「工藤泰志と言論NPOを丸裸にする!」
  -ON THE WAY ジャーナル 2010.10.13放送分

2010年10月13日

放送第2回目の「工藤泰志 言論のNPO」は、「工藤泰志と言論NPOを丸裸にする!」と題して、10月6日(水)5時30分からJFN系列で放送されました。その収録風景を公開致します。
ラジオ放送の詳細は、こちらをご覧ください。

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「ON THE WAY ジャーナル
     工藤泰志 言論のNPO」
―工藤泰志と言論NPOを丸裸にする!

 
(2010年10月13日放送分 13分48秒)

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谷内: おはようございます。番組スタッフの谷内です。「ON THE WAY ジャーナル」水曜日、今日も宜しくお願い申し上げます。今日のテーマはこれにしました。「工藤泰志と言論NPOを丸裸にする」ということです。今日は2回目ということで、ラジオをお聞きの皆様にははじめましてという方もいらっしゃいますので、今日は「言論NPOとは何か」、これについてじっくりお話していただいて、さらにこれからの社会において言論の重要性とかまたNPOの必要性について考えていこうと思います。


工藤: 私は十何年前から坂本竜馬とか幕末が好きでしたが、あのときに「横議・横決・横行」という言葉がありました。つまり「横に議論して、横につながって、横に行動する」と。坂本竜馬も脱藩して横につながっていったではないですか。まさに今、言論NPOも「横議・横決・横行」なのです。企業家もメディアも政治家も政府関係者も横につながって言論NPOというプラットフォームで議論しています。その目的は何かというと、日本が抱えている問題を解決しようと、日本の将来に向けて議論の力で挑戦しようということなのです。少しかっこよく言ってしまいましたが...。


谷内: なぜ、「言論」なのですか。


工藤: 言論という言葉は非常に重いなあと思っています。つまり健全な社会にはきちんとした議論をする場が必要なのです。その舞台はメディアに限らず、大学など色々あって、その中で日本が抱えている社会保障の問題、外交の問題など様々な問題を議論する。その議論が政治とか日本の将来を決めるときに判断材料になったりする。そういった仕組みは必ず必要なのです。しかし、僕もメディアにいたときも感じましたが、この力が非常に弱まったのではないかと思います。つまり言論の役割が力を失っている中で、課題解決を先送りするような政治が繰り返されたり、批判のためだけの議論になったりしているのです。全然日本の未来が見えなくなっています。
 言論NPOを立ち上げたとき僕は40代でした。当時経済的に不況でしたが、僕は日本の将来を見えなくしているのは、経済的不況だけではなく、「言論不況」ではないかと提起したのです。それは結構メディアで取り上げられて、「言論不況を唱える工藤さん」ということで注目されました。これを言った以上は、この言論不況を解決するための動きをしなければいけないと思いました。それで言論を立て直すための一つの流れをつくりたいと思い、会社を辞めてNPOを立ち上げ、その名前を「言論NPO」にしたという経緯です。


谷内: どういった場所で、具体的にどのような活動をされているのですか。


工藤: 僕たちはインターネットで議論をしています。言論NPOのHPを見ていただければ分かるのですが、各界からいろんな人たちが議論に参加をしています。各界を代表する有識者や専門家の人が議論をしていますが、そこに参加している人以外にもいろんな方がいまして、皆さんボランティアで参加しています。みんなが自分の意思で議論作りをしよう、ということで集っているのです。
 言論というのは市民や国民が主役になる社会を支える役割だと思います。僕も一時期そう思っていましたが、「政治家に任せておけば世の中が良くなる」と言うのではなく、自分たちが政治や政策を判断して、その中で新しい日本を作っていくためにその判断材料を提供するのが、言論の役割であると思っています。
 だから選挙前に政党のマニフェストの評価を行なったり、政府の政策を評価したり、そのプロセスや内容をどんどん公表しています。オープンな議論をしたり、日中関係については中国に乗り込んで議論をしたりとかしています。これらすべてをインターネットで発信して、みんなが議論を一緒に考える舞台を作っています。
 そこでは、今の政治的な問題や社会が直面している問題とか、それから日本の将来に対する議論を行なっており、国民が自分たちで国を考えるときの判断材料にしてほしいというのが僕たちの狙いです。しかもそれを非営利で行っている、ということがミソなのです。


谷内: 先ほどインターネットでやっていると仰っていましたね。立ち上げられてからこの10年でインターネットの環境は相当変わったのではないですか。


工藤: 変わりましたね。つまりインターネットが発達することによって、みんなが自分たちで発言し、考えるチャンスを得たのです。そうした発言を、政策を動かすような議論に発展させていかなくてはならない。僕たちは質の高い議論をきちんと提供しますが、そこにみんなが参加して、場合によってはその人たちも議論できる仕組みを取り入れていこうと思っています。僕らも様々な議論をここで提起してきましたが、生活感覚でモノを考えるという視点が、物事の課題解決を考えるのに非常にいい素材を提供してきたし、全国いろんなところに、その問題を解決するための種がたくさんあるな、と気づきました。僕はこの番組もその一つとして試みたいのですが、やはりみんなの意見を寄せてもらって、みんなで考えるという仕組みをつくっていきたいのです。それをつくっていけば、いろんな困難があっても乗り越えるための知恵が出てくると思います。日本は多くの課題を解決するということについて政治が機能しないために、将来に対して不安が広がっています。政治に任せてそれをただ待っていても、もう答えは出せないと僕は思っています。「自分たちが一緒に考えよう」という方向に、頭を切り替えてもらって、自分たちの問題として向かい合うしかないのです。言論NPOは、その議論の舞台をつくっていきたいのです。


谷内: なぜ「NPO」なのですか。


工藤: 僕も今は勉強したのでかっこよく話せますが、はじめは全然わからなくて、当初はある人がNPOは「ニッポン・プータロー・オジサン」だと言っていたので、本当にそう思っていました。「N」は、ニッポン、「P」は、プータロー、「O」はオジサンで、これは僕のことかな、と思っていました。しかしNPOだと貧乏になるので、「N」はNippon、「P」はpoor、「O」はオジサンかなとも思いました。つまり貧乏でも志で生きる、自由だぞ、と。やせ我慢だけど志で生きればやっていけると思いました。その後、色々勉強しましたが、全然違いました。NPOだけど志の組織なのです。つまりNPOは、Non-profit Organizationなので、利益のためにやっていないのです。だから志のためにやっています。言論NPOの場合、議論は志なのです。僕は夢があって、素敵な社会は、自分が自分の人生だけではなく、社会のために何かをしたり、それが尊重される社会がいいなと思っています。議論の力でその夢をかなえたいと思っていましたが、動き出したら社会には僕と同じように考える人がたくさんいました。僕は、ジャーナリズムというのは、本来はNPOだったのではないかと思っています。やはりモノを売ったり、視聴率を稼いだり、結果として組織を維持するためにこれらは必要ですが、これが目的になってはいけない。売るためにわざと売れるような番組や記事を作るのではなく、あくまでも社会にいろんな判断材料を提供したり、いい議論を共有したり、それがメディアやジャーナリズムだと思います。
 ひょっとしたら、言論NPOという試みは日本のメディアに対しての問題提起ではないかとさえ最近思っています。今、インターネットが発達してメディアが大きく変わろうとしているではないですか。営利ではなく非営利でメディアが取り組み、多くの国民に支えられる。そして、使命感は日本の未来なのです。それに関して議論の競争が始められないかと、それを本気で思っています。


谷内: 「N」=Nippon、「P」=poor、「O」=オジサン、ですか。NPOの運営は大変ではないですか。


工藤: ええ、大変ですよ。はじめの3年間は大晦日の日に毎回「もう、言論NPOをやめよう」と思いましたね。つまりNPO経営というのは寄付金を集めてそのお金を使って終わってしまうのです。普通の企業であれば資本があって、それをベースにしていろんなことが出来るじゃないですか。別に収益の事業をやっていないので、12月末に、今年は必死でお金を集めて活動をやってきたけど、また来年それを始めからしないといけないのかと。どこまでこれがつづくのかと本当に悩みました。
 しかし、オバマ大統領の選挙を見ていてそうではないと感じました。オバマの選挙はまさに国民からの寄付で成り立っていて、一般の人から1,000円、2,000円と広く寄付を募り、何百億と集めるわけです。僕たちは努力不足だと最近思いました。
 僕らが目指しているのは、日本の中に本当の民主主義ができて、強い市民社会ができて、日本の将来を自分たちが考える、つまり政治を僕たちの手に取り戻そうという動きなのです。であるとしたら、この動きはより多くの人に支えられる必要がある。寄付も参加の仕方なのです。だから、僕は広く寄付を集められないかと思っています。そのためにも、どんどん熱く語らないといけない。


谷内: インターネットとかでの反応はいかがですか。


工藤: 最近は大きくなっていますが、まだまでですね。この運動は僕らの組織の維持のためにやっているのではなく、日本が変わるための、しっかりとした民主主義をつくるための運動なので、やはりもっと多くの人と一緒にやりたいのです。だから輪をもっともっと広げていきたい。
 僕も多くの人に会いましたが、東京だけではなく、地方でもいろんな各分野で活躍している素敵な人がいっぱいいる。日本は捨てたものではない、と僕は思っています。みんなが自立してこの社会の中に挑戦していくという流れがすごく大きなものになれば、日本はかなり変わると思うのです。いつかこの番組でもやりたいのですが、僕は市民社会の中に変化をつくりたいのですね。いまの日本が抱える課題の解決で競争が始まるような変化です。
 僕たちもそうですが、何かをやっている人はともすれば自分たちしか見えなくなることがあるのですね。しかしそれではだめなのです。あくまでも社会のために何かを実現して成果をださないといけない。その成果が困っている人たちに対して何か貢献したり、またはその困っている人たちを助ける仕組みをつくったり、いい議論を提供したり、こういったことを競争できるような変化を作りたいのです。
 僕たちはコンテンツのレベルは絶対に手を抜かないようにしています。それくらいの使命感を感じた議論作りをしようと思っています。またまた熱く語ってしまいましたが、本日は「言論とNPO」について話しました。皆さん、ありがとうございました。

(文章は、動画の内容を一部編集したものです。)