2013年参議院選挙 マニフェスト評価(復興)

2013年7月15日

評価の視点

東日本大震災の復旧・復興における評価の視点は、主に、被災地の復旧事業を早期に実現する政策になっているのか、そして福島第一原発の廃炉への道筋など、福島の再生をどのように進めようとしているのか、という点について評価を行う。

その中で、①マニフェストの中での「復興」分野の位置づけの的確性(マニフェストの体系として大方針や重点政策の柱として「復興」がどう位置づけられているか、②復興現場に対する認識(問題意識)の的確性(災害現場の実情(実態)や問題点を的確にとらえているか)、③「復興」政策の基本方針の的確性(「復興」の難しさを十分理解した上での総花的でない的を絞った政策提言か)、④個別の政策の具体性と実効性の担保(本当に政党として責任を持って実現する姿勢が表れているか(野党前提や評論家気分でないか))、といった点について検討しながら評価を行う



【 評価点数一覧 / 自民党 】

項 目
自民党
形式要件
(40点)
理念(10点)
6
目標設定(10点)
2
達成時期(8点)
0
財源(7点)
0
工程・政策手段(5点)
0
合計(40点)
8
実質要件
(60点)
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
10
課題解決の妥当性(20点)
5
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
1
合計(60点)
16
合 計
24

【評価結果】自民党 マニフェスト評価   合計 24 点 (形式要件 8 点、実質要件 16 点)

【形式要件についての評価 8 点/40点】

「まず、復興を加速します」として、重点政策の6本の柱の第一番目に位置づけており、復興については重要視している。復興の加速のため、「土地区画整理など住まいの再生に向けた取り組みの加速」、「人員不足、資材不足への対応」などが掲げられている点については評価できる。しかし、各政策項目の表現は抽象的で、どのような目標をかかげ、その実現に向けて動いていくのは不明である。

また、福島第一原発に関しては、中間貯蔵施設の整備など、除染の加速化、除染から廃炉までの道筋につて、国がより前面にたって具体的な事業展開を加速することが明記されているが、実現に向けたプロセスは何ら示されていない

【実質要件についての評価 16 点/60点】

復興が進まない課題として、平時の土地収用法が足かせとなり、住まいの再生のための取り組みが遅れていること、「技術職・行政職員等の人材、資材の不足等へのきめ細かな対応」ができていないこと、除染から廃炉についての道筋を明らかにし、国が前面に立って具体的な事業展開の加速を明記など、被災地が直面している課題については認識していると判断できる。それに対する解決方法も抽象的ながら提示されている。しかし、提示された政策が、実現性の高い政策にポイントを絞った簡潔な表現のため、具体的にどのようなプロセスを踏みながら各政策が実現されるのか明らかにされておらず、課題解決までの道筋が見えない。特に「復興を加速」すると謳いながら、何をどう進めていくのか、具体的に明示されていない。また、マニフェストからは、復興の加速、道筋について、有権者に対する説明責任を果たしているとはいえない

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【 評価点数一覧 / 公明党 】

項 目
公明党
形式要件
(40点)
理念(10点)
3
目標設定(10点)
2
達成時期(8点)
1
財源(7点)
0
工程・政策手段(5点)
1
合計(40点)
7
実質要件
(60点)
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
8
課題解決の妥当性(20点)
7
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
4
合計(60点)
19
合 計
26

【評価結果】公明党 マニフェスト評価   合計 26 点 (形式要件 7 点、実質要件 19 点)

【形式要件についての評価 7 点/40点】

5本の柱の第一に「スピーディな東日本大震災からの復興」を掲げ、「大震災からの復興を加速」では、復興事業実施の問題点、人材不足への対応のため、関係省庁や全国の自治体からの派遣、公務員OBなどの活用、資材供給のための条件整備、土地収用制度や財産管理人制度など、かなり具体的な政策手段を提起している。しかし、どのような形で支援がなされるのか、具体的なプロセスは何ら示されていない。

また、「福島の再生と原発事故の真の収束」でも、福島への帰還支援策、政策再建策、賠償などについては、被災自治体の要望に応じて国の責任で実行することなどが明記されている。また、廃炉に向けたロードマップとして今年中に4号機の使用済み燃料プールから使用済み燃料の取り出しを開始することも明記されている。但し、廃炉にかかる費用などについて、どの財源を使うのかしめされていない。また、「防災・減災の推進」することも示されている。復興と福島の再生については、かなり評価できる

【実質要件についての評価 19 点/60点】

「1.大震災からの復興を加速」、「2.福島の再生と原発事故の真の収束」、「3.防災・減災対策の推進」の下に13施策を体系化している。その中で、復興事業の人材不足、土地収用制度の問題点、実情にあった交付金制度の運用、廃炉に向けたロードマップの策定等、現場の問題点を一定程度的確にとらえた内容を提案しており、かなり被災地の現状を認識し、政策体系を整えていることが読み取れる。また、施策の内容は丁寧に書かれている。しかし、実行体制やガバナンス等は不十分である。また、「今年中に4号機の使用済み燃料プールから使用済み燃料の取り出しを開始する」ことが掲げられているが、実効性を担保できるかは、予断を許さない

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【 評価点数一覧 / 民主党 】

項 目
民主党
形式要件
(40点)
理念(10点)
5
目標設定(10点)
0
達成時期(8点)
0
財源(7点)
2
工程・政策手段(5点)
2
合計(40点)
9
実質要件
(60点)
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
5
課題解決の妥当性(20点)
5
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
0
合計(60点)
10
合 計
19

【評価結果】民主党 マニフェスト評価   合計 19 点 (形式要件 9 点、実質要件 10 点)

【形式要件についての評価 9 点/40点】

重点政策の6本柱の一番目に震災復興・福島再生を位置づけており、復興・福島再生を重要視している。そして復興を加速するために「人材・資材不足への対応」、「用地取得の迅速化のために、民法の特例を定めること」、「復興庁・復興特区・復興交付金などの仕組みの強化」などが掲げている点は評価できる。しかし、民法の特例とは具体的に何を指すのか、復興庁などの仕組みのどこを、どのように強化するのか、というものは何ら明示されていない。また、それらを実現するための具体的な方策については何も明らかにされていない。


福島の再生については、福島第一原発の廃炉の課題に主導的に取り組むこと、除染の徹底、生活の再建・安定化を迅速に進める旨が掲げられている。しかし、どのような形で主導的に取り組んでいくのか、具体的なことは何も明示されていない。

【実質要件についての評価 10 点/60点】

震災復興・福島再生の基本理念として「被災者に寄り添って震災復興、福島の再生をやり遂げ」ることを明記し、「復興を加速します」、「福島の再生なくして日本の再生なし」を掲げており、「人材・資材不足への対応」、「用地取得の迅速化のために、民法の特例を定めること」、「復興庁・復興特区・復興交付金などの仕組みの強化」など、被災地の課題については認識している。しかし、「子ども・被災者支援法に基づく健康調査の強化、帰還支援」、「復興庁・復興特区・復興交付金等の仕組みの強化」、「廃炉課題への主導的取組、除染の徹底、速やかな補償などによる生活再建」など、政権時代の政策の推進を提起しているのみであり、前政権での取り組み経験を踏まえた具体的な政策の進め方、責任体制等についての具体的な踏み込みが不足しており、そういう点について国民に対する説明責任を果たしていない。




【 評価点数一覧 / 日本維新の会

項 目
日本維新の会
形式要件
(40点)
理念(10点)
0
目標設定(10点)
0
達成時期(8点)
0
財源(7点)
0
工程・政策手段(5点)
0
合計(40点)
0
実質要件
(60点)
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
0
課題解決の妥当性(20点)
0
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
0
合計(60点)
0
合 計
0

【評価結果】日本維新の会 マニフェスト評価   合計 0(形式要件 0 点、実質要件 0 点)

【形式要件についての評価 0 点/40点】

5つの柱の中に「復興」の政策は位置づけられておらず、「国家システムを賢く強く」の中で、「東日本大震災の復興(原発事故処理を含む)のための体制づくりのため、被災地知事、市町村長に復刻の権限を付与する」との記述があるが、復興に対する党としてどのように考えているのか、などについては何も記載されておらず、評価できない。

【実質要件についての評価 0 点/60点】

党としての復興に対する位置づけが記載されておらず、評価不能。



【 評価点数一覧 / みんなの党 】

項 目
みんなの党
形式要件
(40点)
理念(10点)
5
目標設定(10点)
0
達成時期(8点)
0
財源(7点)
0
工程・政策手段(5点)
1
合計(40点)
6
実質要件
(60点)
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
3
課題解決の妥当性(20点)
3
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
0
合計(60点)
6
合 計
12

【評価結果】みんなの党 マニフェスト評価   合計 12 点 (形式要件 6 点、実質要件 6 点)

【形式要件についての評価 6 点/40点】

7つの政策の柱の一つに掲げ、「東北から未来を変える―復興を超えて創造へ―」との理念の下、「現地主導の復興」、「生活再建・産業復活のための取り組み」、「放射能に対する不安の一掃」が掲げられている。しかし、具体的な道筋は何ら示されておらず、単なるスローガン的なものばかりとなっている。

【実質要件についての評価 6 点/60点】

施策の柱「東北から未来を変える-復興を超えて創造へ-」との理念の下、12項目が掲げているが、その中身は総花的な政策である。また、みんなの党は「現場の視点に立って復興を進めていく」ことが示されているが、土地収用が問題になっているが、「高台移転や土地利用などの住民間での話し合い・計画策定を促進するため、市町村に大幅に権限を与える」とされているが、どのような権限を与えるのか、具体的に示されていない。
また、消費税増税を凍結し、社会保障費の増加抑制についてほとんど述べられていない状況の中で、住宅再建支援金の引き上げや、被災地への進出企業への法人税ゼロなどを掲げており、全体的な公約の中でどのように政策を実施していくのか、明らかにされておらず、ガバナンスや実現方策も弱い。



【 評価点数一覧 / 共産党 】

項 目
共産党
形式要件
(40点)
理念(10点)
2
目標設定(10点)
0
達成時期(8点)
0
財源(7点)
2
工程・政策手段(5点)
0
合計(40点)
4
実質要件
(60点)
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
4
課題解決の妥当性(20点)
0
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
0
合計(60点)
4
合 計
8

【評価結果】共産党 マニフェスト評価   合計 8 点 (形式要件 4点、実質要件 4点)

【形式要件についての評価 4点/40点】

「大震災からの復興を最優先課題に-生活と生業の再建に必要な公的支援を」として復興についての政策が掲げられている。しかし、政府の批判に終始し、党としてどのような理念の下に復興の政策が提起されているのか曖昧である。政策としては「復興事業における不合理なルールの押しつけを止め、現場にルールを合わせること」、「医療・介護の負担減免措置を復活させ、あらゆる支援策のあり方を、被災者の生活と盛業の再建を最後まで支援する立場で見直す」などが掲げあられた。しかし、それらの実現に向けた方法は何も明示されておらず、スローガン的な政策にとどまる。

【実質要件についての評価 4点/60点】

現政権の復興の取組への批判に終始しているが、「支援を必要とする人・地域がある限り支援を打ち切らない」ことを大前提に「医療・介護の負担減免措置の復活」、「復興事業における現場ルールへの転換」、「住宅と生業の再建に必要な公的支援」、「円安によるコスト急増への資金確保・販路拡大支援による被災事業所の経営を守る」といったものは、被災地の課題を認識ている政策だと考える。しかし、政党ととして課題をどのように認識し、その課題に対して、どのような筋道を立てて復興を実現していこうとしているのか、政策の具体的な進め方、責任体制や道筋など実効性への担保が見られない。また、国民に対して説明責任を果たしているとは思えない。



【 評価点数一覧 / 社民党 】

項 目
社民党
形式要件
(40点)
理念(10点)
2
目標設定(10点)
0
達成時期(8点)
0
財源(7点)
0
工程・政策手段(5点)
0
合計(40点)
2
実質要件
(60点)
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
5
課題解決の妥当性(20点)
5
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
0
合計(60点)
10
合 計
12

【評価結果】社民党 マニフェスト評価   合計 12 点 (形式要件 2 点、実質要件 10 点)

【形式要件についての評価 2 点/40点】

「『生活再建』で一刻も早い被災地の再生を」において、「制度に合わせた復興ではなく、復興に合わせた制度を実現し弾力的運用の実施」、「医師・看護師などの確保対策」、「被災自治体職員への支援の強化」などが掲げられている。しかし、具体的なプロセス、方策は示されておらず、スローガン的な政策にとどまる。
また、福島第一原発事故の対応については、原発労働者の検診・治療費の無償化、東京電力を法的に破綻処理を行い、国の責任で十分な賠償を与える体制を整備することなどが明記されているが、具体策は何も示されれおらず、スローガン的な政策にとどまる。

【実質要件についての評価 10 点/60点】

前述した政策などを通して、党としての東日本大震災をどのように認識しているかを示している。「『生活再建』、『人間の復興』に邁進」「原発事故避難者支援、放射能汚染対策」を掲げ、現状の認識、提案の内容が具体的で丁寧だが、総花的、事業遂行に対する体制やガバナンス等の実効性が弱い。



【 評価点数一覧 / 生活の党 】

項 目
生活の党
形式要件
(40点)
理念(10点)
1
目標設定(10点)
0
達成時期(8点)
0
財源(7点)
0
工程・政策手段(5点)
1
合計(40点)
2
実質要件
(60点)
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
1
課題解決の妥当性(20点)
0
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
0
合計(60点)
1
合 計
3

【評価結果】生活の党 マニフェスト評価   合計 3 点 (形式要件 2 点、実質要件 1 点)

【形式要件についての評価 2 点/40点】

公約の基本方針の中に復興の項目はなく、経済政策の中で「東日本大震災からの復興の加速を重視」し、「復興が最も重要な政策課題の一つであるとの認識」を示しているものの、位置づけは低い。その中で、「地域のニーズに応えられる自由度の高い財政支援制度の創設」、除染が難しい居住者に対しては、「移住を基本とする政策に転換し、経済保障による生活再建を促進する」ということが示されている点は評価できる。ただ、中身は具体的ではなく党としてどのように対応していくのか、という点についても明確ではない。

【実質要件についての評価 1 点/60点】

「復興が最も重要な政策課題の一つであるとの認識」とは記載されており、移住を基本とする政策に転換することについては、被災地の課題を認識していると読み取れる。しかし、党として、東日本大震災からの復興に対する課題をどのように認識しているのか、どのような体制で実施してくのかなど、何ら明記されていという点については、復興についてプライオリティを置いていないと評価せざるを得ない。また、国民に対する説明責任が果たされているとも思えない。




【 評価点数一覧 / みどりの風 】

項 目
みどりの風
形式要件
(40点)
理念(10点)
1
目標設定(10点)
0
達成時期(8点)
0
財源(7点)
0
工程・政策手段(5点)
0
合計(40点)
1
実質要件
(60点)
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
0
課題解決の妥当性(20点)
0
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
0
合計(60点)
0
合 計
1

【評価結果】みどりの風 マニフェスト評価   合計 1 点 (形式要件 1 点、実質要件 0 点)

【形式要件についての評価 1 点/40点】

東日本大震災からの再生として、「被災地目線で一人ひとりの生活、暮らしを取り戻すこと」、「次世代へ東北の地を受け継ぐこと」が掲げられている。それに伴う政策が7項目掲げられているものの、単なるスローガンでしかない。
また、福島第一原発の廃炉への道筋、福島の再生については、国が責任を持って進めること、作業員の準公務員か、東電の破たん処理を進めることが示されている。しかし、具体的な方法については全く触れられておらず、曖昧である。特に、作業員の準公務員化による歳出増について、消費税の増税に反対する中で、どのような財源を充てるのか明らかになされておらず、こちらもスローガンでしかない。

【実質要件についての評価 0 点/60点】

「復興予算の流用防止」、「暮らしの再建のための支援の拡充」、「放射能生汚染による長期居住困難地域の国有化」などが掲げられているが、党として、東日本大震災からの復興に対する課題をどのように認識しているのが、何ら記載されておらず、評価できない