言論NPOは12月14日の衆議院選挙を前に、2012年衆議院選挙でのマニフェスト、安倍首相の所信表明や施政方針演説などで、国民に対して約束した安倍政権の中心的な政策67項目を抽出し、2年間でどのような成果を出したのかを検証しました。この結果を、安倍政権2年の通信簿として、12月1日に公表しました。
その結果は、5点満点で2.5点となり、昨年の12月26日時点で行った安倍政権1年の評価結果(2.7点)から微減するという結果でした。
まず、安倍政権が最も重要視したのは経済政策で、目玉は「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「成長戦略」の三本の矢からなるアベノミクスです。昨年は3.2点でしたが、今回は2.8点と0.4ポイント下がりました。アベノミクスの最終的な目的は、第一の矢である金融政策によって円安・株高を実現し、これを契機とする企業業績の回復が民間設備投資の拡大、賃金上昇による持続的な個人消費の拡大に結び付く好循環を実現することです。この点からは、未だ十分な効果が発揮されたとは判断できません。数字でも鉱工業生産や輸出の数量などいろいろな数字で改善が見られています。そのため、改善のきっかけはつくっていますが、それが大きな力になり循環が確実に始まったとは言えないからです。しかし、好循環が今後起きないかと言うと、現時点では判断できません。そこで私たちの評価では大部分の経済政策の項目が3点、あるいは2点となりました。また、第三の矢である成長戦略は打ち出しているものの、なお不十分でした。
財政再建については、安倍首相は消費税引き上げを見送ることを表明した記者会見で、プライマリーバランスの2020年黒字化は堅持すると発言し、そのためのプランを来年の夏に策定すると説明しています。ただし、内閣府の試算(14年7月25日)によれば、仮に15年10月に消費税率を10%に引き上げ、10年間の平均成長率は名目3%程度、実質2%程度で計算しても、20年度は11兆円の赤字が生じることとなり、目標達成は現時点で難しいと判断せざるをえず、評価は低いものとなりました。
外交・安全保障については、これまで対立を続けてきた中国との対話を一応成功させ、韓国との関係改善の動きを進めています。地球儀を俯瞰する外交ということで、首相自身が世界を積極的に動いていることや、民主党時代に悪化した日米関係の改善も評価されました。それで昨年(3.1点)を上回る3.2点になりました。農業も3.2点と高く、減反政策を含めて、農業の自立に向けた首相の取り組みを評価しています。しかし、減反政策や農協改革には党内合意を得ていないものもあり、実現には今後の動きを見ていく必要があります。
エネルギー分野については。これからの日本のエネルギー政策の基本となるエネルギーのベストミックスについては、原発への判断が実質的に先送りされていることからまだ出せていません。審議会の状況を見ても、来年の統一地方選後に、なるべく選挙を避けて判断するような状況が垣間見られます。それに連動して、地球環境に対する目標設定ができなくなり、世界から遅れています。
社会保障について、今年は年金の財政検証も行われましたが、これまでの制度に問題があることが明らかなのに、持続的な制度をつくるための取り組みが遅れており、低い評価となりました。
ただ全体的に評価の対象となった2012年衆議院選、13年参議院選の自民党マニフェスト自体が約束として不完全で、それぞれの分野で将来像や理念に基づいた政策体系がまとまっていないことが、実績評価にも負の影響を与えています。また国民への説明が不足していることを理由に、福島原発の汚染水問題、特定秘密保護法など6つの政策で減点評価を行いました。特に、公約に書かれていない問題については国民に対する説明責任が問われています。
以上のように、全体的に各分野で低調な評価となった。各分野の詳細な評価結果は、下記の表の点数をクリックしてご確認ください。
なお、今回の評価には、言論NPOのマニフェスト評価会議から、湯元健治(日本総合研究所副理事長)、西沢和彦(同上席主任研究員)、池本美香(同主任研究員)、鈴木準(大和総研主席研究員)、内田和人(三菱東京UFJ銀行執行役員)、神保謙(慶應義塾大学准教授)、田中弥生(大学評価・学位授与機構教授)、山地憲治(地球環境産業技術研究機構(RITE)理事)、松下和夫(京都大学名誉教授)、小黒一正(法政大学准教授)等40氏にご協力いただきました。
各分野の点数一覧
経済再生
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財政
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復興・防災
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教育
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外交・安保
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社会保障
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エネルギー
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地方再生
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農林水産
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政治・行政改革
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憲法改正
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評価基準について
実績評価は以下の基準で行いました。
・未着手、断念
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1点 |
・着手して動いたが、目標達成は困難な状況になっている
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2点 |
・着手して順調に動いているが、目標を達成できるかは判断できない
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3点 |
・着手して順調に動いており、目標達成の方向に向かっている
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4点 |
・この2年間で実現した。もしくは実現の方向がはっきりと見えてきた
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5点 |
※理由を国民へ説明していなければ1点減点としました。