アジア・リージョナル会議を通じて見えてきたアジアや世界の課題

2012年11月02日

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アジア・リージョナル会議を通じて見えてきたアジアや世界の課題

聞き手:言論NPOスタッフ


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スタッフ:工藤さん、こんにちは。2日間のアジア・リージョナル会議を終えての感想を教えてください。

工藤:南シナ海の問題、ASEANの今後ということを考えたときに、非常に緊張感のある、また意義ある会議になりました。つまり、中国の問題です。南沙諸島では領海の紛争問題があって、中国との間に非常に緊張感ある関係があります。その中で、尖閣問題が非常に大きく取り上げられています。ASEANのいろいろな関係者と話をしましたが、尖閣問題はどうなるのか、ということをかなり気にしていました。そういう中で、私は今回、尖閣問題の対応についてスピーチをしました。


スタッフ:今回は、シンガポールの大使であるトミー・コウさんとの対談もありましたが、会議以外の対談やコミュニケーションなどを通じて感じたことを教えてください。

工藤:今回、トミー・コウさん始め、いろいろな人達の話を聞いて、尖閣諸島についての問題を非常に気にしていることを知りました。日中という2つの国が対立して、仮に紛争が起こると、そのままASEANにも影響してしまうということで、何とか紛争を回避できないか、平和解決できないか、ということが大きな論調でした。ただ、ASEANとしては、中国との問題があって、ASEANそのものが統一をちゃんと守っていって、発展するという点で、日中関係について表だって発言はしたくない、ということは感じました。しかし、本音は日本と中国の対立を何とか回避できないか、ということでした。

 私は、今回、20カ国の前で、尖閣問題の処理に向けてのスピーチをしました。そのスピーチに関して質問が沢山出ましたし、かなり反響を呼びました。尖閣問題については日中間で対立があるし、私自身は日本の領土だということを貫いています。しかし、領土問題ではなくて、軍事的な紛争を起こさないという点で、これを封じ込めることができないか、ということが私の提案でした。日本では尖閣問題について領土問題としてどうすればいいか、中国の挑発に対してどうすればいいか、という議論になるのですが、私は、領土問題はかなり深刻でなかなか解決はできないだろうと思っています。しかし、少なくとも、緊張感ある状況でナショナリズムが助長する形で軍事紛争になる、ということは何とか封じ込めるべきだと思い、今回の提案に至りました。

 そう考えた場合に、少なくとも海洋部分で軍事的な衝突が起こらないように合意をしなければいけないだろうし、両国が互いに頭を冷やすような仕組みが必要です。しかし、それを政府ができないのであれば、私たち言論NPOのようなトラック2、トラック1.5の中でやろうと思っているわけです。そういう提案に対して、皆さん、かなり関心を持っていただき、沢山の質問が出るなど盛り上がりました。その多くは、私が言っている「封じ込めて管理する」ということは当たり前で、それをどうしても実現するべきだ、という声が圧倒的でした。

スタッフ:議論に対して、非常に反響があったようです。来月の12月には、ロシアのモスクワでリージョナル会議があるそうですが、次に向けての抱負を教えてください。

工藤:今回は尖閣問題が1つの大きな問題でした。これに関しては、私たちはトラック1.5、トラック2の中で紛争が起こらないような議論づくりをしていく、ということを皆さんに伝えました。一方で、中国の外務大臣の楊潔?さんの弟さんである楊潔勉さんや、韓国のシンクタンクの人達とも話をしまして、何とかそういう議論づくりができないかということを提案しました。平和的な解決をしなければいけないという点では、中国も韓国も考えは一致しています。それをどうすれば実現できるのかということが、東アジアにおける非常に大きな課題になってきたと思います。

 もう1つの大きな問題はユーロ危機です。ユーロ危機の影響が中国に出てきているわけです。私は、この影響を過小評価するべきではないと思います。つまり、ユーロ危機というのは、金融の問題が実体経済に影響し、財政問題になってきた。ただ、その根源にはグローバリズムの中で金融がかなり膨張して、それが実体経済にかなりの影響を及ぼしていく、という構造があります。この問題について、次のG20の中で、マクロ的に、また金融の監督、監視などをどうやっていけばいいのか、ということが大きな関心事です。私もロシアの代表と話をしたのですが、これについてもグローバル20、世界的な枠組みが答えを出さなければいけない、という認識でした。私たちは民間側として、これに対して提案していかなければいけないということを話してきました。

 今回はアジアで開催し20カ国が参加したのですが、私がボードメンバーに入っている国際諮問会議(カウンシル・オブ・カウンシルズ=CoC)は、24カ国のシンクタンクがメンバーになっています。こういう民間レベルで国内外、また国際的な課題に関してきちんと議論するという舞台ができてきている、というのは非常に嬉しいことです。

 言論NPOは、この舞台を活用して、日本側の主張や世界のグローバル的な課題解決のために、本気の議論づくりをしていって、提案を続けていきたいと思っています。

スタッフ:本当にお疲れさまでした。ありがとうございました。