大石格 (日本経済新聞政治部次長)
金井辰樹 (東京新聞・中日新聞政治部)
倉重篤郎 (毎日新聞政治部編集委員)
牧野義司 (ジャーナリスト、言論NPO理事)
司会・工藤泰志(言論NPO代表)
日本の政治に旋風を巻き起こしたマニフェスト(政権公約)がなぜ、冷めてしまっているのか、政治の怠慢か、メディアの責任か――。
言論NPO(代表・工藤泰志)は5月11日、7月の参院選を前に「日本の政治へのマニフェスト・サイクル定着は可能か」といったテーマで、政治ジャーナリストの人たちと座談会を行ないました。毎日新聞政治部編集委員の倉重篤郎氏、日経新聞政治部次長の大石格氏、東京新聞・駐日新聞政治部記者の金井辰樹氏、それに言論NPO側から代表の工藤泰志、理事で経済ジャーナリストの牧野義司の5人。
座談会では、最初に、昨年の総選挙であれほど話題になったマニフェストが政治の現場に定着しないでいるのか、という点をめぐって、議論になりました。
「あとで、振り返ってみれば、総選挙は、政権選択の選挙ということで、盛り上がっただけ。本当の意味での政策を問うというマニフェスト選挙になっていなかった」「マニフェストの仕掛け人だった民主党自身が政権を奪取できなかったこともあろうが、彼らが、自らの敗因分析から始まって、マニフェストの作り直しをしなかった点が問題」という意見から「メディア自身も、政策の争点化を絶え間なく行なうことが必要なのに、結果的に、政治に対して緊張感を与える努力を怠ったことが大きい」「メディアにフォローアップ機能が不足していた」といった自己反省の意見などが出ました。
しかし、メディア側は、いま自民党首脳などの間で、参院選を前に、選挙に不利に働きかねない郵政3事業の民営化などの政策課題に関して、意識的に、問題先送りするムードがあることを問題視し、マニフェストサイクル、つまり国政選挙ごとに切れ目なく、重要なテーマに関する政策論議を作り出す必要がある、との点で、ほぼ意見一致しました。
問題は、どういった形で定着させるか、という点でしたが、この点に関しては、「イラク問題や年金問題などテーマをしぼって争点化していくとか、あるいは政権政党が公約を果たす努力を怠っている場合に、具体的事実をぶつけて責任追及していく厳しさが必要」「政策の実行などをチェックする実績評価を大胆に行ない、対応に問題がある場合には、政治の責任をしっかり問うことが必要だ」といった意見でした。
結論的には、マニフェストサイクルの定着は可能か、というよりも、定着させる努力が必要だ、ということでした。