9月12日、政策分析ネットワーク創立10周年記念の政策メッセが都内で開催され、プログラム中の1つであるシンポジウムに、言論NPO代表の工藤 泰志がパネリストとして参加しました。
伊藤 元重氏(東京大学大学院経済学研究科長/経済学部長)がモデレーターをつとめ、工藤のほか、永久寿夫氏(PHP総合研究所常務取締役)、岸 博幸氏(慶應義塾大学大学院教授、チーム・ポリシーウォッチ)、原田泰氏(大和総研常務理事、政策分析ネットワーク共同代表)をパネリストとし、「衆議院総選挙の総括と民主党政権での最優先政策課題」をテーマに意見が交わされました。
まず伊藤氏から、今回の選挙結果と、それが今後の政権運営に与える影響についてどのように考えるかという問いが提起され、各パネリストが見解を述べました。工藤は民主党のマニフェストについて、「現状の認識と、具体的な課題の解決という体系性が示せておらず、有権者との契約として機能していない。」と、問題点を指摘しました。総選挙直後に言論NPOが行ったアンケート結果にも触れ、「有権者の多くは民主党政権への不安を感じているが、自民党政治に対する批判から政権交代を選択した」としました。また、「これで二大政党制が定着するとの見方は少なく、むしろ政治的な変化の始まりと見ている人が多い」とも述べました。
各パネリストの発言ののち、伊藤氏は、今後民主党政権が直面する政策課題をどのように考えるか、各氏に尋ねました。工藤は「少子高齢化社会への対応、社会保障財源の問題、経済のパイの縮小への対応、財政再建、国際社会での役割の果たし方など、どの政権であっても課題から逃げることはできない」と述べました。また、「新政権はマニフェストの実行サイクルを回すために、政策を目的や優先順位の視点から再検討し、政府の約束として改めて有権者に示す必要がある、仮に政策が変わった場合はその説明をすべき」と指摘しました。さらに、「日本の政治を本質的に変えるためには、有権者が政策の実行に対して関心を持ち、民間側から政府への提案を行う、という民間の政策市場のサイクルを回さなければうまくいかない。評論家的な議論だけではなく、当事者として向き合っていくべきだ」との問題意識を示しました。
続いて伊藤氏から、今後の政策の方向性について問いかけがあり、工藤は「民主党の指摘した生活者目線の政治を行うことは方向性として正しい。セーフティネットをいつまでにどう整備するかがここでは問われる。ただ、生活の支援を大きな政府として組み立てるのか、それとも最低限の保障を政府の責任として行うのかなど、国のあり方をどう描くかという議論と合わせて進める必要がある」と答えました。その後、外交・安全保障、官僚との関係、マクロ経済運営などについて各氏の間で議論が交わされ、シンポジウムは終了しました。
文責:インターン 楠本純(東京大学)