2013年参議院選挙 マニフェスト評価(地方)

2013年7月15日

評価の視点

地方分権は、地域の政策決定権を中央から、住民に身近な自治体に移すことであり、それに伴い必要となる財源を都道府県や市町村に移すことである。こうした分権はいわば中央集権体制の改革であり、主役である住民に地域の経営や将来に責任を持たせ、地域の創意の発揮により地域活性化に繋がる制度設計でなくてはならない。

政権交代を果たした自民党は、先の衆議院議員選挙のマニフェストにおいて、「道州制基本法」の制定を掲げた。しかし、そこでは、住民自治を支える基礎自治体の規模、権限、財源調整のあり方等、過去の市町村合併を踏まえた上での新たな基礎自治体像、それを統べる国と道州の姿など、我が国の自治の枠組みについてどのような将来像を描くのかを国民に十分に指し示したとは言いがたい。

このため、今回の参議院選挙では、各党が道州制導入をはじめとする地方分権改革の取組について、「真の地方分権とは何か」、「地方分権が国民にとってどのようなメリットを生むのか」など、国と地方について、将来の我が国のあり様を国民に明らかにするとともに、そうした将来像に向けてどのように具体的な取り組みがなされるのか明示できているかを中心に評価を行う。

なお、財源について、そもそも地方分権改革は制度改革であるため、基本的には財源の記述はなくとも特に問題はないと考えるが、特に財源を必要とする施策がある場合はこれを加点して評価する。



【 評価点数一覧 / 自民党 】

項 目
自民党
形式要件
(40点)
理念(10点)
7
目標設定(10点)
3
達成時期(8点)
1
財源(7点)
0
工程・政策手段(5点)
2
合計(40点)
14
実質要件
(60点)
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
10
課題解決の妥当性(20点)
2
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
10
合計(60点)
22
合 計
36

【評価結果】自民党 マニフェスト評価   合計 36 点 (形式要件 14 点、実質要件 22点)

【形式要件についての評価 14 点/40点】

今回の自民党『参議院選挙 公約2013』では行政改革の項で「国と地方の役割分担の再検討、業務の見直し」を明示するとともに、地方分権改革の項で「地方自治体の機能を強化し」道州制の導入を目指すとしている。

道州制導入について、地方分権型国家を構築し、地域経済社会の活性化、多極型国土の形成、中央・地方全体の行財政の効率化、二重・三重行政の解消による真の行政改革を進めるとの理念を明示し、地方税財政の充実や交付金、小規模自治体のあり方の見直し等、地方分権において重要な項目は外しておらず、理念、目標としては妥当である。

ただし、以上の記述は公約詳細版ともいえる『J-ファイル2013 総合政策集』のみであり、広く配布されるであろう『参議院選挙 公約2013』には全く記載されていない。しかも、上記の政策は地域活性化の項目で取り扱われており、自民党の地方分権は道州制の導入のみであると見られても仕方がない構成となっている。

道州制導入以外の個別の政策についての明確な達成時期は、設定されていない。また、工程・政策手段については従来の地方分権改革推進委員会の勧告に沿ったものがほとんどであるが、地方議会の機能強化に触れている点は評価できる

【実質要件についての評価 22 点/60点】

施策の体系については、行政改革の項で「国と地方の役割分担の再検討、業務の見直し」を取り扱っている点、さらには地域の活力づくりの中で、地方税財政の充実や交付金、小規模自治体のあり方の見直し等、地方分権において極めて重要な項目が取り上げられている点は、課題抽出の面からは評価できるが、体系という面では地方分権推進の立場からは減点となる

また、あえて地方分権改革を地域活性化の視点で捉えたのであれば、その道筋となる論理展開をしっかりと明示すべきであろう。また、個々の施策について、記述された内容が薄く、将来展開を含む工程表も示されていない。

いずれにしても、自民党の配布用の『参議院選挙 公約2013』ではほとんど地方分権改革に触れておらず、詳細な『J-ファイル2013 総合政策集』を精査しないと具体的な取組項目はおろか、理念ですら判明しない。配布用の公約集を作成するに当たっては記述のメリハリは必要であろうが、概要版といえども、国民が政策の選択ができるように、もっときめ細やかで具体的な政策を提示すべきと考える。

▲top



【 評価点数一覧 / 公明党 】

項 目
公明党
形式要件
(40点)
理念(10点)
8
目標設定(10点)
7
達成時期(8点)
7
財源(7点)
0
工程・政策手段(5点)
4
合計(40点)
26
実質要件
(60点)
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
1
課題解決の妥当性(20点)
1
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
1
合計(60点)
3
合 計
29

【評価結果】公明党 マニフェスト評価   合計 29 点 (形式要件 26 点、実質要件 3 点)

【形式要件についての評価 26 点/40点】

「地域の自主決定により、地域特性を活かした経済発展をめざし、住民本位の行政サービスを提供できる『地域主権型道州制』を導入する」と記述は簡単であるが、公明党のめざす道州制がどのような理念に基づくものか、最初にはっきりと提示している点は評価できる。

また、諮問機関「道州制国民会議」の設置、3年間かけて国民的議論を行い、制度設計し、「道州制国民会議」の最終答申後2年を目標に法的措置を講じるとしており、工程・政策手段、目標設定、達成時期について、明確になっている。

しかしながら、道州制導入以外の地方分権改革につながる目標・課題に全くふれていない点は減点となる。道州制については、今後十分な国民的議論が必要な政策課題であり、実現までには時間がかかるものと推察される。基礎自治体のあり方、権限移譲、義務づけ枠付けの見直しや地方財源の確保など、地方分権にかかる現下の課題への対応についても政策を明示すべきと考える。

【実質要件についての評価 3 点/60点】

理念の位置づけは、地方自治のあり方、地方分権の持つ意味などを踏まえたものであり極めて適当なものと思われるものの、施策の体系については、公明党の公約は「地域主権型道州制の導入」の一本槍で、「義務付け枠付けの見直し」、「地方自治体への権限・財源移譲」などのそこへ至るまでの地方自治体の強化等に関する記載はない。したがって、地方分権の体系が全く示されていないともいえる。

また、課題抽出の妥当性についても、そもそも道州制導入以外の課題が抽出されていない。政権与党としての指導性と責任の面からも、もう少し幅広く、ステップを踏んだ形で、地方分権改革のための施策について、課題を提示し、その解決に向けた道筋を示すべき必要があると考える。

このマニフェストでは、道州制を導入することにより、公明党がどのような地方の課題を解決したいのか、国と地方の関係をどう改革していくのか、政策達成の時系列的な流れが判然としない。理念にもとづく将来像を掲げているのであれば、その理想を実現するためには、どのような課題があり、具体的にどのようなステップを踏んで解決するのかを明示する責任があると考える。

▲top



【 評価点数一覧 / 民主党 】

項 目
民主党
形式要件
(40点)
理念(10点)
0
目標設定(10点)
2
達成時期(8点)
2
財源(7点)
0
工程・政策手段(5点)
2
合計(40点)
6
実質要件
(60点)
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
2
課題解決の妥当性(20点)
2
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
2
合計(60点)
6
合 計
12

【評価結果】民主党 マニフェスト評価   合計 12 点 (形式要件 6 点、実質要件 6 点)

【形式要件についての評価 6 点/40点】

民主党政策の1丁目1番地と言われた「地域主権改革」は公約としては残っているものの、マニフェスト上は改革続行の一項目として扱われており、公約の詳細を示した政策集でも「総務」の事項の中に納められている。この点からも地方主権改革が民主党の政策の優先順位の中ではだいぶ後退していると判断できる。したがって、理念についても突っ込んだ記述はなく、現在の民主党が地方分権(主権)改革についてどのような考え方をしているのか全くわからない。また、道州制導入についても全く記述がない点も減点となる。

また、目標設定や達成時期、工程等については、民主党政権時に制定した「地域主権戦略大綱」を着実に実行するとしているが、政権を失った今となっては現実性に乏しい。改めて野党としての目標設定、工程を指し示すべきであると考える。

【実質要件についての評価 6 点/60点】

施策の体系については、「義務づけ枠付けの見直し」「地方自治体への権限・財源移譲」「一括交付金の復活」「国の出先機関の原則廃止」が並列的に記載されており、体系だったものとは見受けられない。なお、「政策集」の中でも特に体系に触れておらず、課題抽出の妥当性についても、なぜこの項目を選択したかの記述もないため、これによって何がどの程度変わるのかはっきりしない。

課題解決の妥当性について、項目以上の詳細を記述した内容がなく、これだけではとうてい課題を解決できるとは思えない。

また、国の出先機関は原則廃止に取り組むとしているが、東日本大震災以降の地方の状況を踏まえての見識が示されておらず、この項目についても検討が未成熟と言わざるを得ない。

さらには、条例制定権の拡大、大都市制度の見直しに触れている点は評価できるが、安易に都道府県の役割が相当程度縮小した段階において道州制の議論を行うとしている。大都市圏のみに民主党の目は向いており、地方の小規模基礎自治体の実情を押さえた上での政策とは到底思えない。

また、形式要件の項でも記述したが、政権を失ったことから、地域主権改革についての政策実行体制が喪失していることに対して、何ら対応していない点も減点せざるを得ない

▲top



【 評価点数一覧 / 日本維新の会

項 目
日本維新の会
形式要件
(40点)
理念(10点)
7
目標設定(10点)
5
達成時期(8点)
1
財源(7点)
0
工程・政策手段(5点)
1
合計(40点)
14
実質要件
(60点)
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
10
課題解決の妥当性(20点)
1
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
1
合計(60点)
12
合 計
26

【評価結果】日本維新の会 マニフェスト評価   合計 26(形式要件 14 点、実質要件 12 点)

【形式要件についての評価 14 点/40点】

「統治機構の改革」を掲げ、道州制の導入が、国の役割を絞り込み、国の機能を強化し、地方の自立を促進するという論理展開しており、「国家のシステムを賢く強くする」として、道州制基本法案提出、地方共有税の創設、自治体首長と参議院議員の兼職禁止規定の撤廃を挙げるなど、道州制導入に関する課題と言われている項目は一通り整っている。

しかし、道州制以外の地方分権改革の項目である「基礎自治体のあり方」、「権限移譲」、「義務付け枠付けの見直し」などについての記述はない。
また、必要な制度設計や推進体制には全く触れておらず、達成時期、工程・政策手段について、不明である。

【実質要件についての評価 12 点/60点】

施策の体系としては、道州制の導入に合わせ憲法92条及び94条を改正し、地方公共団体を地方政府と位置付けるとしている点は、根本的な課題を明らかにして、真正面から段階を踏んで取り組む姿勢を見せていると評価できる。
また、地方独自の財源確保として消費税の地方税化と地方共有税を対で提示している点は代表が自治体の首長経験者があることからか、実態を踏まえた提案であると評価できる。
しかしながら、こうした改革に対応できる地方自治体としては、大都市圏域の自治体をはじめとした一定以上の規模を有する団体を中心に想定されている感があり、我が国の周辺地域に点在する過疎地域の小規模基礎自治体やそこを補完している都道府県の実態をどの程度踏まえて議論された政策であるか疑問である。
全体として国家機能の強化に着目した地方分権改革であり、国が強くなれば自然と地方も自立するという論理展開に見える。維新の会の提唱する道州制導入による地方分権改革が地域の住民にどのような影響を及ぼすのか、有権者にもっと情報を提供し、丁寧に説明すべきであると考える。
同様に、課題抽出においても、もう少し地域住民から見た道州制をはじめとする地方分権に関する課題にも目を向け、国民の立場から何が政策課題として重要なのか説明すべきであると考える。
▲top



【 評価点数一覧 / みんなの党 】

項 目
みんなの党
形式要件
(40点)
理念(10点)
7
目標設定(10点)
6
達成時期(8点)
6
財源(7点)
0
工程・政策手段(5点)
4
合計(40点)
23
実質要件
(60点)
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
10
課題解決の妥当性(20点)
1
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
2
合計(60点)
13
合 計
36

【評価結果】みんなの党 マニフェスト評価   合計 36点 (形式要件 23 点、実質要件 13 点)

【形式要件についての評価 23 点/40点】

「地方がもっている個性や多様性」「地方を元気にするためには、国民に最も身近な地域が主体となり地域住民のための政治を行っていくことが不可欠」など、みんなの党が持つ地方分権(地域主権)の理念をきちんと提示している点は高く評価できる。
地域主権型道州制へ7年以内に移行するとの目標を掲げ、担当大臣を設置し、工程表、地方も参加する遂行機関の設置等を内容とする道州制基本法を制定するとしている。また税源移譲についても4年以内に道筋をつけるとしており、達成時期の明確化、政策手段の明示など形式的要件についての評価項目を踏まえた内容となっており、他の党に比するとマニフェストとしての体裁が整っており評価は高い。

【実質要件についての評価 13 点/60点】

政策の体系としては、道州制の導入に向けて担当大臣の設置等、組織体制の整備から、税源の移譲、水平的財政調整制度の法制化、そして導入後の憲法改正を視野に入れるなど、順を追った政策体系であり、課題の抽出についても破綻はない。
みんなの党は、市町村・都道府県・国の三重行政の弊害の解消と謳っているように、基本的な考え方として、基礎自治体・国の二層式行政システムを目指している。しかしながら、全国に点在する自治体の多様性が視野に入っていないように感じられる。実際、地方制度調査会の最新提言にあるように、過疎地域では単独で地方自治法に定められた行政実務を遂行することが難しくなってきている自治体も存在し始めている。そのような過疎地域等で、みんなの党が指し示した課題解決策が十分に機能するか疑問が残る。
維新の会と同様に、こうした改革に対応できる大都市圏域の団体を中心に施策が検討されている感があり、我が国周辺部に点在する過疎地域の小規模基礎自治体が視野に入れて作られた政策であるか疑問である。
全体として行政改革の視点からの机上で考えられた地方分権改革との印象が強く、分権により大きく影響を受ける地域住民の立場から、多様な地域性に配慮したきめ細かい課題抽出と対策の検討を行うべきと考える。
▲top



【 評価点数一覧 / 共産党 】

項 目
共産党
形式要件
(40点)
理念(10点)
0
目標設定(10点)
0
達成時期(8点)
0
財源(7点)
0
工程・政策手段(5点)
0
合計(40点)
0
実質要件
(60点)
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
0
課題解決の妥当性(20点)
0
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
0
合計(60点)
0
合 計
0

【評価結果】共産党 マニフェスト評価   合計 0 点 (形式要件 0 点、実質要件 0 点)

【形式要件についての評価 0 点/40点】

マニフェストに地方分権改革等地方についての記述はない。

【実質要件についての評価 0 点/60点】

国と地方の役割など地方分権改革や道州制の導入など、我が国の政治行政のあり方について、共産党としてどのような理念を持っているのか、記述が全くないことは公党としてこの課題に対して問題意識がないと思われても致し方ない。したがって最低評価とならざるを得ない。
▲top



【 評価点数一覧 / 社民党 】

項 目
社民党
形式要件
(40点)
理念(10点)
8
目標設定(10点)
5
達成時期(8点)
0
財源(7点)
0
工程・政策手段(5点)
4
合計(40点)
17
実質要件
(60点)
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
10
課題解決の妥当性(20点)
3
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
1
合計(60点)
14
合 計
31

【評価結果】社民党 マニフェスト評価   合計 31 点 (形式要件 17 点、実質要件 14 点)

【形式要件についての評価 17 点/40点】

社民党は15の提案の一項目として「分権・自治」という括りをしており、住民自治を基本としながら保育、介護、障がい者福祉、義務教育など生存権や安全の確保などについては国が最低基準を設けるなど、社民党の思い描く行政システムの理念がよくわかる内容となっている。

また、市民自治を基本に据えた「地方自治基本法」の制定や新たな大都市制度のあり方の検討、国の地方出先機関の改革、住民参加の仕組みの追求による自治体内分権、「国と地方の協議の場」に各種分科会の設置など、およそ考えられることはほぼ網羅されている。
しかしながら、それは同時に分権・自治のコストとも考えられ、実際にこれらを運用した場合の国民負担まで検討した上での政策提案とは思えない。分権・自治の推進と行政コストとのベストバランスを探る方向でもう少し煮詰める必要があったのではないか。そのような詰めを行えば、必然的に個別の政策について、目標達成の時期等、具体的内容を明示できるようになり、マニフェストとしての水準が向上すると思われる。

【実質要件についての評価 14 点/60点】

党としては、道州制の導入については、道州間格差あるいは道州内格差を生み、周辺部となる農山漁村衰退や身近な行政の後退につながるものと捉えており、国民論議が十分でない現時点では反対と明示している。政策課題について根拠を示し立場を明らかにすること自体は高く評価できる。その上で、現在の政治行政システムの枠組みの中での政策案の提示になっているのだが、一般の国民にはその体系が分かり難く、施策の羅列のように見える。もう少し有権者に対してわかりやすく提示すべきと考える。

実質的な施策体系、課題抽出の妥当性としては十分なものといえる。しかしながら、形式要件の欄で指摘したとおり、コストバランスの検討が十分でなく、政策実行に向けた体制やガバナンスについては、政策実行を担保するものが提示されていない。
社民党の置かれた立場を鑑みるに、これらの政策を実際に実行しようとすると、かなりの困難を要するものと思われる。野党としても、理想と現実を踏まえた政策の提示、及びそれについて果たすべき説明責任があると考える。
▲top



【 評価点数一覧 / 生活の党 】

項 目
生活の党
形式要件
(40点)
理念(10点)
5
目標設定(10点)
1
達成時期(8点)
0
財源(7点)
0
工程・政策手段(5点)
0
合計(40点)
6
実質要件
(60点)
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
0
課題解決の妥当性(20点)
2
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
1
合計(60点)
5
合 計
11

【評価結果】生活の党 マニフェスト評価   合計 11 点 (形式要件 6 点、実質要件 5 点)

【形式要件についての評価 6 点/40点】

「『地域』を守るために...(中略)...地域のことは地域で決められる仕組みへ転換」「地域のことは地域でできる地域が主役の社会の実現」など、生活の党が持つ地域に軸足を置いた地方分権(地域主権)という理念が感じられる記述は評価できる。

個別の政策については、中央集権体制からの転換のための各省設置法の廃止及び包括的行政組織法の制定や条例の上書き権の創設、一括交付金の復活と直接的に地方自治に影響のある政策を掲げているが、達成時期は明記されていない。また、政策についても目標と手段が混在しており、工程についても明確でない。
また、道州制について党としての賛否を全く記述していない。政権与党として推進していた政策であろうと、現時点で軌道修正を行うことについて問題はないが、国民に対して現時点の賛否等、党の立場を明確にしない点は大きなマイナスとなると考える。

【実質要件についての評価 5 点/60点】

生活の党が地域に軸足を置こうとしている理念は理解できるが、掲げられた政策は羅列されている感が強く、政策として体系付けられたものとは言い難い。中央省庁と地方自治体との仕事の役割分担や連携について、詳細を押さえた議論を踏まえての政策か疑問が残る。政策の体系については、もう少しきめの細かい課題を抽出し、それに対応する施策の積み上げが見えるようにすべきと考える。
また、生活の党が考える市町村・都道府県・国の行政のあるべき姿について全く説明されていない点が最も大きな問題点である。「地域が主体」との言葉はあるが、その「地域」という言葉が集落単位での住民自治を指すのか、基礎自治体を指すのか、都道府県を指すのか、曖昧な表現に終始している点は、有権者に対してそれぞれ都合良く受け取られることを期待しているようにも感じられる。
全体として地域に軸足を置くという理念は素晴らしいと思えるが、これに基づく地に足のついた政策立案と施策体系が整備されていればもっと高く評価されるものと思われる。

▲top



【 評価点数一覧 / みどりの風 】

項 目
みどりの風
形式要件
(40点)
理念(10点)
5
目標設定(10点)
1
達成時期(8点)
0
財源(7点)
0
工程・政策手段(5点)
0
合計(40点)
6
実質要件
(60点)
体系性・課題抽出の妥当性(20点)
1
課題解決の妥当性(20点)
0
政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)
0
合計(60点)
1
合 計
7

【評価結果】みどりの風 マニフェスト評価   合計 7 点 (形式要件 6 点、実質要件 1 点)

【形式要件についての評価 6 点/40点】

「現場に根ざした行政がもっとも効果的で効率的。中央を地域のために働く組織へ、地域が動きやすい行政を実現します」と行政改革の面から地方分権の理念を語っているが、国民にとってはわかりやすい表現ではある。
しかしながら、掲げている政策は「基礎自治体の体制整備と権限財源移譲」と「中央政府のスリム化」だけであり、政策目標としてはあまりに概略だけで、個別の政策が論述されていない。また達成時期や工程、政策手段についても述べられておらず、マニフェストの体をなしていない。

【実質要件についての評価 1 点/60点】

みどりの風の行政改革・地方分権の理念に基づく政策体系が示されているとは到底言うことはできず、課題抽出は不十分であり、妥当性についても疑問が残る。

ましてや、政策実行の体制やガバナンスについてはまったく触れられていない。

▲top