工藤:言論NPO代表の工藤泰志です。今、私はホテルオークラ東京にいます。
私たちは明日6月21日、「第3回日韓未来対話」という民間の対話を開催します。その翌日の22日は、日韓国交正常化50周年に当たります。日韓間の国民感情が非常に厳しい状況にある中、その記念すべき日の前日に、私たちはまさに民間レベルで、両国が抱える今の課題に真正面からぶつかりながら、両国の未来について議論しようと考えているわけです。
多くの両国民が、「なぜ日韓関係が重要なのか」という答えを見失っている
現在、両国政府は、「首脳会談再開」をベースとして外交交渉を行っています。私が、外務省の幹部の方から話を聞いたところによると、今日の段階ではまだまだ非常に厳しい議論が行われている状況である、ということでした。ただ、それでも明日、日韓外相会談が行われます。そうした状況の中で、私たちは民間レベルでの対話を行うわけです。
私たちが今回の対話でやるべきこと、それは「未来」を語ることです。なぜ、未来を語らなければならないのか。なぜなら、日韓両国がどのような自国の将来像を描いているのか、そして、そうした将来像を目指す展開の中で、日韓関係がなぜ重要になるのか、ということに対する答えを、多くの両国民が見失っている。私たちはそんな気がしているからです。
「過去」だけでなく、「未来」について語り合うことが今、求められている
私たちが先日発表した「第3回日韓共同世論調査」の中でも、そうした傾向が見えていました。両国の中で、相手国に対する国民感情が非常に厳しい中、この状況を何とか改善したい、という声が8割近くありました。しかし、改善したいという気持ちが強い一方で、お互いの相手国に対する認識は非常に厳しいものがあります。日本の中には、「韓国は民主主義の国ではないのではないか」という声が強まり、韓国の中では、「日本は軍国主義の国である」との見方や、「両国の間で軍事衝突が起こるのではないか」という声も増えています。
こうした議論が出てくる背景には、もちろん、歴史認識という「過去」をめぐる問題もあるのですが、一方で「未来」に関する対話をしてこなかった、ということも一因としてあります。将来、自分たちの国をどうしたいと考えているのか、そして、その展開の中で日韓関係はどういう役割を果たすのか、ということに関して、私たちはこれまで語り合ってこなかった。それで、日韓関係の今日的な意味について、私たちは明確な答えを見失っているわけです。
国民レベルでの議論や、課題解決に向けた機運の高まりが不可欠
明日、私たちの対話は、13時30分から国連大学で行われます。その議論の全ては、インターネットで中継されることになっています。私たちが議論を中継するその理由は、多くの両国民に、現在私たちが抱えている日韓関係の課題に対して真剣に向かい合ってほしい、そして、そうした議論や課題解決に向けた動きが高まっていくことで、両国の関係改善、さらには、アジアの未来に向けての大きな展開が始まる、と思っているからです。
今日、韓国から14人、日本側から15人、今回の対話に参加する有識者を招き、先程まで前夜祭となる晩餐会を行っていました。そこでも白熱した議論が行われました。その中で、両国民の中に、相手国に対する危険な認識の食い違いが広まっている、という大きな問題が指摘されました。そして、過去の問題に対しても真剣に向き合うが、それだけではなく未来のこともきちんと考えなければならないのではないか、という声が日韓双方から出てきました。明日、まさに本番の議論が始まります。是非、皆さんにこの議論を見ていただきたいと思います。そして、私たちは、その議論を通じて、得られた結論や、課題解決に向けたひとつの方向性について、また皆さんにご報告したいと考えています。
日韓未来対話が、北東アジアにおける平和的な環境をつくるための第一歩
私たちは、今年の1月から、北東アジアにおいて、「平和と民主主義」をどう具体化するか、ということに関する議論を進めてきました。特に、今回の韓国との対話、そして10月には中国と対話を行いますが、その中で考えているのは、「北東アジアにいかにして平和的な環境をつくり出すか」ということです。明日行われる日韓未来対話は、その重要な第一歩でもあります。ぜひ、多くの方にご覧いただければと思っています。
ということで、ホテルオークラ東京から、工藤が前日報告をさせていただきました。