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■■■■■言論NPOメールマガジン
■■■■■号外
■■■■■2002/09/27
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●INDEX
■ 緊急座談会 『日銀の決断をマーケットはどう見たか』
市場関係者 A(大手都市銀行)、B(外国証券)、C(大手証券)
■ 緊急発言──日本経済の現状は危機段階にある──
●小林陽太郎 『日本は危機に入ったことを、総理は認めるべき』
●宮内義彦 『手遅れ手術には本当の名医の腕が必要』
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■ 緊急座談会 『日銀の決断をマーケットはどう見たか』
市場関係者 A(大手都市銀行)、B(外国証券)、C(大手証券)
司会 工藤泰志・言論NPO代表
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日銀は9月18日に世界でも例のない株の買い取りをするという禁じ手まで踏み込みま
した。今の日本経済が危機である事を日銀がまず認め、足並みの揃わない政府に危機
を防ぐための対策を迫るためでした。
そこで、言論NPOでは日銀の決断に伴うマーケットの状況を理解していただくため
に、市場関係者3氏の座談会を緊急に行ないました。本音ベースでの議論を公開する
ために覆面という形をとりましたが、そこでの認識はいずれも一致しており、日本経
済はすでに経済有事、つまり危機の段階に入ったこと、その対応で政府が公的資金の
導入の決断ができなければ、10月中にも株価の下落を通じて危機が表面化するという
ものでした。以下、座談会を公開します。
工藤 ここ数日のアメリカや日本の株価の下落を見ると、日本経済はすでに有事の段
階に入ったということが分かります。9月18日の日銀の決断、その対応をマー
ケットはどう見ていたのでしょうか。
A 経済やマーケットが厳しいという状況自体は日銀も当然、他のところよりも
思っていたと思う。8月の記者会見のときに、日銀総裁は4年半やってきたけれ
ど明日どうなるかわからない、こんな不安状況は、今が一番厳しいというよう
なニュアンスで話していた。日銀総裁というトップとしての心境を聞かれて答
えていたのですが、そうした厳しさを言いながら一方ではまだ自分には、もう
少しやるべきことが残っていると、そんな風に受けとめられるような苦しさ、
心情を吐露していたと思う。最近、彼は割とストレートに心情がでることがあ
りますが、結構厳しく見ているというのが、私たちの受けとめかただった。
日銀はこれまでの政策としての限界を誰よりも熟知していたと思うし、量的緩
和というようなものはいんちきで全然効かない、だけどやらなければならない
というポーズは必要だと思っていたのだと思う。ただ、今までの行きがかり上
それは言えなかった。自分たちは量的緩和をしてきたから、自分たちのやって
きたことが嘘っぱちとは言えないし、絶対効かないとも言い切れない。ある意
味では何かがそれをきっかけに変わって、株価が上がったりするとか、何らか
の歯止めになるかもしれないという期待も持って量的緩和をしてきたのだと思
う。ただ、さすがにみんな、その辺の限界を知る人が多くなってきたので、そ
の意味では、何がしかの根本策を打ち出さなければならないというような状況
に追い込まれていた。日銀総裁も任期が迫ってきているし、その意味では何が
しかの画期的なことをやらなければ、これは大変だと思っていたのではない
か。そういう中でアメリカの先行き不透明感が強まって、外頼みというのがで
きなくなったしまった。いよいよ本番ということになった。しかも日本の株価
の下落で資本が欠損するという銀行が出てくるのが、見えてきた。日銀が今
回、踏み切った背景にはそうした経緯があったのだと思う。
●日銀が非常事態を認めた背景
工藤 つまり、日本経済が異常事態、非常事態になったということを日銀は認めざる
を得なかったということですね。
A もともと日本は非常事態ではあったが、適当な策がない中で非常事態と宣言す
るのはいかがなものか、という思いだったのではないか。
工藤 僕たちから見ていると、日本の政策当局はみんなばらばらで、この構図は3月
の経済危機の状態から何も変わっていないわけです。3月危機は、空売り規制
や銀行へ特別検査などで当座をしのいだわけですが、このままでは済まないと
誰もが思っていたわけです。ペイオフも延期するという話が決まり、政策は後
退したような状況が見えてきた。もう国の政策へのクレディビリティ(信認)
も日本はほとんど失い始めたときに、今回の日銀の株式買取という決断が出ま
した。おそらくその過程では、海外からも国内の財務省からも相当なプレッ
シャーが来ていたと思いますが。
B プレッシャーについて言えば、日銀は今年の2月の時点から公的資金を入れるべ
きだと言っていた。ところが、株が落ちだした夏からはむしろ言わなくなっ
た。日銀は公的資金の話を言わなくなったな、というときに聞こえてきたの
は、公的資金を入れるだけでは、問題は解決しないので、そのことは言わない
でおこう、という話だった。そうして日銀が最後に後押しされたのは、7月の
グリーンスパンのアメリカの議会証言のときだったと私は思う。そのときに
は、そんなところではなく、企業スキャンダルについてストック・オプション
もちゃんと経費に入れなさい、と企業を叩いたり大変だったが、注目されたの
は、日本に対して具体的に言及して、円を買う理由がないと言ったこと。デフ
レ、不良債権、巨額の政府債務を抱えているとかいくつかの理由を掲げて、こ
んな円は買う理由がないと言ったわけです。そして、日本はもっとお金を経済
に回さなくてはいけない、しかし、それが回らないような構造的な問題をいく
つも日本は抱えている、とグリーンスパンはそこで言っている。この発言は大
きいな、と私は思いました。それが7月です。ハンフリー・ホーキンス法に基
づく議会証言で、年に2回の議会に対しての正式な報告の場で日本を滅多打ち
にしたわけですから、それを聞いていて、やっぱりこの後は日銀の問題がくる
な、と私は思っていたのです。
工藤 日銀の問題とは?
B グリーンスパンが議会で、日本の金融でお金が回っていないのはだめだ、不良
債権や倒産がいっぱいあると、そこまで報告している。アメリカでは議会がす
ぐ動き、企業統治の話が法案になるくらいですから、当然、日本にもプレッ
シャーが来るというのは予想できました。
ところが、日本のマスメディアはそれを見ていないのです。成長率と失業率の
ところだけ一面に載せて、日銀の問題は書いていないのです。あの時点でドル
円が115円に迫っていました。これ以上、ドルが落ちたらいけない、というと
ころでグリーンスパンの「円を買う理由がない」と言う発言があったわけで
す。
8月に入って、日本では株がやっぱり1万円割れていき、ふらふらしていまし
た。しかし、市場からもマスメディアからも何かの策を出せ、という話がまっ
たく出てこなかった。どうも聞いてみるとあきらめているようだ。あきらめ、
というのは、問題はわかっていて、やることは決まっているのにやらない、や
ろうとしない政府や官僚と、結局は変化を求めない国民というもの、これに対
してみんな白けていたのです。
私はこの時に、個人的に何をやりたいのか言ってみなさいと聞いてみたのです
が、ものすごい数の「こうするべき」という意見が来るぐらいの状態でした。
みんな決断すべき政策はわかっているのになぜ出さないのか?と言う感じだっ
たわけです。
こうした状況下で小泉さんが9月12日にアメリカに行ったわけです。2月は
ブッシュが日本に来るときに向かって株が落ちていった、今回は小泉さんがア
メリカに行くのに合わせて多分、日本の株が下がっていくのだろう、とマー
ケットは予測したわけです。どういう政策にコミットするのだろうと思ってい
たら、不良債権の処理の加速で相当コミットしたというのがわかった。
アメリカでは、小泉さんはブッシュ大統領と会っても不良債権の処理の加速の
話をし、外交評議会でのコメントは、米系インベストメント・バンクと共同し
て不良債権を処理してきた、かつ今後はそれを一層加速させるとまで言ったわ
けです。アメリカにもビジネスチャンスを与えながら不良債権を処理してきま
した。今後はもっとビジネスを与えながら処理をしていきますと言ったので
す。
A RCCとウォール街の金融機関という言葉を小泉さんは使って、ウォール街の金
融機関の協力を得ている旨の発言をしていますから、そういう意味では安心し
てくださいということもあると思います。
工藤 小泉総理とブッシュ大統領との会談の時に、ブッシュ大統領から経済対策を
巡って、書簡をいただいたという話もあります。
B その前、8月20日くらいから日本にはアメリカの特使が来ていまして、ペー
パーを渡されたのはそのときだという認識です。そのときの答えを持ってアメ
リカに来た、というふうにマーケットは思っているわけです。小泉首相はその
ときの答えを持って講演をした、と私は思っていました。
A 国内でも日銀が決断した18日の5日前には、黒田財務官が講演で、長期国債
や短期国債の日銀の積極的な購入を迫り、場合によっては日銀の独立性維持の
放棄にまで言及していた。
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■ 緊急発言──日本経済の現状は危機段階にある──
●小林陽太郎 (経済同友会代表幹事、富士ゼロックス代表取締役会長)
『日本は危機に入ったことを、総理は認めるべき』
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●宮内義彦 (オリックス代表取締役兼会長兼CEO)
『手遅れ手術には本当の名医の腕が必要』
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