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■■■■■言論NPOメールマガジン
■■■■■号外
■■■■■2002/11/02
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●INDEX
■ プレスリリース 毎日新聞 2002年10月27日(日)
『21世紀の視点 当事者意識とミクロの視点──「言論NPO」1年の挑戦』
工藤泰志・言論NPO代表
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■ プレスリリース 毎日新聞 2002年10月27日(日)
『21世紀の視点 当事者意識とミクロの視点──「言論NPO」1年の挑戦』
工藤泰志・言論NPO代表
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「言論NPO」というNPOを立ち上げてから、1年が経とうとしている。私が、議論を
個人の参加によるNPOで行おうと考えたのは、多くのメディアの議論が傍観者的な批
判のための議論に終始していると思えたからだ。それまでメディアの一員だった私自
身の反省でもあるが、当事者意識を持った、建設的な議論の舞台が、必要と考えた。
それを大半はボランティアの小さなNPOで挑戦しようと思ったのである。
この1年間、私たちの議論形式は試行錯誤の連続だった。ちょうど、小泉政権の誕生
後に発足した私たちは、この改革を1人の政治家に任せるのではなく自らの問題とし
て向かい合おうと呼びかけた。経済の本格的な手術を行うためには、それを進める政
治の強力なリーダーシップは当然必要だが、この閉塞状況を打ち破るには、どうして
も我々の覚悟とミクロの挑戦が不可欠だからだ。
私たちは、会員参加型のインターネットと雑誌を組み合わせ、可能な限り関係者にヒ
アリングを重ね、対立点や見解を公表し、それに基づいて論点が建設的に積みあがる
ように議論を行ってきた。論点はこの1年間、経済対策の問題から政治と官僚、企業
の経営ガバナンスの問題と進み、政策当事者も含めて多くの方に参加していただい
た。だが、痛感したのは発言者が限られ,なかなか議論の輪が広がらないことだ。
議論がより活発にならないのは議論の判断材料を十分に提供できず、発言者を開拓で
きない、我々の努力不足もある。だが、依然、多くの人は評論家的にしか、今の事態
を捉えていないからではないか、と私には思える。当事者意識を持つということは、
政府の政策に評論家のように感想を言い合うことではない。いわばリスクを負わない
観劇が今なお、続いているのである。こうした論調は痛みが始まれば、政府を批判
し、政治の舞台での対立だけを面白おかしく論じる。それを加速させているのが、一
部メディアの姿勢だと思う。
こうした議論が成り立つのは、メディア関係者もそれを楽しむ人たちも本質的には
困っていないからに違いない。日本は他国と比べても表向きは豊かであり、無責任に
将来の世代につけを飛ばせば少しはしのげる。しかし、そうした豊かさを支えてきた
経済が壊れ、新しいシステム転換と負の遺産の調整が避けられないのに、それが表
立って見えないのは、ゼロ金利やペイオフの延期など、国民の実質負担で経済が保護
されていることを忘れてはならない。
問題はそうした統制経済の維持は困難なだけではなく、深刻な歪みをもたらしている
ことだ。経済の中核をなすマーケットは死滅寸前に縮小し、リスク回避が定着してい
る。我々の運動に参加するある経済人は「敗者と弱者は違う」というが、その全てを
救済する仕組みは全般的なモラルハザードをもたらし、挑戦意欲自体を失わせてきた
のである。
私は安易なマクロ依存、政府頼みの発想は捨てるべきだと思っている。デフレ下での
構造改革の痛みは大きく、それに向かってマクロ政策の協調や弱者の保護は必要だ
が、患者が病気を自ら治そうと覚悟を固めない限り、病気は治らないからだ。
この一年間、私はさまざまなNPOや企業の設立を苦労しながら行ってきた人たちを数
多く見てきた。リスクを取ろうとする民間側の動きはすでに始まっているのである。
マスコミには危機を煽るだけではなく、そうした挑戦を適正に評価し、出口に向かっ
ての判断材料を提供する義務があると私には思える。
小泉内閣は軸足を揃え、不良債権処理とその裏側にある企業の再生に向け、手術を断
行することを決めた。マスコミの一部の論調はかなり批判的だが、今の日本にはこの
方向しか残されていないのである。
恐らく経済の建て直しはそう簡単に終わるわけではない。むしろ、今回の手術は日本
の将来選択につながる一連の改革の始まりだと考える。これからの議論が日本の将来
を決定づけるとしたら、決して批判のみの傍観者ではいられないはずである。
(毎日新聞 2002年10月27日(日)より転載)
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