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■■■■■言論NPOメールマガジン
■■■■■Vol.7
■■■■■2002/11/07
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言論NPOは、日本の政策課題について本物の責任ある議論を、ウェブ、雑誌、フォー
ラム等で展開しています。人任せの議論では決して日本の将来は切り開けないからで
す。政策当事者や財界人らが繰り広げる、白熱の議論の一部を皆さんに公開します。
https://www.genron-npo.net
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●INDEX
■ 特別対談 『日本の改革の障害と可能性 最終回』
ドナルド・P・ケナック (AIGカンパニーズ日本・韓国地域社長兼CEO)
マーク・ノーボン (日本ゼネラル・エレクトリック 代表取締役社長)
司会:イェスパー・コール (メリルリンチ日本証券チーフエコノミスト)
─TOPIX─
■ 11月05日「第5回アジア戦略会議」報告を掲載
■ 10月21日「第4回アジア戦略会議」報告を掲載
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■ 特別対談 『日本の改革の障害と可能性 最終回』
ドナルド・P・ケナック (AIGカンパニーズ日本・韓国地域社長兼CEO)
マーク・ノーボン (日本ゼネラル・エレクトリック 代表取締役社長)
司会:イェスパー・コール (メリルリンチ日本証券チーフエコノミスト)
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日本の変革は進んではいるが、その歩みは依然遅く、新しい変化、成長は大きな動き
となっていない。小泉首相は経済で政府が占める役割を削減することに焦点を当てて
いるが、民間で収益に向かって努力する企業が増えない限り、新しい成長は望めな
い。日本で成長を続ける外資の経営者は、日本で始まっている改革の可能性や障害を
どう考えているのか。日本GEのマーク・ノーボン社長とAIG日本社長のドン・ケナッ
ク氏の2氏が言論NPOの議論に参加した。
コール 1つ話を戻して、コーポレート・ガバナンスについて少し話しませんか。私
たちは基本的に欧米流の企業文化の中で職務を行っています。株主民主主義
について語る場合、私たちは話の内容についてかなりよく理解しています。
しかし、恐らくご存知だとは思いますが、日本語ではこの言葉は基本的に
2、3年前まで存在していませんでした。フォーチュン500社に選ばれるよう
な企業の日本子会社の経営者として、株主価値、あるいは株主民主主義の重
要な要素を2、3挙げるとすれば、どのような側面だとお考えですか。つま
り、株主民主主義は単に「株価を上げよう」ということではなく「企業が
チェック・アンド・バランスの利いた透明で効率的な意思決定プロセスを有
していることを確かめるために、コーポレート・ガバナンスのメカニズムを
どのように構築するか。」ということです。日本では株主民主主義はアメリ
カ型資本主義と同義であり、つまりエンロンのような「カウボーイ資本主
義」あるいは「悪徳資本家」を意味します。ですが、そのようなものはもち
ろん株主資本主義ではありません。お二方にとって、株主資本主義を機能さ
せる重要な要素を2つ3つ挙げるとすれば何でしょうか。
ケナック 経営者は最終的に富の創出という結果に説明責任を負っています。言い方
を変えましょうか。スチュワードシップ(受託責任)についてお話ししま
しょう。私たちに与えられた資金は私のおカネでもなければ経営者の金でも
ありません。私たちは自分自身の仕事を守るためにここにいるのではないの
です。私たちの仕事は何かを作り出すことで、投資家に委託された資金で、
事業を始めます。私たちには共に働く経営者と従業員がいます。私たちの仕
事は富の創出です。これは責任を持って富を創出することであり、従業員を
大事にすることであり、法を守る市民であることです。業務遂行にあたって
遵守しなければならない規則はあります。しかし、結局のところ、100円を
105円に、さらには110円にしなければなりません。私にとって、これは株
主民主主義の根本的な前提です。経営陣は富を創出する責務を負うのです。
株主民主主義の原則は、富の創出プロセスを促進、支援する規則をつくるに
あたって基礎となるものです。従って、第1の原則は投資家が正しい判断を
行えるように、企業が報告する情報の透明性と正確性を保つことです。経営
者は収益と利益の向上を達成するための計画、目標および戦略を定めなけれ
ばなりません。じっと座って心配するだけではなく、前進し、富を創出する
必要があり、人々の資金を利用する場合にはそれなりのリターンを付けて返
さなければなりません。私が富の創出を重視する理由は、結局誰が会社を所
有しているかという点に尽きます。結局、株式は年金基金に所有されてお
り、労働者は退職後その年金基金に依存します。あるいは、株式は保険会社
に所有されていて、人々は保険を購入し、保険の配当は株式が生み出す富に
依存しています。結局、国の富は企業部門が創出した富に依存するのです。
政府は富を創出することができず、企業部門は富を創出しなければならな
い。私たちはその責任を負わなければならないのです。
これは株主民主主義についての話です。株主民主主義とは、経済が健全であ
るために企業がなすべきことをなすようにするための手段です。企業がより
多くの富を創出できなければ、政府支出をまかなうための税金や人々が退職
後に豊かな退職生活を送るための資金を、あるいは医療のための資金をどう
やって調達するのでしょうか。株主民主主義をカウボーイ資本主義や悪徳資
本家、あるいは社会的良心なく企業を経営する人々と同列に置くのは極論だ
という点には同感です。私たちは社会的良心を持たなければなりませんが、
富を創出し、健全な社会を維持できるかどうかは私たち次第であり、それが
株主民主主義なのです。
ノーボン イニシアティブとリーダーシップは経営者と取締役会がとらなければなり
ません。彼らには責任があり、説明責任を負わなければなりません。成果が
株主の望むもの、経営者が株主に約束したものに満たなければ、彼らは説明
責任を負います。株主に対する説明責任だけでなく富の創出も彼らの義務で
あり、それは従業員にとっても最も良いことです。「利益ばかりを重視して、
従業員のことを考えていない」と言われることがあります。企業に収益力が
なく破産してしまえば、従業員は路頭に迷い、経営者はより多くの人材を雇
用することができないし、彼らによりよい生活、よりよい報酬、明るい未来
や安定した退職後の生活を与えることができなくなります。株主と従業員は
両立するのです。収益性は株主にとっても従業員にとっても重要です。株主
と従業員は敵同士ではないと私は考えています。
ケナック 東京スタイルに関する最近の日経新聞の記事をお読みになりましたか。こ
こにその記事がありますが、次のように書いてあります。「株主が村上氏の
提案を支持していれば、同様の要求を行う投資ファンドの誕生につながった
可能性がある。そのような動きは日本の資本市場と企業経営を大きく変えた
かもしれない」。
コール 東京スタイルの件に触れていただき幸いです。この記事はみずほグループに
ついての議論とは対照的です。みずほは事態が悪化した悪い例であるのに対
して、東京スタイルの経営陣に村上さんが及ぼした効果と圧力は前向きで、
事故が起きる前に企業を実際に改革しようとする創造的な試みであると言え
るでしょう。しかし、日本の典型的な流儀ではみずほ型の議論が主流です。
日本は前向きな変革やイニシアティブよりも、失敗を好んでいるかのようで
すね。
ケナック 東京スタイルの話は外国人の影響を受けていないことがミソですね。外国
人投資家も日本人投資家もいますが、東京スタイルは日本企業であり、村上
氏は元通産省の官僚です。これは日本が変わりつつある、また、変化は内部
から起こり得ることの証拠ではないでしょうか。
コール 確かに。ですが、当面の変化は微々たるものであり、富の浪費は依然として
膨大なものです。
ケナック 使われていない資産が多く存在しており、その一部は動きつつあります。
ノーボン 企業の資産を調達し、これを生産のために使用し、より多くの資産、富を
創出するのは経営者の仕事です。これは企業の責任でもあります。
工藤 ここまで様々な話題に触れられましたね。その1つがみずほの混乱であり、
この混乱の原因がシステム統合とコーポレート・ガバナンスの問題であると
いうことでした。コーポレート・ガバナンスの観点から、他にコメントはあ
りますか。
ノーボン 私はみずほの問題がコーポレート・ガバナンスの問題であるとは思いませ
ん。システム統合には多くの人間が関わっており、何らかの監督の欠如が
あったはずです。
ケナック この特定の事例でのコーポレート・ガバナンスについてコメントする気は
ありませんが、別のことを指摘しておきたいと思います。大きいことは良い
ことだと考えるのは危険なことだと思います。多くの合併がさかんに行われ
ており、企業の合併はより良い強力な企業を作ると信じられているようで
す。そういう場合もありますが、それは合併後に経営陣がとる行動次第で
す。合併は明らかに新たな問題と課題をもたらすものであり、私たちが考え
なければならないのは、本当に大きくなれば良くなっているかということで
す。そういった課題が克服されなければ、大きくなることはさらなる混乱を
もたらし、行動速度を低下させ、戦略の明確な合意を妨げ、業績の足を引っ
張るということになりかねません。
特定の会社に対するコメントを意図しているのではありません。これは世界
のどの国のどこにでも当てはまることです。しかし、日本における最近の傾
向は合併の一点張りであるように思われます。特に金融分野でこの傾向は著
しい。日本ではなく外国での合併の歴史を調べてみれば、一部分は機能して
いるが、大部分は合併前に期待したほどうまく機能していない事が分かりま
す。合併には、経営者による多大な努力と合併後の企業を元の2社よりも成
功させようとする大奮闘が必要です。これは必ずしも不可能ではありません
が、それほど簡単なことでもありません。
コール 2番目のフォローアップ質問は、大変大きな問題で、金融ビッグバンです。
金融ビッグバンは97年に発表され、全てが公式には昨年完了しました。ご自
身の経験に基づいて、その評価はどのようなものであり、金融ビッグバンを
実質的に完了させるために今なお残されている課題は何であるか、お聞かせ
いただけますか。
ノーボン まず、97年以来多くの変革が行われ、基本的には規制緩和と総合的な金融
市場改革に向けた着実な動きがあります。
コール もっと直接的に質問をさせていただきましょう。2002年のこの時点で日本
の金融サービス分野で、御社がやろうと思っても法的規制のためにできない
ことはありますか。
ノーボン ありません。私たちの事業で、実務的な理由から日本でできる主要な金融
サービス事業は、全て行っています。その観点から言えば、環境は非常に良
好です。事業の遂行や商品展開を容易にするような改革はありますが、全体的
に見て、法的環境および規制環境は良好です。
ケナック AIGではなく在日米商工会議所の会頭の立場から答えると、全般的には
望ましい進展がありましたが、まだ改善を必要とする分野がいくつかありま
す。特に、非課税の株式交換ができません。国内企業同士では可能ですが、
クロスボーダーではできないのです。課税の観点からうまくいかないのです
が、株式取得を自由、公正、グローバルなものとするために規制の変更また
は法律改正を行って解決する必要があります。「自由、公正、グローバル」
というのは金融ビッグバンの標語だったはずです。ただ、このような特定の
2、3の問題を除いては金融ビッグバンによって大きなインパクトがあったこ
とに疑問の余地はないでしょう。
証券会社、銀行、保険会社の分野を問わず、提供できる商品の数を考えてみ
てください。金融ビッグバンは商品の導入スピードを大幅に向上させ、その
販売ははるかに自由になりました。現在では、個人販売だけではなく、電子
メディアや他の形態の直接販売が存在します。外貨の交換や通貨取引は完全
に自由化されていますし、預金の全額保護も廃止されました。間違いなく、
金融ビッグバンは非常に重要な政策であり、日本の金融市場のグローバル化
に貢献しました。今日私たちがインタビューを受けているという事実は、私
たちが日本の金融業界で主要な参加者になっているという事実を表すもので
す。このこと自体、金融ビッグバンが変化をもたらしたことの証拠ではない
でしょうか。
ノーボン 多くの点で、金融ビッグバンは日本の強さを証明しており、日本が自信を
持って前進するために何ができるかを証明しています。これはカルロス・
ゴーン氏が日産で実行した改革に似ています。彼はビジョンを作り上げ、全
社的にこのビジョンを達成するための新たなプログラムを導入しました。作
り上げられた真の価値は、同社の人的資源を再結集したことです。これを達
成すれば、あらゆることを行うことができます。もちろん、全てのことを成
し遂げることはできなくても、前に進めることはできます。具体的な目標に
基づくしっかりした計画が示されることは、労働者、中間管理職、納入業
者、株主および市場の自信につながります。
コール 金融ビッグバンと株主民主主義は車の両輪です。私が言いたいのは、株主民
主主義の下では、経営者はビジョン、具体的で透明性のある計画を作ること
が要求されるという点です。経営者は測定可能な指標と達成可能な目標を
もってビジョンを実証し、実行スケジュールを示し、従業員から経営者まで
社内の全員が一丸となってそのビジョンを目指さなければなりません。です
が、すべての出発点として経営陣は責任を引き受け、リーダーシップを担う
必要があります。これは金融ビッグバンの思想と同じものです。金融ビッグ
バンの思想には「自由、公正、グローバル」だけではなく、「自己責任」も
含まれます。預金者および富や資本の所有者は、政府の白紙の保証や行政の
指導に依存するのではなく、自らの資産に責任を負わなければなりません。
もちろん、資金の流れを強制することはできませんが、全ての企業は資金を
預けてもらえるよう懸命に努力しなければなりません。私は個人的に、金融
ビッグバンは偉大で重要なビジョンであると思います。金融ビッグバンのプ
ラスの効果はまだ、現れていませんが、これは産業界のリーダーが将来の成
長と富の創出のための資金に充てるために貯蓄や資本を提供してもらえるよ
う懸命に努力するのではなく、いまだに何らかの政府の救済を期待している
からでしょう。この点で、東京スタイルはみずほグループのコンピューター
問題よりも、日本の金融民主主義の現状に関する重要な指標となり得ます。
金融ビッグバンは完了し、株主民主主義は足取りは遅いが確実に始まってい
ます。
それでは、貴重なお時間を割いていただき、洞察に富む議論を提供していた
だいたことに感謝申し上げます。
(この座談会は2002年5月30日に行われました。)
●上記の記事はウェブサイトにも掲載されております。
https://www.genron-npo.net/jp/summary/frameset/0207_c_3.html
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─TOPIX─
■ 11月05日 「第5回アジア戦略会議」報告を掲載
今回は、「アジア全体の安全保障問題~日米関係を踏まえて」というテーマで、ゲス
トスピーカーに秋山昌廣氏(元防衛事務次官・財団法人シップ・アンド・オーシャン
財団会長)と河野克俊氏(防衛庁海上幕僚監部防衛課長)を迎えてお話をうかがい、
活発な質疑応答を展開しました。
https://www.genron-npo.net/jp/summary/frameset/021105_c_01.html
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■ 10月21日 「第4回アジア戦略会議」報告を掲載
今回は、深川由起子氏(青山学院大学助教授)が日韓自由貿易協定(FTA)構想とそ
の実現に向けての課題を中心にお話くださった後、安斎隆氏(アイワイバンク銀行社
長)に日韓経済関係について豊富なご経験をふまえたお話をいただき、活発な議論が
展開されました。
https://www.genron-npo.net/jp/summary/frameset/021021_c_01.html
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