私たち自身が当事者となり、世界の課題に立ち向かう
―ワールド・アジェンダ・カウンシル(WAC)発足にあたってー

2016年2月12日


世界の課題を議論する舞台を、日本に創出したい

 言論NPOは2月10日、有識者会議「ワールド・アジェンダ・カウンシル(WAC)」を発足させました。これは、私たちが1年前から準備していたものです。

 国際社会では、今、様々な問題が出てきています。そうした問題に関して、日本はもっといろいろな議論を興していいのではないか、と思っています。私が国際会議に出て感じるのは、日本の社会の中に、世界の課題を議論する言論空間が非常に限られていることです。また、それを担う人材も少なく、世界に対して議論を発信する力も弱い。

 私は、この流れを変えたいと思いました。そして、私たちは、日本の将来と世界の課題をつなげて、世界の課題を議論し合うようなカウンシル、協議会をつくろうと考え、計画してきました。今日2月10日、そのカウンシルが発足しました。私たちはこれから、このカウンシルを軸にして、日本が今直面している、また、私たちが考えなければいけない世界課題の議論に着手することとなります。


岐路に立っている世界の平和や課題を、私たちも考えるべき

 私たちが、まず議論を始めたいのは、世界の平和のことです。特にこの数年、私が気になっているのが、国際秩序が不安定化していることです。欧米を軸としたこれまでの秩序に中国など新興国などからの様々なチャレンジがある、ということだけではありません。脆弱国家に代表されるように、国と統治、つまりガバナンスが不安定化し、それが周辺を巻き込んで深刻な影響を与え始めています。中東での国内紛争では、和平の動きが始まったとはいえ、難民が大量に発生し、国家が破綻している状況です。様々な紛争解決で国連安保理の大国が合意できず、むしろ、大国の中で現状の変更に乗り出す動きも存在しています。世界は今、非常に大きな曲がり角に来ているのです。

 国際政治の軸はアジア太平洋にシフトしていますが、経済的な大きな可能性とは裏腹に、この地域には不安定な勢力均衡が有り、共通の価値観や利益がなかなか共有されないままに様々な対立が存在しています。こうした環境の中で、世界やアジアの平和や様々な課題解決にどう取り組めばいいのか。日本の私たちも、この点を考えるべき局面だと思うのです。


日本でのG7と中国でのG20を機に、世界への議論発信に着手する

 そして、2016年、この年明けから私たちは深刻な危機に遭遇しています。中国の経済が

 非常に厳しい状況となり、世界のリスクを高めています。経済の不安は国際政治に存在する様々な不安定性と連動して、それをさらに悪化させかねないのです。世界は、現状の様々は枠組みを総動員してこれに対応する局面なのです。

 日本では、5月末にG7(先進国首脳会議)が行われ、また、日中韓首脳会議もいずれかの時期に日本で開催されます。一方、中国ではG20首脳会議が行われます。つまり、世界の課題を考えるプラットフォームが、くしくもこの日本と中国に形成されるわけです。私たちは、このチャンスを利用して、今ある課題をきちんと考え、世界にその議論を発信する作業に入らなければいけないと思っています。


東京から世界へ、解決策を提案する仕組みづくりを目指す

 私たちは、WACでの議論を土台として、来年3月に「東京会議」を東京に発足させるための準備に入っています。この「東京会議」は、世界の主要なシンクタンクとも連携しながら、東京発で世界の課題を議論し、その解決策を提案していく場になります。このように、世界に対して東京から様々なメッセージを出していく仕組みをつくることが、これから始まる議論の次にある、私たちの目標です。


多くの国民が、世界の問題を当事者として考える舞台を生み出したい

 これから1年間の議論を通じて、多くの国民が世界の問題を身近なこととして捉え、その解決策を当事者として考えるような舞台をどんどんつくっていきたいと思っています。私たちの取り組みに、ぜひ注目していただきたいと思います。

 3月27日には、「東京会議」のプレ企画として、地球規模課題対話「ワールド・アジェンダ2016」を東京で開催します。その詳細については、皆様にも追ってご案内させていただきますので、お時間が許せば、ぜひ参加していただけますと幸いです。