8月9日、言論NPOは都内のホテルで開催された「政権公約検証大会~自民党、民主党のマニフェストと政権運営方針を検証する~」に参加しました。これは「新しい日本をつくる国民会議(21世紀臨調)」が主催したもので、8月30日の衆議院総選挙を前に出された自民党、民主党のマニフェストについて、言論NPOを始めとする民間団体や企業の計9団体が、それぞれ独自の評価を発表しました。
言論NPOの政権公約の総合評価は自民党が36点、民主党が31点で、他の参加団体と比べて厳しい評価となりました。
言論NPOを代表して発表した工藤は、まず、マニフェストが単なるばら撒きのリストとならないためには、マニフェストの体系性や課題解決のための議論が必要であり、課題に対する認識が決定的に重要であることを指摘しつつ、今回の両党のマニフェストにはそれらが全く示されていないことから、「(日本の)マニフェストは現在大きな転機を迎えているのではないか」との見解を示しました。そして、課題に対し政党はいかなる解決策を掲示しているかにまで踏み込んだ実質的な評価を行うために、言論NPOの考える各分野の課題の認識や評価基準を、マニフェストの評価書の中で全て明らかにしたと述べました。
そのうえで工藤は、自民、民主両党のマニフェストの評価点が低くなった理由として、まず、数値基準や期限といった形式的な要件を備えていないこと、マニフェストの策定過程が非常に分かりづらく、その実行の責任者や党内の決定プロセスが確立していないことなどを指摘しました。その上で、自民党のマニフェストには体系性があるものの、政策の新しさやこれまでの実績に伴う総括、その教訓をベースにした新しい課題設定ができていないなどと述べました。また民主党に関しては、環境や医療など個別の政策面ではかなり新しいものがあるが、マニフェストの全体設計の中でそれが壊されてしまっていることを指摘し、「これは党内における政策の調整、決定メカニズムが明らかに不足しているといわざるを得ない」と批判しました。
さらに、全体として両党ともに、急速に進行する少子高齢化と人口減少という日本の最大の課題に対して解決策を示しておらず、「政党は未来を競っていない」と強く批判しました。そして、日本の未来が懸かっているこの選挙の局面で、未来を語らず、若者にツケを先送りするのであれば、この選挙で問われているのは「政権交代ではなく、日本の政党政治の信頼そのものではないか」と強調しました。そして最後に、両党に対し「日本の未来に向けた責任あるマニフェストを再構築してほしい」と提案して、報告を終えました。
各団体の報告に続いて、参加団体による総括討論がなされました。討論の中で、工藤は、マニフェストの測定可能性が低いことは問題であるとしつつ、逆に測定可能性を重視しすぎると、マニフェストが理念のない数値目標重視のばら撒きのリストとなってしまうのではないかと問題提起し、他の参加団体も賛意を示しました。さらに、他の参加団体からは、マニフェストにおいて数値化できない理念に対する記述が弱くなることへの懸念が示される一方で、「マニフェストの抱える問題が明らかになったことは、マニフェストが定着したことの裏返しではないか」などの意見が出されました。
検証大会での工藤の発言の詳細は、後日言論NPOのホームページに掲載される予定です。また、言論NPOが今回発表した自民党、民主党の政権公約の評価も、近日中に言論NPOのホームページで公開いたします。
文責:インターン 石田由莉香(東京大学)