【vol.15】 大竹美喜 インタビュー『今をチャンスと思わないほうがどうかしている 第1回』

2003年2月04日

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●INDEX
■ 大竹美喜インタビュー『今をチャンスと思わないほうがどうかしている』

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■ インタビュー『今をチャンスと思わないほうがどうかしている 第1回』
  大竹美喜 (アメリカンファミリー生命保険会社最高顧問)
                       聞き手 工藤泰志・言論NPO代表

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今年、私たちは何に「挑戦」すべきなのでしょうか。今回はアメリカンファミリー生
命保険の大竹美喜元最高顧問に登場していただきます。大竹さんは28年前、35歳の
ときにアメリカンファミリーを立ち上げ、日本有数の保険会社を作り上げました。そ
の時の経験を踏まえ、大竹さんは「今をチャンスと思わないほうがどうかしている」
と語っています。


■ 今をチャンスと思わないほうがどうかしている


工藤 今の日本経済の停滞に民間側の経営者の変革期における挑戦力、やる気のなさ
   を指摘する見方が結構あります。実際、多くの企業が経営の建て直しに時間が
   かかり過ぎており、国が産業再生に乗り出すという段階になっています。また
   新しい企業が生れてくるような動きも停滞しています。新年、日本は正念場を
   迎える中で民間側が元気を出さなくては、日本経済は出口に向かえないと思う
   のですが、大竹さんはどう見ていますか。

大竹 例えば、「フォーチュン」という雑誌がありますが、ここで優良企業の最高責
   任者が解雇される理由は何かを、特集したことがあります。つまり、業績を上
   げても解雇されるのはなぜか、ということですが、その理由は「変革をしな
   かった」ということでした。つまり、変化に対応していない、絶えず変化の先
   取りをしなさいということです。そうしなければ、今いいからといっても、来
   年、再来年の保証はないわけです。それくらい、変化が今は激しい。歩みの遅
   いドッグイヤーじゃなくて、インセクトイヤー。それぐらい世界の動きは早い
   わけです。そうすると、変化を先取り出来る企業でなければ生き残れない。と
   ころが、多くの日本の経営は変化に対応できていない。それが今の状況を招い
   ていると思います。むしろ鈍感で、今の状況を維持するので精一杯という状況
   ではないでしょうか。

工藤 なぜ変化に鈍感なんでしょうか。

大竹 それは、まだ日本の経営は横並びだからです。経営の仕組み自体に欧米型の経
   営システムと比べて制度疲労があります。これは政治の仕組みもそうですが、
   意思決定が即断できる仕組みになっていない。結局これは、ひとつは稟議制度
   とか共同責任とか、責任の所在が曖昧だということも大きいと思います。アメ
   リカの場合は、それぞれ担当役員が担当の責任を全部背負わなければいけな
   い、そういう制度になっているんですね。欧米では実際の担当者に予算も人事
   も権限委譲がなされ、その責任を問わなくてはならなくなっている。業務執行
   は執行役員が全部担い、社長が全体の責任を取る形になっています。ところ
   が、日本の場合は、組織の形の上では一応出来ているかも知れないが、実際に
   は責任を誰が取るかということになると、責任のなすり合いをするわけです。
   結局、誰の責任だか分からないと曖昧になっている。

   しかも経営側に変化を見抜く力、目利きの能力が著しくかけている。一例をあ
   げれば、半導体メーカーでは、インテルが独り勝ちになったわけですが、その
   時に今、東北大学の客員教授になった方が、自分の技術を売り込んだときに日
   本のメーカーは見向きもしなかったという事情があります。これは島津製作所
   の田中さんと一緒で、日本という国は技術などを評価する能力や仕組みすらな
   い。だから、海外で評価されて驚いてしまうということが絶えずあります。企
   業もそうなのです。だから、チャンスを逃してビジネスがなかなか生れないの
   です。ベンチャーも同じで、税制や融資制度も含め、ベンチャーを起こす人々
   にとって快適な環境を作ってあげないといけない。つまり、ビジネスのシーズ
   (種)とニーズ(需要)が一体となって、そこでどんどん成長出来るような市
   場を作ってあげないとならない。それも遅れています。

工藤 ただ、そうした仕組みやインフラの前に個人がやる気を出さないと、チャンス
   をモノにできないのではないですか。

大竹 そうです。私は「足し算の人生をしなさい」と言っているのですが、自分を見
   つめて、「俺はなんてダメなんだ」という消極思考であれば、本当にダメに
   なってしまう。ところが、「私は、こんなことが出来る、これ以上のことが出
   来るんだ」という積極的な思考、足し算の人生を歩んでいる人は、どんどんど
   んどん新しいベンチャーを興すんですね。80年代までは、「大きいものは強い
   んだ」という時代でしたから、そういう努力をしなくてもよかったのですが、
   今は、大きいとか歴史があるとかは関係ないわけです。全部崩れていくんです
   から。これを大きなチャンスと思えるかだと思います。安定してる時はなかな
   か成功できませんが、今はいろんなことに挑戦できるし、そのシーズはいたる
   ところにある。それを見抜けるかです。

   例えば、医療問題でも、日本評価学会が国際比較をやっているのですが、日本
   は欧米先進国に比べていかにサービスのレベルが低いかということです。その
   隙間とかレベルの低いものとの間にはギャップがあります。そのギャップにこ
   そ、凄いニュービジネスが生まれるシーズが眠っていると思います。そこを穴
   埋めするだけで、経済再生に役立ち、雇用創出につながっていくと思います。


                          ──次号へつづく──

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