あけましておめでとうございます。 言論NPO代表の工藤泰志です。
昨年は、言論NPOの様々な挑戦にご協力やご支援を賜り、有難うございました。
さて、新しい年の始まりです。2017年は、言論NPOそのものの真価が問われる年だと私は考えています。
世界で私たちが拠り所としてきた民主主義や自由が困難に直面しています。ここで私たちが考えなければいけないことは、課題解決に挑まない民主主義というものは極めて脆弱だということです。
多くの国民が、自分の将来に対して不安を抱えている中で、政治家や、いわゆるエリートと呼ばれている人たちが、直面している課題に真剣に取り組んでこなかった。それが、市民の不安や怒りに繋がり、それを利用して支持を集める政治が台頭しているのです。
今年、米国ではトランプ大統領が正式に決まり、欧州では様々な選挙でポピュリズムの政治が影響力を増し、保護主義と移民などに対する排外主義が強まろうとしています。
これらは課題解決への貴重な時間を浪費するだけではなく、民主政治や自由な社会への信頼を失いかねない事態です。非民主化国の台頭は地政学的な対立を加速させています。リベラルな国際秩序が信頼を取り戻すためには、相当の覚悟と努力が必要な局面なのです。
昨年11月、来日したドイツのガウク大統領と直接お会いした時、私はどうしても聞きたいことがありました。民主主義の未来をどう考えるのか、ということです。
彼は東ドイツ出身で、秘密警察に管理される社会を知っています。そして、こう言うのです。個人の自由や人権を排除する社会や、国内のナショナリスティックな感情だけに支えられるような政治を、私たちは望ましい社会だと思うのだろうか。民主主義は、確かにいろいろな問題を抱えている。しかし、民主主義は学ぶことができると。
私は目が覚めた思いでした。世界で起こっている民主主義の脆弱性、ポピュリズムの問題を私たちは学び、その改善を考える絶好のチャンスにある。その動きを今、始めなくては、という強い思いでした。
15年前、言論NPOを立ち上げた時、私たちが問うたのは、言論の責任と市民の覚悟です。そして、私は日本が直面する課題解決のため、私たち市民が強くならなければ、民主主義は強く機能しない、と呼びかけました。私たちが選挙時と、毎年行う政党の公約と政権の政策実行の評価やアジアでの平和に向けた取り組みは、その実践なのです。
その動きをまさに加速することが、私たちの民主主義に問われた歴史的な課題であり、2017年の言論NPOの覚悟なのです。
私たちは、日本の将来を政治家にただお任せするのではなく、日本の課題に当事者として向かい合い、政治家を選び、課題の解決に取り組まなくてはなりません。課題に無関心であってはいけないのです。
言論NPOの責任は、日本の課題解決と市民をつなぐ土俵を機能させることです。しかし、この国の未来を決定づける課題に挑み続けるには、言論NPOだけの力だけでは不十分です。しかし、多くの方々の力を重ねれば、この国に課題に挑む新しい変化を起こすことができるのです。
新年、年明けから私はアメリカを訪れ、トランプ政権の米国と、民主主義を多くの人たちと議論を行います。そして、その動きを年内に欧州やアジアに広げ、そしてこの国に課題解決に向けた動きを作りだします。そして、その動きを次世代につなげたいと考えています。
私たちの新しい挑戦に力を貸していただければ幸いです。
2017年1月1日
言論NPO代表 工藤泰志