「自民党×民主党 政策公開討論会」7月2日の第2セッションでは「財政政策」をテーマに、自民党から谷垣禎一氏(税制調査会副会長)、民主党からは中川正春氏(ネクスト財務大臣)をお招きして議論が行われました。
まず、司会の工藤泰志(言論NPO代表)が、両党の選挙後の予算編成の基本的な考え方について質問しました。
谷垣氏は、1日に閣議決定されたシーリングにのっとって予算を組むという前提のもと、社会保障に支障をきたさない範囲で歳出抑制をしていくと述べました。一方の中川氏は、解散後発表するマニフェストに基づいて予算を組み替えていくという方針を示したうえで、無駄遣いを徹底的に検証していくこと、原則として新たな借金はしないという考えを表明しました。
そのうえで、両議員が相手政党の政策に対して意見を述べました。谷垣氏はまず、民主党の方針は単年度の対応であり、恒久財源を明確に提示しない限り、出口戦略は見えないと指摘しました。また租税特別措置について、控除の削減を具体的にどのように行うつもりなのかと問いました。中川氏は補助金について触れ、いわゆる地方向け「ヒモつき」補助金や法人等を対象にした補助金については必要性を議論し、構造的な改革を行わなければならないと述べました。予算の末端部分で、何がどれだけ必要なのかということを丁寧に検証していくことの必要性も強調しました。租特については、どの企業にどういうかたちで減税を行っているのかという情報の透明性をある程度確保することも考えていくべきではないかとしました。
次に工藤は両党に対し「財政再建のプログラムを持っているのか」と問いました。これに対し中川氏は、政府によるこれまでのプライマリーバランス目標や国債の削減目標などがいずれも達成されてこなかったことを指摘したうえで、まずは財政の無駄削減により国民の政治に対する信頼を回復したうえで財政再建を実現すると説明しました。「具体的な目標が設定されていない」という指摘に対しては、「いつまでにやる」ということにこだわるよりも、現時点では必要なことから着実に手をつけていくことのほうが重要だとしました。
谷垣氏は中川氏に対し、「小泉改革をもう一度やれと言っているように聞こえる」と反論し、これ以上の社会保障費効率化には無理があると指摘しました。その上で、政府は「骨太の方針2009」において財政健全化の新たな枠組みを設定しており、具体的には、10年以内のプライマリーバランス黒字化などを掲げていると説明しました。また税制改正法附則においても、景気回復を前提に23年度までに必要な措置を講じる旨を明記しており、財政再建への道筋が明確になっていることを強調しました。「消費税の増税について国民が選択を問われる局面は、いつぐらいになるのか」という工藤の問いに対しては、「早くて 22年の秋ぐらいになるだろう」との見解を示しました。
コメンテーターの内田和人氏(三菱東京UFJ銀行企画部経済調査室長)は、自民党に対し、「短期的な危機対策の必要性はわかるが、債務残高の対GDP比率が異常に高い今の状況を中長期的にどうしていくのかも議論すべきではないか」と述べました。また鈴木準氏(大和総研資本市場調査部上席次長)は「民主党案は歳出の優先順位を変えるだけであって、収支は変わらないのではないか。また今後4年間で、消費税増税の議論を行うつもりはないのか」と問いました。中川氏は「国民に、自分たちの納めた税が効率的に生きるという認識を持ってもらうことが先決であり、増税についての議論はきちんと行っている」と答えました。
最後に工藤が「次回選挙のマニフェストでは、財政再建に向けた明確なプランとメッセージをぜひ盛り込んでいただきたい」と両党に要請し、第2日目の議論を締めくくりました。