3月1日、言論NPOはウェブサイトを全面的にリニューアルしました。リニューアルの目的とは。新サイトでどんな議論が始まるのか。言論NPO監事の田中弥生氏の問いかけに対し、代表の工藤が意気込みを語ります。
聞き手:田中弥生氏 (言論NPO 監事)
田中: 工藤さん、こんにちは。3月1日から、言論NPOはウェブサイトを全面リニューアルしたということですが、その内容について詳しく聞かせていただけますか。
工藤: かなり時間がかかりましたが、ようやく今日リニューアルに漕ぎ着けることができました。言論NPOではウェブサイトを、強い民主主義をつくるための議論のプラットフォームに、大きく変えたいと思いました。そのために、今までやってきたことを全面的に見直して、いろいろな人たちが議論に参加し、自分たちで日本の政治や日本の将来を考え、判断できるような場をつくりたいと考えたのです。そして、双方向性がある一方で非常に知的な、市民社会の論壇をつくろうということで取り組んできました。
田中: 具体的にはどのような構成になりますか。
工藤: まず、言論NPOの活動を4つのカテゴリに分けました。ひとつ目は「政治に向かい合う言論」、2つ目は「世界とつながる言論」、3つ目は「市民を強くする言論」、そして4つ目が「次の日本をつくる言論」です。これらに共通するコンセプトは、市民や有権者が自分の判断で今の政治や日本の将来を考えるためのお手伝いをしたり、そのための参加型の議論が行われるようなかたちにしていきたいということです。
「政治に向かい合う言論」は、まさに言論NPOが行ってきたマニフェスト評価のことですが、ここでは評価の作業や結果、評価のプロセスに対するコメントなりを公表していきます。鳩山政権も発足後半年を迎え、今年の7月には参議院選挙も予定されていますが、先の選挙での民主党の約束がどう実現したのか、それから約束そのものが問題だということもあるので、それを見直しどのように変えていくのかなどに注目する必要があります。リニューアル後のサイトが今までと違うのは、マニフェストの進捗状況や、政策課題をどう考えるかということが、このサイトを見ればわかるようにしていくということ、それから皆さんに発言していただく場を設けていくということです。また、一般の方々向けのセミナーやフォーラムを行うことも予定していますので、それらと連動して議論が進んでいくようなサイトにしていきたいと考えています。
「次の日本をつくる言論」も、政策課題についての議論になりますが、ここでは評価とは違い、みんなで一緒に考えたことを提案していくということです。ここで私が考えているのは、3~4ヶ月間、チームで議論をして、その結論を何らかの提案にまで持っていくようなしくみができないかということです。例えば、財政再建や社会保障、医療の問題などが考えられますが、いろんな方に参加していただきたいと思っています。一般の方も議論に参加できるようにして、みんなで日本の将来のために考え、提案していこうというわけです。
この2つが政策に関する議論になりますが、それらと関連するのが「世界とつながる言論」です。日本の社会は世界とつながっています。中国が経済的に大きくなり、アメリカは苦境に陥っているという、世界が多極化しているこの状況下で、グローバル・イシューに私たち自身がどう取り組むのか、この「世界につながる言論」の中で、みんなでそれを考え議論を行うようなサイトにしたいと思っています。言論NPOが行ってきた「東京-北京フォーラム」といった対話のチャネルや、「アジア戦略会議」など、すでにいろんなチームがありますので、そこを母体にしながら、世界やアジアについてオープンな議論を行っていけるようにつくり変えていきたいと思います。
最後に、今回のリニューアルで最も力を入れたのが「市民を強くする言論」です。これまで、私たちは政治や政策に向かい合う議論をしてきましたが、その中で痛烈に感じたのは、政治というものをただ客観的に見るのではなく、実際に参加して、当事者として何かをつくっていかなければいけない。もしくは様々な社会のサービスに関わって、課題解決の担い手になっていくという、大きくダイナミックな市民側の動きがないと日本は変わらないと思いました。そのために田中先生をはじめ色々な方々に協力をしていただく中で、私が思ったのことは、「強い市民社会をつくるためには、市民が強くならなければいけない」ということです。言論NPOは今、市民を強くするための様々な議論を企画しています。非営利セクターについては、今までのやり方のままでいいのかとか、何でも行政にお任せするようなかたちで本当にいいのだろうかとか、もっと自分たちで考える議論の舞台が必要なのです。また、日本の社会の中にいる、キラリと光る数多くの人たちと対話をし、議論に参加してもらおうと考えています。こういったことを通じて、市民社会が強くなるような循環をつくりだせるようなサイトにしていきたいと思います。このサイトは私だけでは成り立ちませんので、学者さんたちを中心とした「編集会議」を発足させました。この編集委員たちがナビゲートをし、議論をつくっていきます。これらを通じて、言論NPOのウェブサイトの中に、強い市民、強い民主主義のためのプラットフォームをつくります。また、言論NPOの活動そのものも、そういうかたちにしていきたいと思います。
田中: 今まで行ってきたことを柱としながらより双方向的に、市民側に立って、言論NPOの活動を行っていく、という意思が強く表れていますね。
工藤: そうですね。そうしていかないと日本は変らないと思っています。しかも今年は参議院選挙もあります。そのときは評価も含めて、政策どう考えるかという判断材料をみなさんに提供していきますが、それだけではなく、このサイトの中で何らかの動きをつくっていきたいと思います。この3月、4月でいろんな挑戦をしていきますので、ぜひ期待していただきたいと思います。
田中: 政権交代が起きたときから、自分たちももっと政治に対してものを言いたいとか、社会に貢献したいという人は増えていますので、今回のリニューアルは絶好のタイミンングだと思います。
工藤: これはある意味では「市民の論壇」ですので、いろんな方々に参加してほしいと思います。ただ、私たちは議論のクオリティを追求していきます。そしていい議論はどんどん紹介したいのです。このウェブサイトだけではなく、メールマガジンやブックレット、フォーラムなど様々な仕組みと合わせて、皆さんに参加の機会を提供し、強い言論をつくっていきたいと思います。
田中: 今後の展開を楽しみにしています。ありがとうございました。
ウェブサイトを全面リニューアルしました 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO 監事) |