大きく動き始めた「民間外交」の舞台 |
キャンベラの戦争記念館で改めて感じた「戦争」という現実
工藤:言論NPOの工藤です。今、私はキャンベラにいます。今日(2月26日)、全ての日程が終わって、これから東京に帰ります。CoCの会議が終わって、キャンベラに来て、オーストラリア政府の機関やシンクタンクの人たちなど30人を超す人たちと、東アジアの安全保障上の問題など、私たち言論NPOがやっていることを説明しながら議論することができました。その中で、皆さんから「ぜひ戦争記念館に行くべきだ」と言われましたので、戦争記念館を訪れまして速足で見てきました。
日本軍がこのオーストラリアで戦っているという現実、そして、オーストラリアの捕虜がいろいろな形で殺されたという現実がこの記念館では説明されていました。オーストラリアの視点から、あの第二次世界大戦が何だったのか、ということを考えさせられ、改めて歴史というものをきちんと考えていかなければいけないと感じました。しかも、毎日のように式典が行われているようでした。その式典に、多くの人たちが訪ずれ、戦争に対して思いを寄せ、みんなで戦争について考えていました。こういった施設が戦争という現実を風化させずに、今後、戦争を起こさないという決意を改めるためにも、重要な施設なのだと感じました。
「民間外交」が果たす役割は「政府間外交」の土台づくり
今回、政府間外交が機能しない中で、民間に何ができるのだろうか。マルチラテラルの様々な対話がそうすれば可能なのか、ということを議論しました。オーストラリアにも日本や中国の研究者も多く問題意識も強い人たちばかりで、自分たち民間がどのような形で参加できるのか、ということを思案しているようでした。今後、言論NPOでも、オーストラリアの人たちも含めながらいろいろな対話が可能だと思います。特に、今年の4月にはオーストラリアのアボット首相が訪日しますし、安倍さんもオーストラリアに行くという計画があるようですから、今年、オーストラリアと日本の関係は、アジアや太平洋にとって大きな役割を担うのだということを感じました。
一方で、皆さんにお会いした際に、昨年の安倍さんの靖国神社への参拝について、個人の思いは別にして、東アジアが危険な状況なのに、なぜその解決に向けた動きに水を差すような動きを首相がとるのか、どうしたら安倍さんのそういった行動を変えることができるのか、ということを必ず聞かれました。私たちは、日本において中国との関係や韓国を含めて、東アジアの平和的な環境を強く願っていますし、そのための対話を行おうと思っています。しかし、世界から集まったシンクタンクの人たちからは、東アジアにおいて日本が平和的な貢献の担い手として信頼受けているどころか、まだまだ疑問を持たれているという印象を持ちました。これに関しては、多くの人たちにしっかりと説明をすることが必要ですし、日本が、東アジアの平和構築に向けて積極的に動いている、ということを行動によって示さなければいけないのだ、ということを痛感しました。私たちの民間対話が、まさに政府間外交の環境づくりのために、今年、非常に大きな役割を果たさなければいけないな、ということを実感した次第です。
豪州から中国へ
私たちの旅は、やっと半分終わりました。これから飛行機で成田に向かい、東京での用事を済ませた後、北京に向かいます。北京では、今年開催予定の「第10回 東京-北京フォーラム」の対話づくりをどのように進めていけばいいのか、ということの協議に入ります。
また、既に皆さんにもご案内していますが、3月に5カ国の人たちを呼んで、民間がアジアの中で何ができるのかといという対話を行います。その後、日韓間での対話を行い、夏には中国との対話を行います。いよいよ、私たちが行っている「民間外交」の一つの大きな局面を迎える時が来たな、ということを実感しました。
以上、オーストラリアから工藤の報告でした。