福田首相の辞任表明について

2008年9月02日

Q. 福田首相が辞任表明しましたが、その点に関してどう思いますか?

驚きました。8月19日に僕は総理と会ったんですけど、そのときは、非常に前向きだったし、国会のことも語っていたからです。僕たちの東京-北京フォーラムに関しても非常に関心を持っていました。今年は特に日中平和友好条約30周年という、日本と中国が国交を回復した歴史的な区切れのときで、今の時期の意味もわかっていらっしゃった。そういう意味で非常に驚いたというのが今の心境ですね。

Q. 福田首相は1年足らずで辞任を表明しましたが、その点に関しては?

政治を投げ出すことはまずいと思います。ただ、福田総理はいろんな状況の逆境があって追い詰められて退陣したというよりも、今のまま臨時国会を開いても攻めに転じられる保証がなかったという見極めをしたのではないかと思います。でも、総裁選をしても攻めに転じる保証もない。それが福田総理の苦悩のように思います。

ただ僕がここで感じるのは、国民との合意に基づかない政治には非常に脆さがあるということです。安倍さんのときに参議院選挙はありましたけれど、2005年の小泉さんの郵政解散以来、有権者との政権公約をベースにした選挙が全然行われていない。ということは、国民との合意に基づかない政治が続いているということです。内外の課題が大きくなる中で、日本の政治は国民の約束に基づいた形を取り戻すチャンスをずっと狙っていたのですが、それがうまくいかない。日本の将来のデザインや設計と、増税を含めた負担の問題に、日本の政治がそれらにきちんと国民に説明できないという状況が今この事態を招いていると思います。

確かに、いろんな状況で困っている人はいっぱいいらっしゃるけれども、しかし将来こうなっていくんだ、そのためにこういうことが必要だという説明があれば納得できる。日本の政治はなかなかそれができない。

福田政権の1年間を見ても結局国会の中で行われたことは選挙のための戦いだった。だから僕も何回か「未来を語れない政治になっている」と警告したのですが、それができるかどうかの瀬戸際に日本の政治があると思います。福田政権では結局、その立て直しができなかったということです。
 
僕は日本の政治はかなり重症でこの間の失敗から立ち直ることは容易ではないと思っている。今の日本の課題をどう解決するかというビジョンや政策競争が日本の政治の舞台で始まらないと、日本の未来は見えないと思います。政党内で総裁が変わってもそれだけではもう無理な段階で、やはりこの状態は民意を問うしかないのが、今の日本の政治だと思います。これから自民党の総裁選挙があり、また民主党も、対立候補がいないという状況ですが代表選があります。その政党の党首選びから国民にオープンにしていって、そのプロセスを国民に見せた上で国民との約束をするというサイクルにこれから変えないと、日本の政治は本当に国民から離れてしまうのではないかと思っています。そういう意味で、僕たちは評価という視点でそうした政治へのプレッシャーをかけなければと思っています。9月15、16、17日に日中の対話(注:第4回東京-北京フォーラム)もあって大変なのですが、そろそろ私たちも日本の政治の評価の動きを本格化させようと思っています。


聞き手:インターン 安達佳史(早稲田大学)