2011年、市民が動けば日本は変わる大きなチャンスの年に

2011年1月01日

2011年、言論NPOの活動がどのように動いていき、どのようなことを実現したいのか、代表工藤が語ります  聞き手:田中弥生 (言論NPO 理事)

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2011年、市民が動けば日本は変わる
大きなチャンスの年に

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田中: 工藤さん、あけましておめでとうございます。
工藤: おめでとうございます。

田中: 今年、最初のインタビューなのですが、誰もが今注目しているのは、政治の行方だと思うのですけれど、どんな展開になるか、工藤さんのご意見を聞かせていただけますか。


工藤: 展開は、今回の国会では、予算の関連法案が今のままでは通らないので、常識的に考えると、政治は非常に混乱していって、場合によっては何があってもおかしくないという状況だと思います。ただ、一番僕が気になっているのは、今の政治で行われている全ての問題は、何かの答えを出す方向に動いていないということです。つまり、僕たちから見れば、この国が未来に向かって今直面している課題を解決して、どう未来に動き出すかということに一番関心があるのですが、今、永田町で行われていることは、それとは違うのですよ。自分たちの権力基盤や、政権を維持することの中での争いですから、今回の政治の混迷は、今の国会で行われているゲームの中では、僕たちが望んでいる変化を起こすことはできない、ということを考えないといけない段階だと思っています。


田中: 確かに、そのことを私たちも感じているのですが、昨年の12月27日にマニフェスト評価、菅政権100日評価の記者発表をしましたけど、皆さん政策の統一性みたいなものが、個別の政策を見ていてもわからないという点が共通していたのですが、今仰っていることと共通しますか。

工藤: それ以前の問題で、去年僕がラジオである議論をつくっていたのですが、今日本にとって一番まずいことは、政府の統治が崩れていることです。政府の統治とは、例えば、ある政策や日本の将来に対する戦略を立案して、その実行に対して、総理がリーダーシップをもってやるという、その回転が始まっていないわけです。問題なのは、その背景にある政党はなんだろうと。政党は日本の将来に向けてどういうビジョンを持って、国民にそれを提起しているのか、ということは無いわけです。よく見ていると政党の中もバラバラで、色々な人たちが意見を持っているという状況です。つまり、政治の現象そのものが、一つの政策軸をベースにした競争になっていない、だから答えがでないわけです。この前の、27日の発表の時に100日評価と同時に、508人に回答してもらったアンケート結果も公表しました。そのアンケート結果で驚いたことは、今の日本はまさに政府の統治が崩れて、財政破綻や社会保障などの課題に答えを出せないまま、日本の政治が混迷をどんどん強めていく、国家危機の段階と思っている人が43%いるという結果でした。「国家危機」という言葉は、そんなに簡単に言える段階の話では無いわけです。つまり、多くの有識者が、政治はこのままいっても課題に向かい合えないということを感じているのですね。それが、今の日本に問われていることだと。
 一方で、僕が気になっているのは、来年1年間、今年2011年の1年間はどういうことかというと、多分、日本が将来に向けて行動を起こしたり、国民に呼びかけて、その中で議論が起こったりということができるかどうかの試金石の年だと思います。2012年、つまり来年になるとアメリカの大統領選、中国では権力交代があるし、韓国でも大統領選があるなど、世界の指導者層が大きく変わり始めます。一方で、今世界を見ていると、G7、つまり先進国の力が低下して、ほとんどの国が財政破綻とか、財政危機に直面しているわけです。逆に、中国を含めた新興国が大国意識を持っている国がかなり大きくなってきています。その中で、日本は理念や思想とか、ビジョンによって世界の中で存在感を持っているわけではなくて、ある意味、経済力で持っていたような日本がどんどん衰退に向かって、しかも将来に向けて課題解決もできないまま、漂流しているという状況になってみると、本当に今年は日本の未来について議論をし、そのための基礎固めを始めないと、本当に取り返しのつかない段階になるのではないかと思っているわけです。だからこそチャンスで、僕たちは色々なことを積極的に考えないといけない段階にきているのですが、それから見ると、今田中さんが言っている政治の局面が、余りにもお粗末過ぎるわけですよ。


田中: 今、チャンスという風におっしゃいましたが、具体的にどういうチャンスでしょうか。

工藤: それは、今までの僕たち有権者から見ると、政治や政権交代とか、政治の中でのゲームの展開を期待したところがあったわけです。それによって、日本の未来が変わるというふうに思ったのですが、よく見たら、全然変わらないではないか、体質がほとんど同じだったと。つまり、これは、政治に期待したり、お任せするような状況では、もう答えは出せないということに気付いた段階だと思います。だから、ある意味で今年、僕たちは目を覚まして、自分たちが考えないといけないという段階にきているということです。これは、日本の民主主義を考えた場合に、非常にチャンスだと思うわけです。そもそも政治というのは、僕たちの代表としていっているわけですから、僕たちが日本の将来とか、課題をきちんと考えるような姿勢を取り戻すことによって、日本の政治を変える大きな転機にきている。だから、今年は僕たちが動けば日本は変わる、それぐらいの大きなチャンスにある。そのチャンスを活かすかどうかは、僕たちにかかっていると思います。だから、僕たち言論NPOは、そのためにかなり大きな議論形成をしなければいけないと思っています。

田中: 非常に皮肉な結果ではあるのですが、こうした状況は、政治が有権者に近づいてきたというか、有権者の近くに政治がきたという感じですね。

工藤: もっと皮肉に言えば、有権者のレベル以上の政治ははっきり言って出ないということです。つまり、今の日本の政治は、やはり選挙を意識して、自分たちが志を持って日本の将来に対して、国民を説得するという政治家はいないのですよ。だから、結局、選挙に当選するためにはどっちが有利かという議論だけじゃないですか。だったら、僕たちが日本の将来に向けて、俺たち有権者はこういうことを真剣に考えるのだ、というメッセージを政治に送らないといけないのですね。だから僕は、「議論の力」が今年、非常に大事になっていると思います。


田中: では、具体的に2011年、言論NPOではどのような活動を予定されていますか。

工藤: 僕は2つあって、少なくとも日本は政府を始めとして、様々な仕組みが信用を失い始めているのですが、やはりきちんとした論壇があるべきだと思うのですよ。健全な人たちがきちんと議論をして、その議論をしていることを目に見える形で表に出さなければいけないと思っています。だから言論NPOは、対案力を持った議論を、オープンな形でみんなの前でやっていくことが必要だと思っています。今、課題になっている財政や社会保障、教育など色々な問題があるじゃないですか。自分たちの身の回りには、様々なイシューがある。それについて僕たちは議論をして、答えを出すような議論をしたいということが1つです。
 もう1つは、そうは言っても、有権者が政治に対してきちんとした意思を持って、有権者と政治の間に緊張感のある関係を取り戻さないと、日本の政治は変わらないのですね。だから、僕たちはこれまでやってきた評価というものをもっと一段レベルを上げないといけないと思っているわけです。そこで政党の評価だけではなくて、政治家の評価に入らなければいけない。つまり、政策軸をベースにした形で、日本の政治家が何を考えているのかということを、僕たちがきちんと調査をしたり、評価することの材料を有権者に提供していく。また、政治家や政党別の考え方にどのような違いがあるのかということを、議論を通じて目に見える形で、表に出していくということをしたいと思っています。やはり、政治のレベルの中で、私たちが議論でできることは沢山あると思いますので、それを今年から次々にやっていこうと思っています。


田中: そうしますと、やはり今までとちょっと違うなと思ったのは、今まではマニフェストを評価をするというところで、政治家から出された題材を評価していましたが、これからは、あるべき政策の姿についても議論をし、提案をしていくという、ある意味一歩進んだ活動をするということですね。

工藤: 僕たちが政策に対する対案を持って行かないと、政治家をそういう形で仕分けができないのですよ。だから、全てじゃないですけど、日本の課題にとって非常に大事な問題に関しては、僕たちは政策の提案をして行かざるを得ない。そして、その議論を政党に呼びかけないといけないと思っています。同時に、その中にいる政治家がどういうことを考えているか。やはり、全部がダメというわけじゃなくていい政治家もいると思いますよ。そういう人たちの姿を表に出していかないといけないだろうし、政治家が何を考えて、国会の活動で何をやっているかということを含めて、みんながそれを判断できるような材料を提供する必要があると思っています。


田中: 言論NPOでは、今一番の問題になっている、中国との関係において、6回以上の議論形成、フォーラムを行ってきましたが、去年のフォーラム直後に尖閣諸島問題が起きて、非常に難しい状況になりましたが、2011年の「北京-東京フォーラム」はどのようなことを予定されていますか。

工藤: 中国とのフォーラムは、国民間の相互理解をどう深めるかということが目的です。つまり、日本と中国が国同士で何をやっていくかということは政治の舞台でやるけど、今回の尖閣諸島を始めとする色々な問題の背景には、国民の相互理解があまりに幼稚で、基礎的な理解もないという本質的な問題があります。その中でも、メディアの様々な報道が十分に機能していない、という問題があるわけです。この問題に関しては改善するしかないので、僕たちは尖閣諸島問題も含めて、嫌な問題でも中国と本気の議論をして、そのプロセスや結果をきちんとみんなに見てもらう。そういうことをやっていく必要があるわけです。ただ一方で、僕たちは、日本がアジアや世界の中で、どのような生き方をしていけばいいかということに非常に関心があります。そういう大きな夢というか、ビジョンを語る議論にこの対話での議論をつなげていきたいと思っています。僕たちは、中国だけではなくて、色々な国とも議論したいと思っています。つまり、国際社会においても、日本の将来についての議論を他国の人たちとも議論をしていくということも考えないといけないと思っています。今、僕が言っていることは、さっきの国内問題の政治、それから海外問題もそうなのですが、今年は、日本が歴史上、日本の未来に向けて本当のスタートが切れるかの、大事な年だと思います。この大事な時に、僕たちはそこの現場から逃げたくないのですね。この場の中で、議論の舞台をつくって、多くの人が参加できるような仕組みをつくるので、ぜひ言論NPOの議論に参加して、来してほしいと思っています。


田中: 最後になりますが、今まさにオープンな議論の場と仰いましたし、それから有権者の近くに政治がきているという話なのですが、そのためには、私たち自身がしっかりとしなければいけないと思います。言論NPOでは、「市民を強くする言論」という活動を柱の1つに据えて活動をしていると思いますが、これについては、最後に言及していただけますか。

工藤: 強い民主主義をつくりたいと思っています。強い民主主義とは、テレビの中に政治があるという傍観者ではなく、当事者として自分たちの判断が日本の政治をつくるということをきちんと自覚するような、そして、そのためにきちんと選挙に行ったり、議論していくことが強い民主主義をつくる源だと思います。それをつくり出すベースは、僕たちそのものが自立していかなければダメなのだと思います。市民が今の社会に対して、自分たちも当事者の1人なのだということで、政治を選ぶだけではなく、自分自身が社会のために何かをしていくとか、社会と繋がって、自分のできる範囲でいいので、何かの課題に対して答えを出していくという循環が必要なわけです。つまり、強い市民社会と強い民主主義というのは表裏一体なのです。なので、私たちは、この自由な社会の中で、自信を持った生き方をしたいのですよ。それは、自分たちが逃げることではなくて、この社会の中に自分たちが参加することだから、その参加という手段を、僕たちは議論というかたちで皆さんに提供したいのですね。

田中: そうですね。今日、最後に非常にいいメッセージを下さったのですが、2011年は私たちが自信を持って生きる年にしたいですね。

工藤: そうですね。非常に大事なチャンスの年なので、必ずこの1年を大事にしていきたいし、皆さんと一緒に色々な議論をしたいと思っていますので、よろしくお願いします。

田中: よろしくお願いいたします。ありがとうございました。


(文章は、動画の内容を一部編集したものです。)