未来志向の対話に向けてのヒントが得られた旅 |
私は今、ベルリンの空港にいて、これから東京に戻るところです。この1か月あまり、私たちはインド、インドネシア、北京、ドイツを訪れました。この旅の目的は、戦後70年そして日韓国交正常化50年を迎える今年に、民間同士の対話を通じてどのような新しいメッセージを世界に発信するのかについて、たくさんの人たちと議論をし、糸口を探ることでした。初めて訪れるドイツでは、ナチス主導による戦争やベルリンの壁崩壊の経験を持つこの国が、歴史に対して真剣に向き合い続けていることを痛感しました。この歴史の反省の下に、ドイツの新しい国づくり、世界に対する姿勢、そしてデモクラシーに対するこだわりがあることを痛感しました。
私はこのドイツで、日独センターの講演会を始めとして、政府関係者、財団関係者、エコノミスト、研究者、ジャーナリストなど多くの人たちと議論しました。その議論を通じて、2つのことを痛感しました。
ヨーロッパでは日本の歴史認識について疑問と誤解が広がる
1つは、北東アジア地域についての日本の歴史認識に関して、ヨーロッパの人たちの間で多くの疑問が広がっていることです。今回行った講演は満席状態で、質問や意見が活発に寄せられました。そのほとんどが日本の歴史認識の問題でしたが、誤解もたくさんありました。ただその誤解が生じているのは、例えば日中韓の間の政府の宣伝戦で、日本が負けているという小さなレベルでの話ではなく、日本で巻き起こる様々な発言や行動がメディアを通じて世界に想像以上に広がっており、海外の多くの人たちがそれを知ったからこそでした。ある人からは「政府の人が説明したところでそれは政府の宣伝に過ぎないからこそ、民間の人たちと活発な対話をしたい」という声がありました。対話を通じて、多くの人たちが持つ誤解を解消したりしましたが、それを踏まえた上で未来についてのアドバイスをいただいたりもしました。
ドイツでも関心を集める日中、日韓における民間外交の取り組み
もう1つは、ドイツが経済的な視点から関心を持つ中国と、その隣国である日本が緊張感ある対立を続けている現状に深い関心を寄せていました。さらにいうと、政府間外交ではなく民間外交に対してどう取り組んでいるのかに関心を持っていました。言論NPOが行ってきた10年に渡る日中間の対話と「不戦の誓い」、日韓の対話などを通じて、北東アジアに平和的な秩序を民間レベルで作ろうとしている活動について説明したところ、大きな反響がありました。若い世代から「言論NPOのインターンとして参加したい」、「ヨーロッパに支部を作りたいので継続的な対話ができないか」などという声が上がり、民間レベルの動きに参加したいと思っている人がいることがわかりました。ここでの議論を通じて、日本が今後行うべき対話のあり方についてヒントを得られた気がしています。
舞台は東京へ、戦後70年に向けた議論づくり
この1か月を通じて行われてきた様々な人たちとの対話はこれで終わり、舞台は東京に戻ります。これから東京で戦後70年に向けた議論づくりを行うことになりますが、平和的かつ未来志向のメッセージを民間から世界に発信してきたいと思っています。今回の旅では、そのための対話作りの手ごたえを感じました。これからの私たちの活動にご注目ください。