安倍政権2年実績評価【財政】評価結果
【財政】総論 | 2.0点(5点満点) 昨年:2.7点 |
評価の視点 |
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日本の国・地方合わせた長期債務残高は1000兆円を超え、主要先進諸国中、最悪の状況にあり、財政の持続可能性が著しく脅かされている。そのような中、安倍政権は2012年の衆院選、2013年の参院選で財政政策における国民との約束として、財政健全化目標と12年8月に成立した社会保障と税の一体改革関連法に基づく消費税増税を判断する旨を掲げた。主にこれらについて評価する。 安倍首相は14年11月18日の記者会見で、15年10月に予定していた消費税の10%への引き上げを17年4月に先送りする考えを示すと同時に、財政健全化の目安になる基礎的財政収支(プライマリーバランス)を20年度に黒字化する目標を堅持する考えを表明した。 公約のフレーズだけで見ると、消費税の10%への引き上げについて予定通り判断したことから評価は高くなる。しかし、そもそも消費税の引き上げは民主党、自民党、公明党の3党合意に基づき成立した「社会保障と税の一体改革関連法」の中で引き上げが決まっており、増税分は主に社会保障政策の財源に充てられる予定であった。そうであるなら、先送りの際に、社会保障改革をどうするか、ということとセットでなければならない。しかし、社会保障改革については「次世代に引き渡していく責任を果たしていく」とは表明したものの、税と社会保障を一体して改革するという本来の道筋については何ら明示されなかった。また、2%分の引き上げを想定していた政策について今後どうするのか、という点についても明示されておらず、説明責任は不十分である。また、安倍首相は引き上げを見送った際の記者会見で、2020年度の財政健全化目標の達成に向けて、来夏に具体的な計画を策定すると表明したが、具体的な計画は提示しておらず、評価を下げざるを得ない。 一方、前述の記者会見において財政再建目標である基礎的財政収支(プライマリーバランス)を20年度に黒字化する目標を堅持する考えを表明した。しかし、内閣府の試算(14年7月25日)によれば、仮に15年10月に消費税率を10%に引き上げ、10年間の平均成長率を名目3%程度、実質2%程度と一番成長すると想定して計算しても、20年度は11兆円の赤字が生じることとなり、目標達成は難しい。更なる増税か歳出の大幅なカットが必要となるが、現時点で方策は示されておらず、2020年度の目標実現については難しいといわざるを得ない。 また、2012年の公約で自民党は5年間の集中財政期間を設定し、国・地方の公務員の人件費を年間2兆円削減することも盛り込んでいた。しかし、これについては未着手と判断せざるを得ない。 以上のことから、安倍政権2年の財政政策については他の分野と比べても、低い評価と言わざるを得ない。 |
【財政】個別項目の評価結果
2015年度にプライマリー赤字のGDP比半減、2020年度まで黒字化、20年代初めには債務残高比を引き下げる 【出展:2012年衆院選Jファイル】 |
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安倍首相は2014年11月18日、15年10月に予定していた消費税の10%への引き上げを17年4月に先送りする考えを示すと同時に、財政健全化の目安になる基礎的財政収支(プライマリーバランス)を20年度に黒字化する目標を堅持する考えを表明した。 まず、安倍政権は財政再建に関して13年8月8日の「中期財政計画」(閣議了解)において、15年度のPB赤字半減目標に対して、国の一般会計の基礎的財政収支を少なくとも各年度4兆円程度改善する旨の目標を掲げた。13年度予算の基礎的財政収支は23.2兆円、14年度予算は18.0兆円と5.2兆円の改善し、閣議了解で掲げた最低限度の目標は達成している点は評価できる。しかし、15年10月に消費税を10%へ引き上げることを見送ったことで、収支差に与える額は1兆円(税収見込みは1.5兆円減るが、社会保障充実も0.5兆円減るため)となり、来年度予算で1兆円の歳出カットを達成すれば理論上15年度の目標は達成できる。一方、内閣府の試算(14年7月25日)によると15年度のPB赤字半減を達成するための予算として74.4兆円を想定しているが、現時点での概算要求は75.9兆円となり、1.5兆円に加えて1兆円を更に削減する必要があり、15年度予算のPB赤字半減の達成は非常に微妙である。 次に、2020年度のPB黒字化については、安倍首相は11月18日の解散表明時に、来夏に2020年度の目標を達成するための計画を策定すると表明した。しかし、同内閣府の試算によれば、仮に15年10月に消費税率を10%に引き上げ、10年間の平均成長率は名目3%程度、実質2%程度で計算してても、20年度は11兆円の赤字が生じることとなり、目標達成は難しい。更なる増税か歳出の大幅なカットが必要となるが、現時点で方策は示されておらず、2020年度の目標実現については難しいといわざるを得ない。 |
消費税率引き上げは実施半年前に社会保障国民会議の結論を踏まえ、経済状況を確認の上、予定通り実施するかを判断 【出展:2013年参院選マニフェスト】 |
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消費増税の是非を判断材料となる7~9月期の国内総生産(GDP)速報値が2014年11月17日に発表され、物価変動の影響を除いた実質GDPが前期比で0.4%減、年率換算では1.6%減となった。これを受け、安倍首相は11月18日、消費税10%への引き上げ時期を当初予定の15年10月から17年4月へ先送りした。
しかし、今回の消費税見送りによって自公民で合意された財政再建と社会保障の一体改革がストップしてしまうことは明らかであり、消費税増税を前提として進められてきた政策についてどう対応するのか代替案を示し、説明する必要がある。また、17年4月に引き上げを延期したわけだが、経済状況が変わっても上げると表明した以上、その時に必ず上げるためのプロセスを同時に示す必要がある。そういった意味で、説明責任を果たしているとはいえない。
また、安倍首相は「国民生活にとって、そして、国民経済にとって重い重い決断をする以上、速やかに国民に信を問うべきである」として、11月21日に解散を表明した。消費税を先送りするという決断をしたわけだが、消費税増税法には景気条項(経済成長率や物価、各種の経済指標などを総合的に勘案して、増税の是非を最終判断する消費税増税法の付則18条)が付記されており、それに基づき消費税増税の見送りだけを表明することはできた。にもかかわらず、今回衆議院解散に踏み切った明確な説明はなされていない。
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5年間の集中財政再建期間に、国地方の公務員人件費を年間2兆円削減 【出展:2012年衆院選マニフェスト】 |
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2012年の衆議院選挙で示された公約であるが、その後5年間の集中財政再建期間が定められた形跡はなく、公務員の人件費2兆円削減についても未着手である。
【参考】
復興財源確保のために国家公務員の給与を引き下げる対応はしたが、それも13年度に打ち切られている。加えて、政府は2014年7月25日に閣議決定した「国家公務員の総人件費に関する基本方針」に基づき、8月15日、10月7日に給与関係閣僚会議を開催。政府は10月7日の閣議決定で、人事院勧告通り(8月7日)、14年度の国家公務員の給与改定を行い、一般職の月給を平均0.27%引き上げ、ボーナス(期末・勤勉手当)の支給月数を0.15カ月分増やし4.1カ月とした。この結果、今年度は820億円増となる。
一方で、人事院勧告は地域ごとの民間賃金の水準を公務員給与に反映させるため、全国共通に適用される俸給表の水準について、民間賃金の低い地域における官民の給与差を踏まえ、平均で2%引き下げる。但し、地域手当は段階的に引き上げられる。また、世代間の給与配分を適正化する観点から、俸給表の水準を平均2%引き下げる中で、50歳台後半層の職員が多く在職する高位の号俸の俸給月額について、段階的に引き下げ、18年4月1日に最大で4%程度引き下げるとしている。完全実施された平成30年度の段階で約600億円の人件費削減効果が見込まれている。
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評価基準について
実績評価は以下の基準で行いました。
・未着手、断念
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1点 |
・着手して動いたが、目標達成は困難な状況になっている
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2点 |
・着手して順調に動いているが、目標を達成できるかは判断できない
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3点 |
・着手して順調に動いており、目標達成の方向に向かっている
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4点 |
・この2年間で実現した。もしくは実現の方向がはっきりと見えてきた
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5点 |
※理由を国民へ説明していなければ1点減点としました。