2012年を迎えての、新たな決意 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
田中:工藤さん、あけましておめでとうございます。
今年2012年はどのような年になるのか、お聞かせいただけますか。
工藤:2012年は僕たち有権者が日本の課題や未来にきちんと決断しなければならない年だと思います。
田中:何を決断しなければいけないのでしょうか。
有権者自身が国の未来を考え、決断する年に
工藤:昨年震災や原発事故が起きて、これまで日本が棚上げにしてきた問題がはっきり分かりました。原発の問題、それから社会保障や財政の問題。これらはこのままでは非常に厳しい状況です。実はこれらの問題は、課題としてこれまでずっと認識しながらも先送りにしてきたものです。一方で、今の政治の混乱を見て、日本の政治にはこういった問題に対して、きちんと解決をする能力も取り組む意思も無いのではないか、と多くの人が考えたはずです。しかし、政治というのは政治家だけの問題ではなく、民主主義の社会では有権者がその政治家を選んでいるわけですから、有識者にも責任があるのです。つまり僕たち有権者自身が、国の未来に関してきちんと考え、決断する。その結果今のような課題解決に向かい合えない政治を変える、そのような大きな変化を起こさないといけない年だと思います。
田中:その点でお伺いしたいのは、有権者側の議論としてよく出るのは、「今の政党や政治家にはがっかりしているけど、ほかに選択肢が無い、選ぶものが無い」という意見をよくお聞きします。この点を工藤さんはどう考えますか。
有権者自身が、日本が直面する課題に向かい合うことで、大きな変化をつくり出す
工藤:昨年の暮れに2012年はどのような年になるかについて有識者に緊急アンケートをしました。その中で、2012年は解散総選挙になると見ている人が6割いました。しかし問題はその解散総選挙のあとに日本の政治はどうなるのかという問いに対し、圧倒的に多かったのは、「政界再編」と「不安定な政治状況がこれからも続く」という回答でした。逆に今の野田政権が続くとか民主党の政治が続くと思っている人は3%しかいません。自民党の政治と答えているのも11%しかいませんでした。
つまり既存の政治の中で政権交代をしても課題解決はできないと見ています。今、有権者が求めているのは、思い切った変化なのだと思います。そのためには、まず政党そのものが課題解決をするために政策軸にまとまりなおさないといけない。今は、主張も考え方も違う政治家がただ集まって、ばらばらで何も意見をまとめられないといった状況なのです。つまり政策軸で判断できる、そうした新しい政治の動きを作っていかないとどうしてもこの課題解決に向かい合えないのです。しかし先ほどのアンケート結果では半分の人は政界再編しかないと答えていますが、そのうちの半分が政界再編してもうまくいかず政治の混乱が続くと見ています。この状況こそ、僕たちは2012年に乗り越えないといけないのです。あくまでもゴールは課題解決や日本の未来に向かいことであり、それに対してきちんと政治が機能する状況をつくらないといけない。
今年は選挙があるかもしれませんし、その時は有権者自身が判断しないといけないのです。そのときに田中さんがおっしゃったように政治家はどういうような政策軸で何を約束するかを見極めないといけない。その前提として有権者自身が日本の課題について真剣に考えないといけない。こうした有権者の動きが、日本に大きな変化を作り出すと思います。
田中:そうなれば有権者自身が社会的な問題をどう解決するかについてより深く考えることによって政治のレベルもその相乗効果で上がっていくとお考えですか。
工藤:つまり政治が強くなるというのは有権者が強くならないといけないのです。有権者が強くなることによって日本の政治や社会が強くなり、日本も変わると思います。
田中:そこで質問ですが、ではその問題に対して言論NPOはどのような取り組みを2012年に行うのですか。
健全な輿論をつくり出すため、有権者と専門家が共に議論を行う舞台をつくりたい
工藤:昨年の暮れに言論NPOは10周年となり、今年はまさにその新しい次の10年のスタートの年なのです。僕たちは日本の社会の中に健全な輿論(よろん)が必要だと思っています。つまり社会の空気に流されるのではなく、たとえ少数でも正しいことを主張する議論が大事だと思っています。ただ、それは単に議論するだけでは駄目で、議論を通じて強い輿論を大きくしていって、輿論の力で政治を変えないといけない。
日本の社会が未来に動き出すようにしないといけない。そのためにもきちんとした議論を作り出す舞台をこれまで以上に強化し、一般の市民や有権者が一つひとつに判断、決断するための議論をする。つまり専門家だけが議論するのではなく、有権者と共に議論をするという舞台をさまざまな形、例えばインターネットや携帯電話、そしてフォーラムなどの形でつくっていきます。その声を僕たちは政治にぶつけていく、そういった循環を作っていきます。
田中:政治にぶつける、あるいは有権者と専門家が交わるようなプラットフォームを是非作っていただけたらと思います。
工藤:今年2012年は私たち有権者が日本の未来に向かうための重大な年だと思います。さっきのアンケートでも7割の人が2012年は非常に重要だと答えています。世界では米国も含め色んな国で選挙が行われ、権力が問われます。日本も大きな世界の中の変化で、きちんと未来に向けた動きをはじめないといけない。そのために言論NPOは、今年、またがんばろうと思います。
田中:はい。期待しております。よろしくお願いします。