者学力評価テスト(仮称)等、高等学校教育、大学教育等を接続する大学入学者選抜を抜本的・一体的に改革する。 |
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具体策を明示しなかった「中間とりまとめ」文部科学省の専門家会議である「高大接続システム改革会議」は9月15日、「中間まとめ」を発表した。このうち、大学入試改革については、現行の大学入試センター試験に代わる大学入学者選抜の仕組みとして、2020年度より「大学入学希望者学力評価テスト(仮)」を導入するとの素案が示された。 ただし、中間まとめでは新しい試験の具体的な問題例が示されず、2015年度中に行う「最終報告」に先送りされている。中間報告では、コンピューター上で出題、回答するCBT方式の導入も求めているが、新試験の対象となる50万人規模の生徒を対象としてCBT方式が使用された前例はなく、パソコン機器の整備やシステムの信頼性の確保、膨大な個人情報の管理のあり方などが課題となっている。また、CBT方式では、中間まとめでも指摘されている「思考力・表現力」や「学ぶ態度」をどのように測定するのか疑問が残る。一方、記述式を採用した場合、具体的な採点基準や採点体制の整備が必要となるが、その具体策も中間まとめでは示されていない。 3ポリシーを機能させるためには、大学側への具体的な指導が必要また、「高大接続システム改革会議」は、中間まとめの中で、大学改革の具体策として、「上記3要素について具体的にどのような能力をどのようなレベルで求めるか(アドミッション・ポリシー)」「どのような能力を身につければ学位を授与するのか(ディプロマ・ポリシー)」「どのようなカリキュラムを編成し、教育を行うのか(カリキュラム・ポリシー)」という三つのポリシーを各大学が一体的に策定し公表することを法令上義務付けることについて具体的な検討を進め、2015年度中をめどに法改正を行うべきだとしている。その上で、各大学が上記3つのポリシーに基づいて行う個別選抜の改革、具体的には面接等の手法や評価方法の開発などを文部科学省が支援し、大学入学希望者評価テストと組み合わせて入学者選抜を行うよう答申している。しかしながら先の3ポリシーは、大学設置基準で長らく設けられているものであり、名目上、設置認可を受けた大学は3ポリシーを機能させていることになっている。先に掲げた方針と現状との違いを明確にし、大学側に具体的に指導しない限り、容易に進展しないのではないかと思われる。 また、同中間まとめは、高校生の学力把握についても言及している。大学入学者選抜にも関連した高校教育について、高校生の学習成果を測る目的で「高校基礎学力テスト(仮)」を導入、2019年度~22年度の試行期間を経て、23年度から大学入試や就職活動に活用するとともに、生徒への指導改善や学校ごとの教育目標の設定にも役立てるとしている。しかし、導入予定は平成35年とされており、未知数のところが多い。 |
大学力の強化のため、大学ビッグバンを行うほか、世界トップレベルの大学は特区化し諸規制を撤廃 【出典:2014年J-ファイル】 |
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既存制度に屋上屋を重ねている「特定研究大学」「卓越大学院」2015年6月に発表された日本再興戦略の改訂版では、世界トップレベルの大学を排出することを目的に、国際水準を見据えた大学制度の改革を挙げている。その手段として、高い経営力と自由度を有し、国内外の様々なリソースを呼び込むことによりグローバル競争力を高めることを目的とした「特定研究大学」、異分野の一体的教育や我が国が強い分野の最先端の教育を可能とする「卓越大学院」の両制度を創設することが打ち出された。両者は、一部の大学を国が指定して改革への重点支援や規制緩和を行うものであり、マニフェストで触れられた「特区化」の一環であると見なすことができる。しかしながら、既に施行されているリーディング大学院制度や研究型大学(22大学が指定)との関係が不明確で、屋上屋を重ねているようにみえる。大学側も多発される施策を前に、様子見の状態で、肝心の担い手となる大学が容易に見えてこないのが現状である。世界トップレベルの大学という目標に対し、施策の妥当性が不明確また、世界大学ランキングの向上をめざし、スーパーグローバル大学創出支援制度も創設された。野心的な目標と指標を設定することが応募の段階で求められていたが、採択された大学の中には、実行可能性の低い目標と現実とのギャップを埋めるために四苦八苦しているところもある。同戦略では、これらの制度改革の成果目標をKPIとして出しているが、産学共同や資金調達に関する指標に偏り、大学の教育、研究双方の役割を見据えた指標とは言い難い。また、指標そのものの妥当性が問われるものも散見される。例えば、世界大学ランキングトップ10入りとある。世界大学ランキングは複数種類あり、どのランキングを目指すのか示されていない。日本で最も著名なタイムズ社のランキングで最もウエイトが重いのは、学者間で行われるアンケート調査による評判指標であり、先の施策を投じても評判が上がるわけではない。実際、スーパーグローバル大学創出を開始した翌年の世界大学ランキング(タイムズ社)では、東大、阪大などがランキングを大きく落としている。また、大学の研究力という点では、質の高い論文の世界比較をみても、下降傾向が続いており芳しくない。 施策を開始したばかりであるので断定は避けたいが、世界トップレベルの大学という目標に対して、これらの施策が妥当であるかについて疑問がもたれ、現状に鑑みれば目的に向かって進捗が見られない。 運営費交付金の配分方法の改革は、妥当性や実現性に様々な懸念「運営費交付金の傾斜配分」について日本再興戦略では、国立大学を3つの類型(世界最高水準の教育研究を展開する拠点、全国的な教育研究拠点、地域活性化の中核的拠点)に区分した上で、その取り組み状況について区分ごとのKPI(重要業績評価指標)に基づいた評価を行い、1.1兆円の運営費交付金のメリハリある配分を行うことを打ち出した。国立大学は、第3期中期目標・計画において、先の3分類からどの類型に属するかを自ら選択し、独自に指標を定めて記すことが求められた。そうなると、各大学独自の指標が列挙されることになるので、比較が困難になり、運営費交付金の傾斜配分の根拠としての妥当性を弱めることも懸念される。実際、運営費交付金への反映率は、現行の国立大学法人評価並みの1%前後という噂もあり、1.1兆円という数字も定かではなくなっている。これらの改革案には、いくつかの課題が残されている。まず、運営費交付金の配分方法に関する課題である。一般運営費交付金は相当部分が教職員の人件費であるため、先の3分類に応じて、単純に傾斜配分することは適当ではないだろう。例えば、教育に重点をおく「全国世界研究拠点」型の大学の場合、比較的外部資金を調達しにくいため、安定的に教育サービスを供給するためには運営費交付金に頼る必要があるのに対し、「世界最高水準の教育研究を展開する拠点」大学の場合には、比較的外部資金を獲得しやすく、研究者の人件費も競争資金で賄える可能性が高いことから、必ずしも基礎的経費に依存しなくてもよいかもしれない。 さらに、現在行われている認証評価および国立大学法人評価との整合性をどう担保するのかという問題に加え、新たな評価制度の導入にあたっては、後者の評価を自ら実施している大学側の反発が予想され、改革の実現性は保証されていない。 なお、国立大学のもう一方の収入の柱となる競争的研究費については、それに対して間接経費を30%措置し、それを直接経費に上乗せして大学へ配分することが明記された。しかしながら、科学研究費等については、既に間接経費30%の計上がなされていることから、既存の制度と何が異なるのかよくわからない。 文系学部の縮小が、成長戦略の目標に寄与するかはまだ判断できないまた、2015年6月に、文系大学の縮小について、下村前文部科学大臣より発表され、唐突な印象を否めなかった。下村前文部科学大臣は2015年6月に「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」という通知を発表した。その中で各大学が特色や社会的役割に関して行う「ミッションの再定義」を踏まえ、特に教員養成系学部・大学院、人文社会科学系学部・大学院について、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めることを求めた。実際に、文部科学省が10月に公表した国公立大学の2016~21年度の中期目標・計画の素案では、全86校のうち33校が、人文社会科学系学部・大学院の組織見直しを計画していることが明らかになっている。これに関して、現在、政府が進める一連の大学改革は中長期の経済成長戦略に位置付けられ、技術シーズを有する大学の機能強化によるイノベーション創出力の強化、およびそれを実現する人材育成に主眼を置いている。その点では、今回の見直しは上位の目標との整合性の取れたものであると見ることもできるが、一方で、イノベーションを生み出す人材には、文化・社会の多様性や歴史への理解、批判的思考といった幅広い素養が必要だという指摘もあり、文系学部の縮小が目標達成にどれほど寄与するものであるかは現時点で判断できない。 |
大学の9月入学促進と大学生の体験活動の必修化や評価単位化で採用プロセスに活用 【2014年はマニフェスト、J-ファイル共に記載なし】 |
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予算化は進んだが、大学側の盛り上がりに欠け、動きが広がるかは未知数文部科学省は2015年度より、「大学教育再生加速プログラム」の一環として、ギャップイヤー制度を導入する大学への支援を予算化した。既に学内に制度が存在する東大や国際教養大に続いて、12大学が採択を受けた。だが、ギャップイヤーを活用する学生の数や割合といった目標設定は大学側の考え方や判断に委ねられているためかプログラム全体の成果指標にも言及されていない。9月入学については、当初、オピニオン・リーダー的な役割を果たしていた東大もトーンダウンしており、国立大学の間では今一つ盛り上がりに欠けている。制度的には、現在一般的な2学期制(前後期制)を4学期制にして、秋季入学制を採る海外の大学とも行き来しやすくしようとする大学が出てきているが、この動きがどこまで広がるかは未知数である。 |
各分野の点数一覧
経済再生
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財政再建
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社会保障
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外交・安保
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エネルギー・環境
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地方再生
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復興・防災
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教育
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農林水産
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政治・行政・公務員改革
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憲法改正 |
評価基準について
実績評価は以下の基準で行いました。
・この3年間で未だに着手しておらず、もしくは断念した計画であるが、国民にその事実や理由を説明している
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1点 |
・着手して動いたが、目標達成は困難な状況になっている
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2点 |
・着手して順調に動いているが、目標を達成できるかは判断できない |
3点 |
・着手して順調に動いており、現時点で目標達成の方向に向かっていると判断できるもの
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4点 |
・この3年間で実現した。もしくは実現の方向がはっきりと見えてきた
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5点 |
新しい課題について
3点
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新しい課題に対する政策を打ち出し、その新しい政策が日本が直面する課題に見合っているものであり、かつ、目標や政策体系の方向が見えるもの。または、政策体系が揃っていなくても今後、政策体系を確定するためのプロセスが描かれているもの。これらについて説明がなされているもの |