代表の工藤が公約に切り込む
希望の党:細野豪志聞き手:
工藤泰志(言論NPO代表)
第二部:希望の党の公約について代表・工藤泰志が切り込む
工藤:では、私から質問します。言論NPOはどういう立ち位置かというと、有権者が主権者となり、主権者と政治がきちんと約束をして課題解決に取り組んでほしいということです。私たちが7月に行った世論調査では、日本の国民の6割が日本の将来に不安を持っていて、その解決を政党に期待することが出来ないという人が、また6割近くいた。それはなぜかというと、日本の国民が今、気にしているのは、日本の将来のことで人口減少と高齢化。そして最近出てきているのは北東アジアの平和、北朝鮮問題。それに対して政党が真っ向から解決策を競ってほしいというのが、基本的な認識です。従って、我々はそういう立ち位置から質問します。その前に、二つほどお聞きしたいことがあります。希望の党はよくメディアに出ているが、私たちにも分からないところがある。まず、これは政権を争う選挙だが、選挙の結果、誰が首相になり、どういう枠組みでやっていくのか。それを選挙の前に決めず、国民に説明しなくていいのか。
細野:希望の党は過半数である233人以上の候補者を出しているので、もちろん我々は政権の獲得を目指している。ただ、現実問題として、比例区単独の候補者を含めて233人を若干上回っている程度なので、単独過半数を取るのは相当難しい。そうなってくると、もちろん我々が中心で政権を担うことを目指すのだが、足りない分については何らかの他党との協力なり、そこから何人か希望の党に加わってもらうことがない限り、政権は取れない。そこはいろいろな可能性があるので、選挙が終わった後、柔軟に対応していくというのが我々の姿勢だ。
工藤:二つ目は、細野さん自身の話。細野さんが民進党をやめて新しい政党に加わる一つの大きな動機が、現実的な安全保障ということだった。それが今回の政策の中で、どう実現したのかをお聞きしたい。例えば、憲法問題に関しては、自衛隊も含めて「議論しましょう」という形です。それから、安保法制も含めて、今までと違って、何を新しい問題として提起されているのかよく分からない。
また、2012年の三党合意で、税と社会保障の一体改革が決まった。それが、野田政権以降の日本政治の大きな変化のドラマの始まりだったわけです。その時、細野さんは民主党政権の閣僚だったわけですが、三党合意を経て消費税を上げ、そして財政再建を図る。何よりも少子高齢化が進む日本の将来に備える決断をした細野さんが、消費税増税を凍結する側に回っていることに違和感がある。それはどういう考え方なのか。確かに、自民党の政策の立て方がどうだ、ということはあるが、そもそも政治家として日本の将来を見据えた場合に、消費税の持つ意味をかなり大きく考えていたはずです。そのあたりはどう説明されますか。
政権が破棄した三党合意には責任を持てない
細野:まず安全保障に関しては、安保法制が成立した当時、私は民主党の政調会長だった。ですから、尖閣諸島の問題に対応する法律と、周辺事態法を強化する法案を、党として作っていた。私の率直な気持ちとしては、限定的な集団的自衛権についても議論して結論を出したかったのだが、そこは時間切れで最終的な収斂はしなかった。ただ、少なくとも、主要な3つの変更点のうち2つについては法案を作った。ところが、当時の民主党の判断としては、国会に法案を提出することなく、反対だけに終始した。ですから、今回、希望の党としては、周辺事態、重要影響事態といっているが、朝鮮半島有事の後方支援についてはしっかりやっていく。ミサイル防衛に関わるような限定的な集団的自衛権についても、必要があれば認めていくということも、公約の中で書いている。一方で、国際平和支援法という法律があるが、地球の裏側に行ってアメリカがやるかもしれない戦争に参加するということ、ここについては相当慎重でいたほうがいいと思う。ですから、私が二年前に考えていたことと今との流れで言うならば、私は一貫していってきて、ようやくそれを比較的現実的に言える環境が整ったということだ。
三党合意は確かに歴史的だったと思うが、とっくに破棄された。消費税増税を2回も延期して、1回も話し合われていない。使途についても、当時さんざん議論したことが全く守られていないので、2012年夏の三党合意を持ち出して「責任があるから」と言われても、さすがにそれは責任を持てない。むしろ、動くお金に税金をかけるか、もしくは動かないお金に税金をかけるかというと、そこは少し発想を変えたほうがいい。消費増税をすれば、リバウンドはあるにしても必ず経済が落ち込むことは間違いないわけだから、そこを含めて税の考え方をもう少し慎重に考え直した方がいいと思う。
情報のない野党が財政再建の根拠を示すのは無理
工藤:今度は、希望の党の政策の中身について。政策の基本的な考え方、視点に関しては確かに斬新なものはあるが、何を具体的に、どういう形でいつまでにやっていくのか、ということが全く見えない。例えば、消費増税の凍結をする。しかし、凍結したことによる、社会保障の必要経費や財政再建に対する影響をどのように説明するのか。特に、財政・経済政策を一体でやると言っているが、財政再建に対する具体的な公約はない。例えば、自民党の公約について我々が厳しく見ているのは、プライマリーバランス(基礎的財政収支)黒字化について全く説明していない。希望の党は、財政再建に対する考え方をどのように説明していくことになるのか。
細野:2020年のプライマリーバランス黒字化は、長年政府が約束してきて、国際公約でもあった。今回、それが完全に反故にされたというのは、そもそも自民党サイドの前提が崩れているということ。政府ですら試算できないような状況と、これだけ政府が情報を隠蔽している中で、財政再建の考え方を全て示せというのは無理。だから、少なくとも凍結をした上で、どこに無駄があるのかについては具体的にかなり指摘しているし、税金の方法についてもいくつか提示している。それらもしっかり情報開示をしてもらい、我々としてやりうるなら計算したいと思うが、今の時点で、計算出来るだけの情報の開示がないということだ。
工藤:しかし、凍結することによって想定される財政収支への影響額が出てこない。また、赤字国債で埋めるということは先送りせざるを得ないという状況だから、その検討期間そのものの時間コストがかなり高い段階に、今の日本はあるのではないか。
細野:消費増税を二回先延ばししているのだから、その批判は全て、政府がお受けになった方がいい。先延ばししてどうしているのかといえば、いろいろなことで帳尻を合わせてやっている。国民としても、それを政府に許しておいて、野党に財政再建の計画を出せと責任を問うのは、ちょっと筋が違うと思う。
工藤:であれば、財政状況に対する認識はどうなのか。
細野:極めて厳しいと思う。
工藤:極めて厳しいというのは、どういう形か。持続可能ではない、ある期間でかなり厳しい段階に来る、どのような認識か。
細野:非常に厳しいと思う。公約にも書いているが、金融緩和を継続してきているから、簡単にすぐ収束させるわけにはいかない。しかし、それが収束する時に、国債が市場できちんと消化され続けるのかということも含めて、相当厳しいと思う。
公約の中では、金融の異次元緩和について、出口戦略をしっかり練らなければいけないという話をしている。日銀と政府との間で相当しっかりとやっていかないといけない、ということを書いている。逆に、急激に緩和をやめるということになるといろいろな混乱もあるから、そこは現実的な対応が必要だ。
金融緩和からの出口戦略は、急激な方針転換の危険性に配慮しつつ練る
工藤:公約では「ポスト・アベノミクス」を掲げています。アベノミクスの第一の矢と第二の矢に関しては、どのような立ち位置をとるのか。
細野:カンフル剤としての効果はあったと思う。我々は補正予算で、何でも財政出動でやるということに対しては慎重な立場だ。金融緩和については今やっているので、急激な方針転換は危険。そこは緩やかに、将来的な出口戦略については検討していく必要があると考える。「財政で景気回復」というのは、これまでも何度もやってきた方法だが、相当限界がある。やるとすれば相当戦略的に、例えば社会保障についても人生前半の部分にシフトしていくとか、限定したものでやっていくということだが、その持続性はあまりないと思う。だからこそサプライサイドの改革を徹底的にやり、そのことで経済自体の競争力を高めていかないと持続しないというのが、我々の考え方だ。
工藤:確かに、補正予算でどんどん財政出動するのはよくない、それは補正でやらないという話でしたよね。
細野:補正予算を全部やるなとは言わない。ただ結局、補正が織り込まれていて、補正の部分も政策の弾を用意して毎年やっている。そのチェックが甘いというのは繰り返されてきたことで、こういう既存のやり方は、我々はしないということだ。
工藤:今までの安倍政権では、税収増のかなりの額を財政支出に使っている。本来は財政赤字をもっと軽減出来たかもしれないが、財政政策にかなりウェイトを置いて支出していた。そのスタンスとは同じですか。それとも、財政政策はほとんど使わないということか。
細野:補正予算で帳尻を合わせて、本予算で確保できなかった予算を補正でやる、そのことによって財政のたがも緩んでいく、というやり方はよくないと思う。
工藤:日銀は昨年、軌道修正をし始めて、どんどん緩和するという形から方向を変えている。この軌道修正に対しては賛成ですか。それとも、緩和は今後も続けるという考えですか。出口戦略は慎重に練るとおっしゃいましたが、当面の異次元緩和は続けていくということなのでしょうか。
細野:スタートする時の判断と、既にやっていてこれからどうするかという判断は、当然違う。ですから、急激な方針転換はかなり危険を伴う。徐々に日銀が方針転換をしていくということであれば、それはやはり必要なのだと思う。
工藤:与党は「デフレ脱却」という目的を掲げているが、希望の党はデフレ脱却が政策目的にありますか。
細野:デフレ脱却はもちろん必要。しかも、現状は成功しているとは言えない。やはり実質所得が上がってこないと、デフレ脱却出来ない。コストプッシュ型のインフレは決して良いデフレ脱却ではないし、やはり実質所得が上がって購買所得が上がって、そのことによってものの値段が上がっていくというのが一番いい方法だから、そういう状況が達成出来ていないことは明確だと思う。
工藤:実質的な消費をベースにした経済の好循環を起こすということは分かったが、では、デフレ脱却の定義はそこなのですか。経済の好循環が起こるとデフレ脱却だ、という理解でいいでしょうか。
細野:デフレ脱却というのは、CPI(消費者物価指数)なりGDPデフレーターなり明確な指標があるので、それで測るのだと思う。なぜデフレ脱却が良いのか、デフレ脱却の目的は何かといえば、例えば為替が動くとか石油が高くなるとかということで、コストプッシュ型でデフレ脱却しても何の意味もない。そうではなくて、所得が増え、そのことによって消費が増え、そのことが設備投資にもつながっていくという好循環が出来ることに意味があるのではないかと思う。
工藤:消費増税凍結の理由は、経済回復の実感がないという話だが、経済指標を見ると、今、景気は非常に拡大する状況になっている。その要因は海外景気などいろいろあると思うが、ここまで完全雇用に近いような経済状況の中で消費増税を出来ないとすれば、どういうタイミングで出来ることになるのか。
細野:少なくとも今回、景気弾力条項がないこと自体が、おかしい話ではないか。もともとあったのだから。経済状況に応じて考えましょうということになって、増税出来ない状況を二回作ってしまった。これは、安倍政権の失敗だと言える。二年後の経済状況について完璧に予測出来る人はいないのだから、そういう中で本当に出来るのかについて慎重に考えるべきだというのは当然だと思う。
政治家の自己改革と政権交代の可能性を両立できる仕組みをどう作るか
工藤:議員定数と議員報酬の削減については、確かに「自ら身を切る努力をしたから」という話は、新鮮に感じました。具体的にどれくらい削減することが目的なのか。
細野:そこは出来たての政党だから、数までは議論が収斂していない。ただ、私は原発担当大臣として被災地に行っていたが、被災地で長靴を持っていなくて官僚におんぶしてもらうなど考えられない。そういう人が復興政務官をやっていたこと自体、信じられないが、そういう個人的な話ではなく、公的な部分でほとんど機能しているとは思えない議員が相当いる。衆議院だけでも削減は出来るし、参議院も含めて役割を考えた場合、すぐにバサッと削れないにしても、もう少し絞り込んでいくという少なくとも方針は示して、その上で霞が関にも切り込まないと、とても国民的な理解を得られないと思う。
工藤:今の話はある程度理解出来るところがあるが、全然違う切り口でお聞きします。今回の選挙結果はどうなるか分からないのですが、小選挙区で一人の候補者を選ぶとなると、かなり民意の大きな部分を得る候補者が当選する形になる。しかし、実質的には多くの人たちが選挙に行かないので、有権者全体の10数%の票で当選している国会議員もけっこういる。その人たちも含めて国民の代表と言えるのか。定数是正も含めて政治家のあり方を問うているのであれば、そのあたりについての理解をお聞きしたい。
細野:小選挙区制は、基本的には選挙区で一人を選ぶ選挙だから、非常に死票が多い。投票率が下がれば、確かに信任を得ている有権者の数が少なくなり、そこはいろいろ感じるところがある。ただ逆に、小選挙区だから政権交代が起こってきたという現実もある。今回、我々はもう一度、きちんと候補者を出して二大政党制を目指そうということでチャレンジをする。それに国民の皆さんがどういう審判を下されるか、というのは間もなくわかるが、私もどういう姿がいいのか、もう一度考えてみたいと思う。
時々言われるのは、「小選挙区で政党の公認をもらうと、既得権益になるので努力しない」とか、「政党の看板を背負っただけで当選する」とか、「むしろ中選挙区時代の方が同じ党内でも切磋琢磨があった」というところで、確かにそういう面はあったと思う。ですから、どうすれば政治家が常に自己改革をするだけの状況を作れるかということと、一方で政権交代可能な仕組みを作っていくかということ、ここをどう両立するか。私もまだ答えが出ていない。
原発ゼロの手段は省エネと再生可能エネルギー
当面の電源構成は火力に頼らざるを得ない
工藤:それは、これから細野さんだけでなく皆で考えないといけない、非常に重要な問題だと思います。私の方からあと二つ、質問があります。原発ゼロという公約も、考え方としては分かるが、どう進めていくのか。今の状況を見ると、今、再稼働しているものは5基しかないが、稼働40年以上の原発は廃炉するとしても、2030年に20基の原発が存在していることになる。どういう形で原発ゼロを目指していくのか。工程表が具体的になくても、「こういう考え方でゼロにするのだ」ということを明らかにしていただきたいが。
細野:原発政策については、私は、あまり答えの幅はないと思っている。例えば、原発推進と言う人に、「新しい原発を作るのですか、作るところはありますか」というと、もう立地地域はないので、出来ない。一方で、もう原発は絶対に動かさないで、「即ゼロ」という主張の人もいる。ただ、今、数基動いている。具体的には、PWR(加圧水型原子炉)の、しかも比較的津波のない高台にある原発が動き、原子力規制委員会が相当精査している。最低限の原発を動かすことを認め、即ゼロの立場に立たない、しかも新設はしないことになると、もうだいたい幅はこの辺。例えば、一番新しい原発が出来たのが2000年代前半だから、40年で廃炉するとなると、一番長くて2040年代前半くらいにゼロになる。それをどれくらい前倒しできるか、という話。原発を建て替えて40年以上稼働させる、という議論もあるが、基本的には40年というのは守っていくべきだ。だから、2040年代を30年代に出来るかどうか、30年代を30年に前倒し出来るかどうか。その程度の差。あとはどこまでやる気になるかどうかだ。安倍政権になって、いろいろな再生可能エネルギーの開発に対する熱意のようなものは、率直に言うと薄れていると思う。
工藤:確かに、与党側にとっても、2030年のエネルギーミックス実現のめどが、現実的に言えば見えない。野党がそこを突くということは出来ると思う。ただ、原発ゼロということになると逆に聞かないといけないのは、2030年の目指すべき電源構成のイメージ。例えば、再生可能エネルギーの比率は30%と、公約にある。2030年に原発の比率を20~22%にするというのが政府の計画だが、そうでないのであればどれくらいのイメージをしているのか。
細野:一番効果があるのは省エネ。例えば2011年の福島原発事故の時も、電力不足を乗り越えられた最大の要素は省エネだった。徹底して国民が省エネをし、例えばエネルギー消費量を2割削減できれば、2割分の電源コストは要らない。例えば30%の節電のようなものは、日本社会の中で出来ると思う。それがまず一つ。もう一つは、再生可能エネルギーをどこまで高められるか。この二つでどうバランスをとるかだ。
工藤:今の政府の計画では、火力発電をかなり中心に考えている。火力発電についての考え方はないのか。
細野:原発を動かさないとすれば、広い意味でLNG(液化天然ガス)も火力だとすると、火力と再生可能エネルギーしかない。ですから当面は火力でやっていくしかない。出来るだけ石炭ではなく、LNG、それも最新鋭のものを導入し、地球環境の問題をクリア出来る技術革新にしていく。LNGも含めて火力を全て否定するとなると、とても日本のエネルギーは回らない。神学論争みたいなことをやっても仕方がなく、どうやって現実的にやっていくのかというロードマップは既に作り始めたが、それをさらにレベルの高いものにしていく必要はある。
技術拡散を思えば、圧力を緩めて対話、というわけにはいかない
工藤:それは、なるべく早く出してもらえればと思う。最後の質問は、北朝鮮問題について。まず、北朝鮮を核保有国として認めないということですよね。そのためにどうしたらいいのか。
細野:当面は、国際社会としてしっかり圧力をかけていくということに尽きる。クリントン政権の時の核の危機で、圧力から対話に舵を切った。当時の羽田総理にも柿沢外務大臣にも話を聞いたことがあるが、相当緊張した状況の中でクリントン政権が対話に舵を切ったことで、胸をなでおろしたという。ただ、結果として核の開発が続き、よりレベルが上がり、広範な施設ができ、ミサイル開発が進んでしまった。世界が危機感を持った方がいいのは、今度は北朝鮮の中だけでなく、核やミサイルの技術が世界に拡散する可能性があるということ。これは日本とか東アジアだけの問題ではなく、世界の問題だ。それを認識した時に、簡単に圧力を緩めて対話、というわけにはいかないのが現実だと思う。
工藤:私は、圧力か対話か、という対立軸にはあまり意味がないと思う。圧力をかけて外交プロセスに持っていくのか、それとも場合によっては軍事攻撃もやむなしという判断をするのか。どちらでしょうか。
細野:そこは、圧力をかけて対話に引きずり出してくるということだ。そこについては、我々の政策で相当議論して書いている。安倍総理が国連の演説で「対話に意味がない」と言われた。あれはいろいろな文脈の中で出てきた言葉ではあるが、ギリギリの線で対話の余地をどう残すのかという戦略を、しっかり持っておかないとまずいと思う。
工藤:トランプ大統領が「全ての選択肢がテーブルに乗っている」と言っているが、希望の党としては、軍事攻撃はやめてもらって、圧力をベースにした外交プロセスにかけるという考え方か、それとも、あらゆる選択肢があるという考え方か。
細野:外交・安全保障については現実主義で行くというのが我が党の考え方。その立場に立てば、それが先制攻撃かというのはあるにしても、日本としては盾の役割はするが、矛の機能は持ち合わせていない。安全保障とは総合力だから、軍事攻撃の選択肢を持っているアメリカと同盟関係を組んでいることが抑止につながっている面はあると思う。
あとは、トランプ政権が日本との間で外交的な対話の戦略を練れているかというのは、ちょっと不安。ティラーソン国務長官、国務省と大統領の連携がどうかということはよく言われているし、国務省とホワイトハウスとで本当で一枚岩でやれているのかもやや不安だ。
工藤:現実主義で行くということになると、アメリカ合衆国憲法の修正25条に規定されているように、トランプ大統領がやっていることをマティス国防長官が反対するとか止められない限りは、戦争になる可能性があるわけで、日本の政治はそれを国民にしっかりと伝えるべきだと思う。つまり、「我々はあくまでも現実主義だけれど、北朝鮮を核保有国として認めないという立ち位置で行くのだ」と言うべきだと思うが、政治家はみな曖昧にしている。多くの国民は不安になっていると思うが、そのあたりは曖昧にしないでいただきたい。
二つ目に、圧力をかける手法として、希望の党として何をするのか。国連決議を徹底的に履行するという選択肢だけか。もし希望の党が政権を取ったら、私たちはどのような可能性を抱けばよいのか。
細野:外交・安全保障で野党が独自性を発揮すべきかどうかということに関しては、私はそのことにそれほど価値を見出していない。むしろ、外交・安全保障、特に北朝鮮のような緊張感が高まっている問題については、現実的な対応をしていくという意味では継続の方が大事だ。唯一、自民党政権と違う可能性があるかなと思うのは、例えば核兵器禁止条約に日本は入らなかった。私も外交を経験していたから、アメリカとの関係が非常に難しいのはよく分かる。ただ、世界は核廃絶を目指しているということが、もちろん核保有国に対してもいろいろなプレッシャーにはなるのだが、一方で核保有を目指して驀進してきた北朝鮮に対するプレッシャーにもなると思う。ですから、私は批准を検討すべきだと思う。
工藤:今の状況が核拡散の脅威ではなく、核抑止の段階だとした場合に、核抑止の力を強めるために、日本にアメリカの核兵器を持ち込ませる。自民党の中ではそういう発言をする人がいるが、希望の党の考え方は。
細野:過去、岡田外務大臣の時にアメリカの核持ち込み疑惑を検証したが、時代が変わってきているので、日本に核を持ち込むことも戦略的な意味はあまりないと思う。爆撃機がアメリカからすぐ飛んでくることも出来るし、遠くからも弾頭を発射出来る。一部戦闘機にも核を積めるわけで、それは日本にいなくても飛んでこられる。潜水艦も相当自由に動けるようになっているので、あえて日本に核が存在することの戦略的な意味はあまりないと思う。
多分、石破元防衛大臣などの頭の中にあるのは、「そういう選択肢もある」という議論が日本から出てくることで、国際的にいうと「日本もそこまで考えるのか」ということになり、北朝鮮に対するいろいろな圧力を加える上でプラスになる面があるのではないか、と戦略的に言われたのだと思う。
工藤:その発言は理解出来るか。
細野:石破さんらしいといえば石破さんらしいな、と思って聞いている。