工藤のアンケート分析1 -アンケートの分析前に断っておきたいことが二つある-

2007年1月09日

昨年末から、正月を挟んでようやくこの週末で安倍政権の集計結果がまとまり、9日結果を公表することができた。まずこの試みへの皆さんの協力にお礼を言いたい。

年末の慌しい中、多くの方が回答に寄せていただき、正月が終わっても回答が事務所に届いている。これらは最終的にデータに反映させるつもりだが、とりあえず、350人の集計結果をここで公表したい。

アンケートというものは、往々にして批判的になりやすいものである。日本人は人を褒めることが苦手だからなおさらそうだが、そうした特質を省いても、安倍政権への不満は多方面に及んでいる。その最大の要因は国民への強いメッセージ力の欠如にあることはアンケート結果からもあきらかである。

それは話術やスタイルと言ったものではないことは、今回の調査で唯一評価が高かったのが首相の「人柄」だということからも分る。結局、何をこの政権は目指そうとしているのか、そのために政治家特有の情念と言うか、まさに自らの強い意志でそれをどう実現したいのか、それが見えないのである。

その点、回答者からはかなり厳しい意見が相次いでいた。「もともとその能力が欠けていた」「自分の思いよりも今年7月の参議院選挙での延命姿勢だけが見える」などなど。私はまだそこまで決め付ける気にはならないが、この間の官邸主導体制の混乱、復党やタウンミーティングの問題などの様々な失点は、その試行錯誤を許さないほど、回答者に深い失望感を与えている。

この調査結果の分析に入る前に二つほど断っておきたいことがある。

一つはこの調査自体、厳密に言えば、この100日時点の安倍政権の評価ではなく印象に過ぎないことである。

ただ、印象でもその印象が政策現場に近い、官僚や一線のジャーナリストにもたれているのなら、そこにはある種の直接の情報にもとづく評価が伴われている。今回、調査対象をそうした現在と将来の政策マーケットの構成員となるべき層に絞ったのは、印象であるとの制約はあるが、現時点での政策マーケットで活動をする人々の意見を集約したかったからである。

もちろん、評価には明確な基準とそれを体系化した評価の設計が不可欠である。私たちの設問が、そうした言論NPOの基準を様々な形で組み込んだのは、それを可能な限り評価に近づけたかったからである。だからこそアンケート結果を採点化するという、ある意味で冒険を試みることもできた。

言論NPOでは毎年選挙前にマニフェストの評価や政権の政策実行の評価を公表している。今回の調査結果はあくまでも100日時点での有識者の印象だが、これで私たちの試みは途切れるわけではない。今回の調査を判断材料の一つにし、7月には本当の評価を公表する予定である。

もうひとつは、この調査は政権批判のために行ったのではないことである。政治は有権者が選ぶものだが、そうした政治への有権者の参加を促すための契機にしたかったのである。

先進の民主主義社会では、メディアも含めて政治への監視が様々な形で行われている。実はこの安倍100日DAYSは、アメリカでもCNNなどがブッシュ政権で行っており、世界ではそう珍しい試みではない。私はそうした緊張感ある関係を日本の政治にも作り出したいのである。

安倍氏はもちろん100日目に評価されるとは思っていなかっただろう。しかし、有権者の目はそれほど厳しいのである。それを知ってくれるだけでも今回の調査結果は成功だと私は考える。あとは、今回指摘されたことを安倍政権は参議院選挙までにどう捉え、何をどのように政策実行過程に反映してゆくのか。
この点が明らかにされてゆかなければ、私たちの評価はさらに厳しいものとなろう。

そうした心構え、ある意味では弁解をしたうえで、評価結果の説明に入ることにする。