評価の視点
現在の日本経済の状況は、企業収益や雇用などミクロの面では非常に好調である反面、実質経済成長率は0%前後で低迷しており、消費者物価も再び前年比マイナスとなるなど低下している。マクロ経済面ではアベノミクスの目標(実質2%、名目2%以上の成長、物価目標2%)には遠く及ばない状況にある。
こうした経済状況を招いた原因として、消費税率引き上げの影響が予想以上に大きかったことに加えて、アベノミクスに3つの誤算があったと考えられる。1つは異次元緩和によって円安をもたらし、そのプラス効果が全国津々浦々まで浸透していく、いわゆるトリクルダウン効果が生じると考えていたが、現実的には、地方経済は疲弊を続けており、地方にアベノミクスの恩恵が回っていない。2つ目に、企業に賃上げを要請し、その結果として、消費が増えて経済が回っていくと考えたが、実質ベースでみた賃金がほとんど伸びず、消費の回復力も弱い。3つ目として、円安によって企業の国際競争力が回復し、力強く輸出が伸びると期待したものの、円安になっても企業の競争力の回復には結びつかず、世界経済の下振れもあり、輸出の景気けん引力が期待したほどには高まらなかった。
この結果、企業収益の回復が賃金の増加や設備投資の増加につながる「経済の好循環」が期待されていたが、力不足が露呈しているのが現状である。
こうした状況下で、各党が今回の選挙で示さなければならないことは、次の3点である。第1に、異次元緩和や財政政策という一時的しのぎではなく、本当の意味での生産性や潜在成長率を引き上げるために、実効性の高い成長戦略を具体的に提示しているかどうか。第2に、格差の拡大や社会保障に対する将来不安を解消するために、社会保障をどう充実していくか、さらに、雇用問題や教育問題といった中長期的な課題に対して、実効性の高い対応策を出しているか。そのための具体的な財源や、いつまでに達成するかという達成時期など明確な目標設定がなされているのかどうか。第3は、持続的な経済成長を実現する上でも、財政健全化という目標を達成する上でも中長期の視点で、少子高齢化や人口減少問題に正面から取り組もうとしているのか。具体的かつ実効性の高い政策を提示しているのかが問われることになる。中期的に消費税をどうするのかという視点を提示しているのかどうかも、財政規律をどこまで重視しているのかを示すメルクマールとなる。
以上の点を中心に、各党の公約を評価していく。
【 評価点数一覧 / 自民党 】
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
|
6
|
目標設定(10点)
|
3
|
|
達成時期(8点)
|
2
|
|
財源(7点)
|
0
|
|
工程・政策手段(5点)
|
1
|
|
合計(40点)
|
12
|
|
実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
|
8
|
課題解決の妥当性(20点)
|
5
|
|
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
|
5 | |
合計(60点)
|
18
|
|
合 計
|
30
|
【評価結果】自民党 マニフェスト評価 合計 30 点 (形式要件 12 点、実質要件 18 点)
【形式要件についての評価 12 点/40点】
自民党の公約では、「『経済の好循環』を、さらに加速。」として、「一億総活躍社会」の実現に向けて、回り始めた経済の好循環をさらに加速させ、「経済のパイ」を拡大すること、あらゆる政策を総動員して、戦後最大のGDP600兆円の経済を目指すこと、さらに、拡大した「経済のパイ」を分配し、さらなる成長につなげる「成長と分配の好循環」を構築することが掲げられた。自民党が目指す経済理念やあるべき姿を明らかにしている点は一定の評価ができる。
しかし、自民党は2014年の衆議院選挙の際のJ-ファイルには「『三本の矢』で10 年間の平均で名目3%程度、実質2%程度の経済成長を達成し、雇用・所得の拡大を目指す」ことを掲げていたが、こうした数値目標は、政府の「骨太の方針」に盛り込まれたとはいえ、今回の公約、ならびにJ-ファイルに盛り込むことは見送られた。
さらに、安倍首相は15年9月24日の記者会見で「2020年頃にGDP600兆円」の達成を目標に掲げたが、今回の公約には達成時期は明示されなかった。政府の成長戦略の中では、目標年次が2021年度と明記されており、1年間先送りした形となっているが、その理由については説明がなされていない。内閣府が示す「経済財政の中長期試算」では、この「実質2%・名目3%」の成長率を下に2020年度のGDP600兆円の見通しが当初示されたが、2010年度の鳩山政権時では661兆円、日本再興戦略が初めて出された2013年度は620兆円、2016年1月の中長期試算では20年度の名目GDPは592兆円と、年を追うごとに2020年度のGDPが下がってきている中、GDP600兆円の目標を掲げるのであれば、成長率の目標と合わせて、達成時期や工程についても今回の選挙で有権者に説明すべきだったと考える。
その他、ローカルアベノミクスの推進、イノベーションによる生産性向上と働き方改革による潜在成長率の引き上げ、IoT、ビックデータ、AIなどによる第四次産業革命などを掲げているが、具体的数値目標はなく、スローガン的な政策がほとんどである。目標を掲げた政策として、訪日外国人旅客を2020年度に4000万人、旅行消費額8兆円、農林水産物の2020年度輸出額1兆円、「超低金利活用型財政投融資」などにより今後5年間で官民合わせて30兆円の事業規模を確保することなどを謳っているが、その範囲は限られている。
また、一億総活躍社会のスローガンの下、女性の活躍推進、子育て支援、介護・高齢者支援、若者支援などの施策が示されているが、その財源については明示されておらず、工程・政策手段についての明示はいくつかの分野において見られる程度である。
【実質要件についての評価 18 点/60点】
アベノミクスの最終的な目的は、第一の矢である金融政策によって円安・株高を実現し、これを契機とする企業業績の回復が民間設備投資の拡大、賃金上昇による持続的な個人消費の拡大に結び付く「経済の好循環」を実現することである。この好循環を実現する鍵は、第三の矢である成長戦略の着実な実行によって、民間企業のリスクテイクを促すとともに、企業業績の回復が賃上げ、個人消費の拡大という形での景気回復メカニズムを発揮できるかどうかにある。そうした点では、課題抽出、課題解決の手段等の方向性は正しい。
ここで、アベノミクス3年半を振り返ると、有効求人倍率が1.34倍と24年ぶりの高水準で、就業者数は110万人増加している。また、企業収益も過去最高70.8兆円になるなど、ミクロの数字を見れば、非常にいい経済指標が出ており、確かに成功といえる部分はある。一方で、マクロ経済の指標については、安倍政権3年間の平均で見てもわずか0.6%の低成長率となっており、また、消費者物価指数の2%目標もゼロからマイナスに逆戻りとなっている。
第一の矢である金融緩和、第二の矢である財政政策に依存して一時的に経済成長率をかさ上げしても、結局、第三の矢である成長戦略がスピーディに進んでいかなければ、力強い経済成長とはならないことはこの3年半の経済状況を振り返ってみても明らかである。今回の公約に書かれた600兆円目標を達成するための道筋は、潜在成長率の引き上げが具体的にどう実現するかが不明なため、未だ見えない。目標達成のための政策実行の体制やガバナンスは、従来の経済財政諮問会議や産業競争力会議に加えて、一億総活躍国民会議が設置されたが、今回の公約を読んだだけではこの三組織の役割分担や責任体制は不明である。公約には、様々な個別政策が羅列されているが、従来の成長戦略の項目が踏襲されているものが大半を占めている。新たに追加されたのは、「超低金利活用型財政投融資」だが、その中身は整備新幹線やリニア新幹線の整備などであり、自民党が小泉政権時代に決別した財投拡大が再び盛り込まれた理由の説明が公約にはない。
成長戦略では生産性や潜在成長率を引き上げていくことが重要である。しかし、公約に掲げられているのは第4次産業革命などキャッチフレーズ先行的なものが多く、何をするのか全く見えてこない。また、新三本の矢と称して、希望出生率1.8、介護離職ゼロなどの数値目標を掲げているが、これは事実上の家計支援策であり、その実現可能性や財源なども全く見えず、そもそもどれくらいの規模で何年間行うのかも不明である。本気でこうした高い目標にチャレンジするならば、従来のタブーに切り込むような政策、例えば、男性の育児休業取率引き上げのための育児休業手当の改革や税制面でのインセンティブ措置導入など、思い切った政策が必要と考えられるが、そうした政策に踏み込む意気込みも見えない。また、いわゆる非嫡出子に児童手当を出すとか、保育や介護など人材不足の分野で外国人労働者を大胆に活用するといったタブーに切り込むことが必要なはずである。本気で新三本の矢を実現させるつもりならば、そうした大胆な政策が必要だが、それが打ち出されていないのでは、目標の実現可能性に疑問を抱かざるを得ない。
全体的に見ると、マニフェストの中身自体は体系的、戦略的で、数値目標や達成期限も入っている政策もあり、形式的には一定の評価ができるが、この3年半のアベノミクスの成果、特に第三の矢である成長戦略の進捗の遅さを見る限り、提示された政策では不十分である。アベノミクスによる円安・株高の動きも反転し、円高・株安傾向になっており、高い経済成長を実現できるという信頼感は失われている。また、今回の消費税率引き上げ2年半延期の納得的な説明はなされておらず、海外のリスク要因があるという理由だけで延期できるのならば、2019年10月に引き上げるかどうかは、不明であり、財政健全化目標の達成がほぼ不可能になるとともに、政府の財政規律に対する信認も失われたといえる。
【 評価点数一覧 / 公明党 】
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
|
6
|
目標設定(10点)
|
4 | |
達成時期(8点)
|
2
|
|
財源(7点)
|
0
|
|
工程・政策手段(5点)
|
2
|
|
合計(40点)
|
14 | |
実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
|
6
|
課題解決の妥当性(20点)
|
6
|
|
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
|
2 | |
合計(60点)
|
14
|
|
合 計
|
28
|
【評価結果】公明党 マニフェスト評価 合計 28 点 (形式要件 14 点、実質要件 14 点)
【形式要件についての評価 14 点/40点】
公明党の公約は「希望が、ゆきわたる国へ。」として、最初の出だしのところに「人口減少・少子高齢化という日本の構造的な問題に立ち向かわなければならない」と日本が直面している中長期的な課題に向き合うスタンスを示している。さらに、「景気に力強さを、実感を地方・中小企業・家計へ」としており、アベノミクスが実現を目指したトリクルダウン効果が、こうした分野にうまく行きわたらなかったことを素直に認めている。また、「成長と分配の好循環が一層機能するよう構造改革断行する」としており、基本理念や課題に対する認識と対応策は妥当と判断される。
また、自民党の公約から外れた実質GDP成長率2%、名目GDP成長率3%以上の経済成長の実現を目標に掲げたことは、首尾一貫している。ただし、それをどう実現していくのか、様々な政策が列挙されているが、体系的に説明がなされている印象は持てない。さらな、それらの政策項目は安倍政権が閣議決定した成長戦略に書かれてあることと基本的に同じである。また、それをどうやって実現していくのか、数値目標や達成時期などに関しても、訪日外国人旅行者数、研究開発投資の対GDP比率など、いくつかの分野で部分的に掲げられているが、具体的実行手段などの記述は少ない。さらに、政策の財源に関しては記述がなく、「目指します」という表現が目立ち、努力目標の域を超えていない。
【実質要件についての評価 14 点/60点】
公明党の経済政策は与党の一角を占めるため、閣議決定された成長戦略に掲載された政策が多く、自民党の政策とも基本的に共通している。そうした中、経済の好循環を地方、中小企業、家計に波及させることを謳っており、事実上、アベノミクスの綻びの是正をメインに据えている点は一定の評価ができる。しかし、その手段として「収入アップ、個人消費の喚起」を掲げており、具体策として、プレミアム付き商品券・旅行券の配布、全国規模のセールス・イベント実施などバラマキ色の強さも目立つ。個人消費が弱い原因は、消費税の影響だけでなく、高齢化など構造的要因に根差すとの認識やその対応策が具体的に示されておらず、全般的にみると、国民受けを狙ったマニフェストになっている点は物足りない。公明党は自民党を補完する存在であることを勘案すれば、自民の足らざるところを埋める役割に徹しているが、十分補完的かは疑問が残る。
ただし、非正規の時給を正社員並みの8割にすると明言している点は、自民党より踏み込んでいる。また、経済の好循環をきちんと家計へ行き渡らせるために、賃金だけでなく可処分所得の引き上げが必要との指摘は妥当である。どの党も、「可処分所得」の引き上げには言及しておらず、公明党の課題認識は適切である。可処分所得とは、税金や社会保険料を引いた後の手取り収入だが、これが税・保険料負担の増加で十分伸びていないことが、消費が弱い最大の理由である。これは、高齢化の影響が既に現役世代に重い負担となってのしかかり、一定の景気回復や、雇用改善、賃上げもそれなりに実施されたにもかかわらず消費が伸びない最大の原因となっている。ただし、高齢化の影響は、消費水準が現役層より少ない高齢者数の増加やここ数年の年金抑制なども影響しており、そうした認識には欠けている。また、可処分所得を増やすためには、税・社会保険料負担を抑制する必要があるが、具体策は明らかにされていない。
公明党の独自色として、他の政党には明示されていない、政治改革と行財政改革が明記されている。政治資金規正法の監督責任強化は、これで十分かどうかは別問題としても、言及していることは評価される。また、公会計改革、財政の見える化、行政サービスの向上と効率化など、公明党らしさが表れている。ただし、財政健全化についての言及は、自民党同様、目標を堅持するとしているだけで、具体的踏み込みが見られないのは、減点材料である。
【 評価点数一覧 / 民進党 】
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
|
5
|
目標設定(10点)
|
2 | |
達成時期(8点)
|
0
|
|
財源(7点)
|
0
|
|
工程・政策手段(5点)
|
1
|
|
合計(40点)
|
8
|
|
実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
|
3
|
課題解決の妥当性(20点)
|
2
|
|
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
|
2 | |
合計(60点)
|
7
|
|
合 計
|
15
|
【評価結果】民進党 マニフェスト評価 合計 15 点 (形式要件 8 点、実質要件 7 点)
【形式要件についての評価 8 点/40点】
民進党は公約の中でアベノミクスは失敗したと指摘した上で、3年半にわたる経済政策を転換し、「分配と成長の両立」を掲げ、その実現に向けて「人への投資」「働き方革命」「成長戦略」を実行することを明らかにした。目先の景気押し上げのための金融財政政策とは一線を画し、中長期の成長力を引き上げるために、どのような政策を打つべきかを示している点で、公約としてはある程度整理されており、一定の評価はできる。
しかし、「働き方革命」で掲げられている個別の政策は、時給1000円、働き方の改革、子育て・介護と仕事の両立、同一価値同一労働賃金など、自民党が主張している政策とほぼ同じである。また、「成長戦略」については、自民党と同様の遠隔医療、IPS細胞や人工知能、ビッグデータの活用などを謳っているだけで、全体的には包括性を欠いており、自民党対比で見劣りし、野党第一党としても物足りない。
また、成長実現のための数値目標の設定は皆無に近い。格差是正、子育て支援、社会保障充実など多様な分配政策を掲げているが、財源の明示、工程、政策手段の明示も具体的なものは見られず、大きな減点要因となる。
【実質要件についての評価 7 点/60点】
今回の民進党の公約では、社会保障政策を中心に自民党を上回る規模の財源をつぎ込む必要のある政策が数多く盛り込まれている。チルドレン・ファーストというキャッチフレーズで、保育園・幼稚園から大学まで教育の無償化、保育士・介護士の給与引き上げ、保育・医療の自己負担軽減など、国民から見れば有り難い政策をやっていくとしている。同一価値労働・同一賃金など正規と非正規の格差是正に本気で取り組む強い意志を示しており、課題の抽出の方向性は一定の妥当性を有すると判断される。
ただし、これらの施策に必要な財源は明らかに自民党よりも大きくなる。自公政権は基本的に経済成長を重視して、増税を極力最小限にしていく一方、格差是正と社会保障の充実にもそれなりに目配りをしていくというのが与党のスタンスだが、成長よりも分配を優先するというのが野党のスタンスである。民進党は、アベノミクスが想定通りうまくいかず、成長の果実が家計、地方に十分回っていないことを批判し、家計や地方に対する支援をさらに強力に、与党以上にやるという姿勢を強く訴えており、国民に対するアピール度は高いといえる。
ただし、最大の問題は、こうした政策を実現するための財源をどうするのか、という点に一切触れていないことだ。自民党のような高い成長を目指すということではないとしたら、民進党の政策はトータルでいくら財源が必要で、それをどう捻出するか、ということを国民にはっきりと示さなければならない。2009年の民主党への政権交代時には、無駄の削減で16.8兆円もの財源をねん出すると公約したが、結局捻出できず、野田政権時に消費税率引き上げの方向に転換したが、公約違反との批判を受け野党に転落したという苦い経緯から、今回は、意図的に財源を明示しなかったと考えられる。しかしながら、当時の民主党は単に財源の数字を挙げたから失敗したのではなく、17兆円もの巨額の無駄があり、歳出削減ができるという非現実的な公約を掲げたために失敗したのである。
そういう意味では、本来、格差是正、社会保障の充実に力を入れる民進党は、消費税増税を延期せず、10%を超える消費税率の引き上げの将来的な必要性にまで踏み込んで言及すべきであったといえよう。今回の公約も全体的に見ると、耳触りの良い政策を羅列する一方で、その財源は何ら書き込まれていないという点で、実現可能性が大いに疑われる。財源をねん出できず、公約した施策を実行できないという前回の轍を踏むリスクが高いマニフェストであると言わざるを得ない。
【 評価点数一覧 / おおさか維新の会】
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
|
2
|
目標設定(10点)
|
1
|
|
達成時期(8点)
|
1
|
|
財源(7点)
|
0
|
|
工程・政策手段(5点)
|
0
|
|
合計(40点)
|
4
|
|
実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
|
3 |
課題解決の妥当性(20点)
|
3
|
|
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
|
1 | |
合計(60点)
|
7
|
|
合 計
|
11
|
【評価結果】おおさか維新の会 マニフェスト評価 合計 11 点 (形式要件 4 点、実質要件 7点)
【形式要件についての評価 4 点/40点】
おおさか維新の会は、「既得権と戦う成長戦略を、維新の手で」という理念のもと、マクロ経済・財政政策、ネット経済時代への対応、競争促進政策、雇用・労働政策、中小企業政策を掲げた。ただし、何が賢く、何が強いのかは明確でない。2020年東京オリンピックに向けて、都市型「民泊」を可能にする規制改革の実施、との目標を掲げているが、それ以外の目標はほとんどない。達成時期、財源についての言及がない点はマイナス評価。政策手段として、財政責任法案の提出、給付付き税額控除の実現、IR法案提出など具体的な法律、制度が明示されている点は評価できる。
【実質要件についての評価 7 点/60点】
格差対策として、「給付付き税額控除」や「教育バウチャー」等、これまで維新の党が掲げてきた政策を踏襲している。また、農協の改革、減反廃止の徹底、農業への株式会社参入など改革を提言しているなど、総じて、改革色の強いマニフェストに仕上がっている。しかし、企業活力を高める具体的手段は明記されず、経済政策全体の体系性、戦略性についてはやや洗練性に欠ける面があり、実行力を持つかどうかは不明である。また、政策の実行体制やガバナンス、リーダーシップなど、経済政策の実行体制は不明である。
【 評価点数一覧 / 共産党 】
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
|
5
|
目標設定(10点)
|
3
|
|
達成時期(8点)
|
2
|
|
財源(7点)
|
5
|
|
工程・政策手段(5点)
|
0 | |
合計(40点)
|
15
|
|
実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
|
2
|
課題解決の妥当性(20点)
|
1
|
|
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
|
0 | |
合計(60点)
|
3
|
|
合 計
|
18
|
【評価結果】共産党 マニフェスト評価 合計 18 点 (形式要件 15 点、実質要件 3 点)
【形式要件についての評価 15 点/40点】
共産党は公約の中で、アベノミクスによって大企業と大株主は利益を得たが、国民の生活全体は悪化し、貧困と格差が新たな広がりをみせているとの問題意識を明示した。その上で、アベノミクスのストップ、格差を是正し、経済に民主主義を確立するために、税金の集め方を変える、税金の使い方を変える、働き方を変えるの「3つのチェンジ」を訴えた。
さらに、共産党は消費税の10%への引き上げをしないとし、「消費税に頼らない別の道、財源を確保します」という公約を掲げている。為替投機税、富裕税の創設など、その妥当性や実現可能性には疑問符がつくものも含まれているが、大企業優遇税制の廃止、法人税率の引き上げ、証券税制の課税強化、高所得層への課税強化、所得税の累進性強化など、多くの税制改正を示して、トータルで22兆3000億円という、小幅の歳出削減と大幅な増税によって財源を確保することを掲げた。国民に痛みを強いる増税を公約で国民に示した政党は共産党のみであり、この点は大いに評価できる。
ただし、その他の財源確保手段として、平均2%台の経済成長による税収増で20兆円を確保するとしたものの、それだけの財源が生まれるとした合理的説明はない。また、2%というのは名目なのか実質なのか定かではなく、どのような手段で経済成長を実現していくのか、という肝心のところは、公約ではほとんど語られていない。
【実質要件についての評価 3 点/60点】
共産党は財源確保のために、平均2%台の経済成長で20兆円の自然増が実現できるとしている。しかし、内閣府の試算では、実質2%、名目3%以上が確保できたとしても、自然増収は7兆円程度にとどまる。共産党は、自公政権対比で高い成長率を目標しているわけではないし、その手段も明示されていないにもかかわらず、どうしたら20兆円もの自然増収が出てくるのかは、合理的には説明できていないし、公約からは明らかではない。
税制改革による22.3兆円を加えると、トータルで42兆円の財源を確保することになるが、公約には社会保障の充実やくらしの向上に充てるとしているが、42兆円もの財源を何に使うのかについては、具体的に明示されておらず、歳出面と歳入面の整合性がとれているのか、疑問視せざるを得ない。仮に、財政健全化にあてるとした場合、健全化目標のゴールが2030年と10年も先送りされており、大増税との辻褄が合わない。
また、国民目線からいえば、「消費税大増税路線は破綻した」ので、我々は消費税の大増税はしませんと言いながら、「別の道だ」と言って22兆円増税は、9%以上の消費税率引き上げに匹敵する規模であり、大増税であることは事実であり、国民にとって納得感はないと思われる。
共産党の政策は、これまで大企業増税、富裕層増税しかなかったが、それだけでは財源が足りないという現実を正直に認め、一般国民にも一定の負担をお願いしたのは大きな進歩だが、所得の源泉である成長や企業活力、生産性を高める政策への言及もなく、トータルの経済政策としての整合性・妥当性は感じられない。また提案が政策ではなく、主張の域を出ておらず、それらがどのように内需を増やし、経済成長の好循環を作れるのか、政策論として合理的な説明がなされておらず、公約としての評価はかなり低くならざるを得ない。
【 評価点数一覧 / 社民党 】
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
|
1
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目標設定(10点)
|
1
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|
達成時期(8点)
|
0
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|
財源(7点)
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0
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工程・政策手段(5点)
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0 | |
合計(40点)
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2
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|
実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
|
1
|
課題解決の妥当性(20点)
|
1
|
|
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
|
0 | |
合計(60点)
|
2
|
|
合 計
|
4
|
【評価結果】社民党 マニフェスト評価 合計 4 点 (形式要件 2 点、実質要件 2 点)
【形式要件についての評価 2 点/40点】
社民党マニフェストでは、経済政策という項目そのものが存在せず、「CHANGE2くらし」の中で、「アベノミクスによる国民生活の破壊を許さず、くらしと雇用を再建します」との項目がある。その中でも大半はアベノミクスへの批判に終始し、アベノミクスによるトリクルダウン路線を否定し、個人消費や地域、中小企業を元気にするボトムアップの支援策を行うこと、社会保障の充実、安定雇用の実現など、「いのち」「みどり」の分野への投資拡大を始めとする「家計を温める経済対策」を進めるとしている。しかし、具体的手段としては最低賃金の1000円への引き上げ程度で、具体的目標設定も乏しく、達成時期、財源の明記もない。政策手段もめぼしい記述は見当たらず、形式要件をほとんど満たしていない。
【実質要件についての評価 2 点/60点】
マニフェストの大部分は、安倍政権の政策に対する批判と反対(TPP、消費税、原発再稼働、集団的自衛権の行使などにいずれも反対の立場)で占められており、実体経済をどのように回復させ、持続性を失っている財政や社会保障をどのように立て直すかを、提案する公約ではない。公約の中で、経済政策に関わる部分を抜粋すると、最低賃金の引き上げ、「いのち」(医療、介護、子育て、福祉、教育)と「みどり」(農林水産業、環境・自然エネルギー)分野への重点投資などとなっており、再分配政策、弱者保護の色彩が強い。それらを実現する財源については、高所得者、大企業に対する課税強化、無駄の削減、税収増などを挙げているが、それらを実現する財源を明らかにした政策体系を描いたものではない。野党としての単なる主張レベルを超えたものではなく、政権与党を担う能力は明らかに欠如している。
【 評価点数一覧 / 生活の党と山本太郎となかまたち 】
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
|
1
|
目標設定(10点)
|
1
|
|
達成時期(8点)
|
0
|
|
財源(7点)
|
0
|
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工程・政策手段(5点)
|
0 | |
合計(40点)
|
2
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|
実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
|
1 |
課題解決の妥当性(20点)
|
1
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政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
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0 | |
合計(60点)
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2
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合 計
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4
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【評価結果】生活の党と山本太郎となかまたち マニフェスト評価 合計 4 点 (形式要件 2 点、実質要件 2 点)
【形式要件についての評価 2 点/40点】
生活の党マニフェストでは、「生活が第一。」と、党の主張や意気込みが全面に押し出されており、それをどのように実現するのか、政策体系が具体的に示されたわけではない。
具体的目標設定については、国民の所得を増やすとして、可処分所得を1.5倍が示されているのみで、それ以外の記述以外ほとんど見られない。また、その根拠、達成時期、財源の明記が全くなく、実現可能性は乏しい。
【実質要件についての評価 2 点/60点】
生活の党は、国民の所得を増やすとしているものの、こども手当や雇用の安定化など、再配分政策で行おうとしており、経済成長を図るという視点が公約からは読み取れない。公約で提起された非正規労働者の正規化、子ども手当、最低保障年金、高校無償化、給付型奨学金の導入など、ほとんどが旧民主党政権下で破たん、あるいは問題を抱えた政策であり、いずれも財源の裏付けのないばら撒き的政策の羅列になっている。
【 評価点数一覧 / 日本のこころを大切にする党 】
項 目 | ||
形式要件 (40点) |
理念(10点)
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1
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目標設定(10点)
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0
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達成時期(8点)
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0
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財源(7点)
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0
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工程・政策手段(5点)
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0 | |
合計(40点)
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1 | |
実質要件 (60点) |
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
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3
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課題解決の妥当性(20点)
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3
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政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
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1 | |
合計(60点)
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7
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合 計
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8
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【評価結果】日本のこころを大切にする党 マニフェスト評価 合計 8 点 (形式要件 1 点、実質要件7 点)
【形式要件についての評価 1 点/40点】
日本のこころを大切にする党は「経済の成長戦略を推進し、個人所得の向上を図り、豊かな社会を実現すること及び社会基盤の強化を徹底して推進することを目指す。」としている。中でも、目玉に据えたのが納めた消費税の一部を政府が積み立て、年金受給時に受け取れる「消費税マイレージ制度」の導入であるが、どう具体化していくかは何ら明示されていない。また、2030年までに名目GDP750兆円、一人当たり国民所得世界一を目指す経済成長政策を推進する、異次元の財政政策を出動し、個人消費の拡大による経済活性化を図るとしているが、具体的政策がほとんど示されておらず実現性は乏しいと言わざるを得ない。
【実質要件についての評価 7 点/60点】
日本の競争力を高める徹底した競争政策を実施するために、①新規参入規制の撤廃、規制緩和、②敗者復活を可能とする破綻処理制度等の方向性は妥当性を有すると評価される。また、岩盤規制の打破など、成長戦略を更に推進していく旨が表明されているが、経済政策全体の体系性、戦略性については欠ける面があり、またこうした政策メニューはアイデアや主張の域を出ていない。それぞれの公約をどのようにいつまでに進めるのか、時間軸を伴って関連する政策が包括的に描かれていない。政策体系としても完成度を期待するのはまだこれからの段階である。
主要政党のマニフェスト評価
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33 | 27 |
25 |
28 |
23 |
24 |
20 |
23 |
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30 | 28 |
15 |
18 |
11 |
4 |
4 |
8 |
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28 | 11 |
14 |
16 |
13 |
2 |
1 |
3 | |||||||||
9 | 10 |
7 | 9 |
8 |
4 |
2 |
6 |
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51 | 29 |
31 |
26 |
27 |
17 |
6 |
17 |
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21 | 20 |
15 |
12 |
17 |
12 |
10 |
16 |
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