7月2日、ANAインターコンチネンタルホテル東京にて、「自民党×民主党政策公開討論会」の第2日目が行われました。前半の「経済政策」セッションでは自民党から町村信孝氏(日本経済再生戦略会議会長)、民主党から増子輝彦氏(ネクスト経済産業大臣)をお招きし、「日本経済をどう立て直すか」をテーマに議論が交わされました。
まず初めに、言論NPO代表の工藤泰志が簡単な挨拶、両議員及びパネリストの紹介を行い、両議員に対して「この国の経済をどう立て直すのか、また、相手の説明を聞いたうえでそれをどう評価するのか」と問いかけました。
町村氏は4月に打ち出した経済対策について、急降下した日本経済のために何が必要かを自民党内で議論し、取りまとめたものであることを説明した上で、「短期的な対策としてだけではなく、中長期的なプログラムとして何が必要かを考え、その中ですぐに取りかかれるものを補正予算の中に盛り込んだ」としました。また、地元企業の活性化、複数年度にわたる予算の活用などのポイントにも触れ、対策の効果は徐々に表れつつあると述べました。
増子氏はまず「生活に対する不安の軽減と、将来不安をなくすことにお金をつぎ込むべきだ」とし、こども手当てなどによる可処分所得の増加や、年金制度の改革による将来不安の払拭などを挙げました。また、環境変化に適応した新しいライフスタイルを構築し、新規産業・雇用を生み出すこと、外需依存から内需中心への転換を図ること、大企業のみならず中小企業にもより手厚い対応をとっていくことを強調しました。
以上を踏まえて両議員の間でやり取りがありました。町村氏は増子氏の説明に対して、恒久的な財源を提示していないことや具体性のなさを挙げ、可処分所得を増やすという民主党の政策はバラマキそのものではないかと指摘しました。増子氏は、予算の組みかえによる抜本的な見直しの意義を強調し、個々のムダ使いを徹底的に検証することを中心に、独自の財源確保を進めていきたいとしました。町村氏の指摘に対しては、生活対策なのか景気対策なのかわからない政府の定額給付金こそがバラマキであり、この1年間での4回もの予算編成の中で財政赤字を出し続けている政府の政策運営のほうにこそ問題があると反論しました。
その後、コメンテーターの齊藤誠氏(一橋大学大学院経済学研究科教授)は両党の環境政策を取り上げ、「ガソリン減税や高速道路料金の値下げは、CO2排出削減の流れと逆行する」と指摘し、政策間の整合性には疑問が残るとしました。また土居丈朗氏(慶應義塾大学経済学部教授)は「中小企業対策の中で、競争力のない企業までをも延命させてしまう可能性は考慮していないのか」と問いました。町村氏は企業の金融支援について「あくまで緊急対策であり、激変緩和ということでやっている。支援をしても倒産する企業は出てくるかもしれない」との見解を示しました。増子氏は民主党の環境対策について「政策の矛盾はないと思う。高速道路料金が下がればすぐに渋滞が発生しCO2発生量が増えるということには必ずしもならないだろう」としました。これに対し町村氏は「話にならない。ガソリン税は炭素税と呼んでもいいと思うが、とにかく価格政策を行わない限りCO2排出量は減らない」と反論しました。
その後司会の工藤が「これまでの構造改革の成果と問題点についてどう考えるか。そして日本の成長の基盤を作っていくために今後どのような改革が必要なのか」と両議員に問いました。町村氏は、「今までの構造改革、規制緩和、民営化の流れは正しかった」とし、構造改革には賛成という立場を明確にしましたが、行き過ぎた部分については一部修正する必要があるとも付け加えました。郵政事業については、最終的には100%民間に任せてやるのがよいとしました。成長基盤の強化については、環境ビジネスや先端医療などの分野で規制緩和が必要になるとし、アジア各国との共存・協力によって国の成長につなげていくという考えを示しました。増子氏は「構造改革は必要だが、部分的な修正が必要」という町村氏の考えに同意したうえで、ケアが特に必要なものの例として、社会保障や地域間格差の問題を挙げました。また、中小企業の人材や技術をイノベーションというかたちで伸ばすことを成長戦略として掲げました。郵政民営化については、「完全民営化に対しては消極的だが、100%国営というのも考えていない」と、明言を避けました。コメンテーターの内田和人氏(三菱東京UFJ銀行企画部経済調査室長)は、経済的な海外戦略について「地域金融協力など具体的なプランは考えていないのか」と問いましたが、町村氏は「EUと同じようなことをアジアですぐに行うのは難しい」としました。増子氏もこの意見に概ね同意しました。
最後に工藤が、次回選挙でのマニフェストと今後の経済政策の方向性について質問を投げかけ、両党の方針を再度確認したうえで、本日前半の「経済政策」セッションを締めくくりました。