日本の政党などがマニフェスト(政権公約)を掲げて選挙を行うようになって3年が経とうとしています。これまで言論NPOは3回にわたって、政党のマニフェストの評価やその後の政権与党の政策実行の評価を行い、公表してきました。私たちがこうした評価作業に取り組んだのは、日本の政治と有権者との間に政策の実行を巡る緊張感ある関係を作り上げたいと考えたからです。
今回、このマニフェスト評価の内容や議論を言論NPOのウエッブサイトでも公開することにしました。
スローガン化していた選挙の公約を、「国民との契約」にまで高めようとしたマニフェストの運動は、日本の政治を有権者本位に組み替える新たな試みだと、私たちは考えています。私たちがマニフェストの契約性にこだわるのは、政治家にお任せする政治から、有権者が自ら政策を判断する政治への転換を進めたいからです。
この間、たしかに選挙時には政党はマニフェストを提案し、不十分ながらもマニフェストに書かれた内容を政府や党も政策実行の際には意識するようにはなりました。しかし、私たちが行った3回の評価の結論はいずれも「マニフェストが国民との契約として機能していない」というものでした。
マニフェスト自体はほとんどがスローガンで、各分野の目標やそれを実現する施策体系やロードマップが描かれないまま掲載されています。また国民の間で論議を呼びそうな選挙対策上都合の悪い課題は公約から外され、政策の後出しが繰り返されています。これでは、有権者と政治との契約書とはいえません。
そこで私たちは二つの評価基準を軸とした評価体系を設計し、評価を行うことにしました。ひとつはマニフェストの作成から実行に至るマニフェストのサイクルを実現するための形式的な評価基準であり、またもうひとつはマニフェスト自体の妥当性を判断する実質的な基準です。つまり、マニフェスト自体が日本の現状の課題を抽出してその解決策を提示できているのか、あるいは実現する理念やビジョンが描かれ、それを実現するために明示された目標や施策体系と整合性を持っているかを判断することにしたのです。
こうした厳しい評価基準を採用したのは、マニフェストを国民との契約に発展することを期待しているからです。
私たちはこの作業を定期的に行い、その内容を「マニフェスト評価書」として、毎年、公表することにしています。この作業には政策問題の専門家などが加わり、関係者間の議論や政府の政策部門の当事者や政治家などへのヒアリングや政策実行プロセスの検証や、有識者へのアンケート調査などを踏まえて行われています。
言論NPOのウェブサイトでは、専用のブログページを用意し、毎年行われるこうしたマニフェスト実行の評価結果のほか、その過程で行われる政策当事者や政治家などの議論などを公表し、多くの方が政策決定の動きを監視し、判断できるような判断材料を提供したいと思っています。ウェブサイトでは、マニフェスト評価について、政策の進捗状況について国会等での政策決定や実行について、リアルタイムで私たちの評価の議論をお伝えする「最新の評価議論」のコーナー、これまでの評価結果をお伝えするコーナーなどを設置しています。また、今後はローカル・マニフェストについて扱うコーナーも開設予定です。このウェブページを通じて、有権者の皆様へ政策に関する判断材料を提供していきたいと思います。