7月8日、「自民党×民主党 政策公開討論会」の4日目が行われ、前半に環境政策の討論会が行われました。自民党からは川口順子氏(参議院議員、自由民主党環境調査会会長)、民主党からは岡崎トミ子氏(参議院議員 民主党ネクスト環境大臣)、コメンテーターに飯田哲也氏(NPO法人環境エネルギー政策研究所代表)、中橋勇一氏(協同組合プランニングネットワーク東北理事長)、福井宏一郎氏(日本カーボン・ファイナンス代表取締役社長)、松下和夫氏(京都大学大学院地球環境学堂教授)、大林ミカ氏(オフィス・エコロジスト所属)をお迎えし、活発に議論が行われました。
はじめに工藤から、科学が予見する環境問題による危機を回避するために、どのような意思を持って中期目標を立てているのか、またその目標をもって国際交渉の中でどのような成果を出していきたいと考えているのか、両党に問いかけられました。
自民党の川口氏は、2020年に2005年比で温室効果ガスを15パーセント削減するという政府の中期目標に関して、与党として国際交渉を見据え、日本の国益を害さないように配慮しつつも、検討委員会での議論や世論調査にもとづいて設定した数値であり、これは排出権取引や森林の吸収量などを含まない「真水」であると発言しました。また、日本は京都議定書のようなビジョンと環境技術などの実績で世界をリードし、安倍首相の掲げた「クールアース50」や福田首相時の洞爺湖サミットなどを通して、世界に信頼を作ってきた、と国際社会での成果を述べました。
民主党の岡崎氏は、IPCCなどの科学的調査に基づき、温暖化対策はまさに「まったなし」の状態であることを強調し、政治が明確な目標を示すことが必要だと述べました。その上で、環境政策への投資を成長の鍵として捉え、2020年の中期目標を90年比25%削減、2050年までのできるだけ早い時期に90年比60%超の削減という民主党が提示した法案の実現を目指す、と述べました。また、そのような高い目標を持って世界をリードしていく日本の政策として、政府・与党が表明した削減目標は国際社会を失望させるものだった、と批判しました。
中期目標の基準年次について、2005年にするか、1990年にするかで二人の意見は分かれ、それぞれの根拠をめぐって議論がありました。
これに関して、コメンテーターの大林氏から、「平均気温の上昇を2度未満に押さえるというのが西欧での議論の前提になっている」との指摘がありました。川口、岡崎両氏とも、2度未満を踏まえて対策をつくったと答えましたが、大林氏は「世代間の公平性を考えるべきで、それが中期目標の相違に表われているのではないか」と述べました。
次に工藤から、そのような排出総量の削減を実現するための具体的な解決として、再生可能エネルギーの導入などをどのように行っていくか、問題提起がありました。
川口氏は、自民党独自の案として20項目ほどの「特別行動期間」を設定し、今後10年間で再生可能エネルギーの普及を促す、と述べました。また地域内の連携を深め、地産地消の再生可能エネルギーを普及させるなど、幅広く個々の事情に対応していく、と発言しました。
一方岡崎氏は、民主党の政策として、キャップアンドトレード方式による排出量取引の普及や地球温暖化対策税、固定価格買収制度の導入などを説明し、太陽光発電の電力買取に伴う需要家の負担増に関しては政府がきちんと説明するなど、再生可能エネルギーの普及に尽力したい、と述べました。これに加えて、「ドイツでは環境税の税収を福祉関係に充てている。私としてはそんなことを考えている」と述べました。
日本政府の温暖化対策の核となってきた産業界の自主的取り組みについても、議論が行われました。川口氏は京都議定書に対する取り組みにおいて、産業界の自主的取り組みが大きな成果を挙げてきたことを説明。
これに対し、ポスト京都においても自主的取り組みで目標を達成できるのかとの疑問が福井氏から投げかけられました。
また、飯田氏は「石炭火力の新規設備を禁止するなどやれることは多い。それをやれば25%減は達成できる。踏み込んだガバナンスができていない」と批判しました。
これらの批判に対して、川口氏は「もっと削減することはできるが、問題は誰がいくら負担するかだ。その意味で、できるだけ効率的にやっていくのが大事だ」と語りました。
最後に、松下氏がオバマ米大統領の政策パッケージを例にとり、環境だけの個別の発想ではなく、政治主導で総合的な経済対策として打ち出すことを求めました。