「今回の選挙で各党は日本の課題にどう向かい合っているのか」立憲民主党編

2017年10月17日

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立憲民主党の公約説明

福山哲郎:立憲民主党幹事長


⇒ 代表の工藤が公約に切り込む
⇒ 評価委員と公約を更に深堀りする

 これまで10月22日の投票日に向けて、有権者の皆さんに判断材料を提供してきました。言論NPOの最後の取り組みは、政党のマニフェストの内容に切り込むことです。
 一体、日本の政党は、日本が直面する課題を真剣に考えているのか、その解決に本気で向かい合おうとしているのか、さらに、選挙目当てで甘い話に逃げていないか。
 主要5党の政策責任者にマニフェストからは読み解けない疑問点を直接ぶつけ、議論した模様をお届けします。
 立憲民主党からは、福山哲郎氏にご参加いただきました。まず、今回の公約についての説明と、工藤からの疑問をぶつけてみました。

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第一部:立憲民主党は何を訴え、選挙に臨むのか

kudo2.jpg工藤:言論NPOの工藤泰志です。今日は、立憲民主党幹事長の福山哲郎さんに、言論NPOの事務所に来ていただきました。立憲民主党が今回の選挙で何を実現しようとされているのか、そもそも立憲民主党はどういう役割を果たす政党なのか。これについて簡単に説明していただいた上で、我々の質問に答えていただきたいと思っています。では、福山さん。よろしくお願いします。

北朝鮮情勢の緊迫や、豊かさを実感できない国民生活を置き去りにした解散に強く抗議する

IMG_2785.jpg福山:10月3日に結党いたしました立憲民主党の新米の幹事長であります、福山哲郎です。どうかよろしくお願い申し上げます。まだ結党から10日ほどしか経っていない立憲民主党ですが、この党はまず旧民主党、民進党からの政策理念を引き継ぎ、さらに申し上げれば、その政策理念をよりブラッシュアップをした形、この国に政治をまっとうな政治に取り戻したいという思いで結党いたしました。

 皆さんご案内のように、この解散総選挙の意義すらまだ明らかではない状況で、選挙が行われています。北朝鮮の問題がこれほど緊迫しているにもかかわらず、我が国の首相や外務大臣は国連総会で各国首脳に制裁の強化や理解を求めたにもかかわらず、国連総会から帰ってきてすぐの解散総選挙はあまりにも説得力がなさすぎます。もし北朝鮮問題に対して、この選挙期間、何らかの北朝鮮の動きがないという根拠があるなら、それを国民に示していただきたいと思いますし、北朝鮮問題に対する危機管理も含めて、まず、この問題については北朝鮮を放ったらかしという感じがしています。

 二つ目は、巷間言われている、加計学園・森友学園のふたをする解散だということです。この臨時国会で新しい事実が出てきて追及されることは必至でした。さらには、加計学園の設置の認可が下りるか下りないかというさなかに、解散総選挙ということになりました。このことも、国民の不信を大きくしています。

 そして、最も大切なのは、国民の生活です。アベノミクスでなかなか豊かさが感じられない状況の中で、この解散は、まさに消費税を上げるということも含めて国民生活をないがしろにしている解散だということで、こういったことについてまず強く抗議したいと思います。

 排除と分断の政治が行われ、そして多くの皆さんが将来を不安に思っています。特に、あの安保法制に関して言えば、2年前、国会前に10万人以上の方が来られて、廃止を訴えられました。我々立憲民主党は、安保法制について今まで通り、違憲の問題であるということも含めて筋を通していきたいと考えています。一方で北朝鮮問題があることは重々分かっていますので、我々がもともと言ってきました領域警備法の制定や周辺事態法の強化等々、現実的な安全保障政策を憲法の枠内でやっていくということは、責任を持って皆様にお約束していきたいと思います。

 今回、枝野代表が一人で呼びかけられた立憲民主党、たくさんの皆さんに参加をいただいて、比例・小選挙区合わせて78名に立候補していただきました。本当にありがたかったと思います。その立候補者の皆さんとともに約束しているのは、ここにあります「国民との約束」です。主に5つの項目で約束をさせていただいています。


中間層の回復なくして経済再生なし。
  奨学金拡充、介護人材確保による将来への安心を消費拡大につなげる

 一つ目は、「生活の現場から、暮らしを守る」ということです。今のままでは、中間層の激減が止まりません。中間層が激減している中で、本当の意味で経済が再生することはないと考えています。保育・教育・医療・介護の分野での、まず人材の確保。これは待遇の改善も含めてやらなければいけないと思います。一方で、女性に対する雇用差別、そして我々が民主党政権のときにもやっていた、子どもたちの学びを支援するということを総合的にやっていきたいと考えています。子どもたちに対する支援は、もちろん高校無償化の所得制限の廃止、大学・専門学校等の奨学金の拡充、就学前教育のできうる限りの無償化、と言いたいところですが、これは全て財源が関係してきます。しかし、一方で、このことを充実させることによって、将来の安心につながり、それが消費につながっていくという経済をつくっていきたいと思います。基本的には、最低賃金の引き上げ、そして同一価値労働同一賃金の実現、保育士、幼稚園職員、介護職員の給与引き上げ等々もやっていきたいと思いますし、高校無償化等の所得制限廃止もやっていきたいと思います。

 財源については、予定されている消費税の10%への引き上げは、今はその時期ではないと考えています。その分、所得税、相続税、金融資産課税をはじめ、再分配の機能を強化していきたいと思います。


使用済み燃料の問題も含め、原発ゼロへの工程表をこれから示していく

 二つ目は、「一日も早く原発ゼロへ」です。東日本大震災のときに内閣官房長官をしていたのが枝野代表、副長官が私でした。原発は一度暴れだしたら人間の手に負えないことを最も目の当たりにした二人が今、この政党にいます。福島の皆さんにも、本当にご苦労を、今もおかけしています。しかしながら、我々が導入した再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度によって、実はこの5年で、設備容量でいえば、稼働率を考えても、原発約20基分が再生可能エネルギーで賄えてきています。燃料電池の技術革新、そして省エネの技術革新等々、世界は脱原発のライフスタイルをつくっていく競争に入っています。私は、原発ゼロはスローガンではなくリアリズムだと考えています。立地自治体に対するケア、雇用、それから使用済み燃料の問題も含めて具体的なロードマップを示していくことが必要だと考えています。

 三つ目は、自民党政権と最も異なるところですが、我々は多様性を大切にする社会をつくっていきたいと考えています。実は、多様性は強さです。あらゆる差別に反対をして、社会の分断をなくしていきたいと思います。LGBT(性的少数者)の差別の解消や、性暴力被害者への支援センターの設立。枝野さんが国会議員になってからずっと提出し続けている選択的夫婦別姓の実現、障碍者の差別等々についても、我々はしっかりと対応していきたいと思います。ヘイトスピーチやいろいろな差別、分断が、ネット上も含めて非常に窮屈な日本社会になっています。こんなに息苦しい日本の社会は、近年そうなかったと思います。少し空気を解き放して、のびのびとできる社会にしていきたいと考えています。また、(手話を一つの言語として認める)手話言語法は、枝野さんも私も何とかつくっていきたい法律のうちの一つです。

 四つ目の約束は、情報公開です。森友学園・加計学園の問題、防衛省の日報問題。まさに、「文書は捨てる、記憶はなくす、証人喚問・参考人質疑委はしない」。こういった国会は、民主主義の装置としての国会を本当にずたずたにしています。国民の信頼も落ちています。情報公開法の改正、それから政府の情報隠蔽の阻止。さらに言えば、少し観点は違いますが、我々が政権のときにやっていました、NPOや中間支援組織を応援する「新しい公共」のさらなる推進。さらには、取り調べの可視化を含めた、国民から信頼される司法制度の確立等々についても、我々はしっかりやっていきたいと思います。

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立憲主義とは、憲法により権力が制限されること

 五つ目は、立憲主義を回復するということです。安保法制をはじめとして、立憲主義に基づくこの国の国家運営をしていきたいと思います。安全保障については、安保法制を前提とした、安倍総理の言われる9条3項の改正には反対します。一方で、基本的人権の尊重や、知る権利の拡大のための憲法改正に対しては、我々は積極的に議論を進めていきたいと考えています。私たちは、日米同盟は大切だと思っています。特に、日米韓の協力は不可欠だと思っています。このことは、枝野さんが官房長官、私が副長官のときにも進めてまいりました。一方で、共謀罪は、民主国家に逆行するものとして廃止を訴えていきたいと思いますが、水際対策、入管行政の強化によるテロ対策等もしていきたいと考えています。

 さらに言えば、地域を立て直すことは大変重要な課題ですから、農業者の戸別所得補償制度の復活や、森林管理と言ったことについてもやっていきたいと思いますし、災害からの復興は、我々としては原点です。福島の復興に寄り添うこと、また岩手・宮城の復興に寄り添うこと、そして東京電力の福島第一原発の廃炉処理等々についても、しっかりと、働いている方々のケア、さらにはコミュニティ支援、自主避難者の皆様への生活支援等々についてもやっていきたいと思います。また、地震だけでなく気候変動、地球温暖化の問題も含めて、これだけ異常気象が日本でも頻発するような社会にもなりました。災害への対応についても、しっかりとやっていきたいと考えています。

 我々は立憲主義に基づく政党として、今、国民の皆さんにご支援を訴えています。立憲主義というのは、政治権力が一部の恣意的な支配によって好き勝手することではなく、憲法に基づく法律によって、権力側が一定の制限をされるという考え方です。また、我々は自由で公正な社会を目指しています。リベラルだ、保守だと言っても、その定義は日本では曖昧です。あえて言えば、リベラルとは自由で公正な社会を目指すことだと思います。互いの違いを認め合って、お互いが支えあう社会を我々はつくっていきたいと思います。この「国民との約束」に示したものを一つ一つ実現することによって、日本の政治をまっとうな政治に戻していく。そして、右でも左でもなく前へ進めていく。そういった理念、政策、立ち位置をはっきりと、枝野幸男代表とともに示して、国民の皆さんのご支援をいただいていきたいと思います。皆さんのお力添えを心からお願い申し上げます。

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