【vol.22】 榊原英資 論文『構造デフレ下での経済政策とは何か 第4回』

2003年4月01日

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■■■■■言論NPOメールマガジン
■■■■■Vol.22
■■■■■2003/04/01
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●INDEX
■ 榊原英資 論文『構造デフレ下での経済政策とは何か 第4回』

●TOPIX
■3/28 「第4回会員フォーラムのお知らせ」
■3/28 プレスリリース:ファイナンス「ファイナンスライブラリー」
■3/27 プレスリリース:笹川平和財団ニューズレター「言論NPO」の目指すもの
■3/25 「活動支援者著書紹介」を追加

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■ 榊原英資 論文『構造デフレ下での経済政策とは何か 第4回』
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現在のデフレが金融的で現象であり、また需要不足に基づくものという議論に榊原英
資慶応大学教授は真っ向から異を唱える。榊原氏はそれをグローバリゼーションの中
で世界的に進行している構造的な現象とし、世界経済は構造デフレの時代へと大転換
しており、政策目標は激しいデフレの阻止に置かれると主張する。その視点にたっ
て、同氏はデフレ下での不良債権処理は一種の徳政令であり、国が企業再生ファンド
を組成するなどの提案を行い、産業や業界の再生の視点から取り組むべきだと語る。

●50兆~60兆円の規模で公的資金は必要

銀行の自己資本については税効果が問題になったが、日本ではこれまで有税償却が行
われてきたのであり、銀行のアカウンティングで変えるべきところがないわけではな
いとしても、日本のシステムは無税償却が行われてきたアメリカとは異なっている。
それを理解せずに税効果だけをアメリカ型にして、銀行に無理やり公的資金を投入す
るというのでは、完全なルール違反ということになる。無税償却に変更して、一定の
経過期間を設けてアメリカ型のシステムにするのであれば別であるが、これは主税局
としては認められないだろう。全体として、主税局も入れて議論しなければならない
問題であり、金融庁だけで扱える問題ではない。

もう1つは、優先株の普通株への転換という問題があるが、確かに資本注入は当初か
ら普通株で行うべきだったかもしれない。ダイエーの処理においては、優先株を優先
的に毀損させ、まさに貸し出しと同じように扱ったが、優先株というのは普通株に優
先するからそう呼ぶのであり、私はそれは筋違いではないかと反対した。公的資金に
ついても、転換社債として注入しているのではなく、注入の仕方については、佐々波
委員会(金融危機管理審査委員会)から間違いが始まったといえる。

日本ではやがてデフレは止まり、インフレになるという曖昧な発想をだれもが持って
きた。それは銀行の経営者に限らない。90年代は、その発想でずっとやってきたわけ
である。それが銀行経営をおかしくしてしまった。多くの企業の経営も、国の財政も
そうである。その基本にあるのは、デフレというのは需要不足であり、一時的に起
こっている現象であるという認識であり、それが構造的な問題だということを理解し
ていなかった。デフレを覚悟して、デフレと共存していかなければならない。緩やか
なデフレというのは決して悪いことではない。賃金も下がるが、物価が下がるのは消
費者にとっては良いことである。

そこで出てくるのは、デフレを覚悟し、その下で不良債権処理を進めなければならな
いとした場合の痛みの問題である。そこがまさに公的資金ということになる。追加の
公的資金は50兆円という話もある。私も、少なくとも50兆や60兆円のオーダーで入
れる必要があると考える。ただし、それは結果としてであり、前述のように、企業再
生ファンドを活用したスキームでは、政府保証債券を発行するが、個別の債権を処理
する過程で毀損する部分が出てくる。恐らく、かなりの部分はそれに対して公的資金
を入れるということになるだろう。

それに、銀行本体の資本不足に投入する部分との両方がある。50兆、60兆円くらい
のことをしなければ不良債権問題は解決しない。これは一種の徳政令である。銀行貸
し出しの分類は、金利が払われているものを一定のルールの下に第2分類に入れてお
り、これを現在、検討が進められているように、実際に将来のキャッシュフローの見
込みがないことをもって第3分類にするのであれば、膨大な資金が必要となる。


●政府紙幣の発行を提言する

デフレ下での不良債権処理に対するクッションとしてマクロ政策が議論されるのな
ら、痛みに対するクッションとしてマネーを提供することに徹すればいいと私は考え
る。公的資金の投入は、結局マネーで行うしかなく、私はかつて、それを1回限りの
政府紙幣でやれと提言した。

日銀が通貨を供給する場合は、国債を引き受けてマネーを出すことになるが、その場
合、国債は債務であるため、債務が増えてしまうことになる。政府紙幣については、
貨幣法を若干改正しなければならず、現在、政府は硬貨しか発行できないが、それを
紙幣まで発行できることにすればいい。明治時代には太政官札の例がある。政府が発
行する理由は、日銀にタダでカネを出させると中央銀行制度がおかしくなるからであ
る。これを日銀が出す形にするのであれば、代わりの資産を政府からもらわなければ
ならない。政府紙幣を発行して、その政府紙幣を日銀に渡して日銀券を出しても構わ
ない。日銀券と同じだということにして政府紙幣を流通させることも考えられる。

これはシニョリッジ、すなわち、通貨を発行できる者が持つ圧倒的な利益である。通
貨主権と言うが、それを利用すればいいという考え方だ。紙幣をタダであげる分には
債務は増えず、国債も増えない。借金ではないからだ。震災手形と同じことであり、
江戸時代で言えば貨幣の改鋳である。劇薬ではあるが、1回限りの劇薬であり、厳し
い不良債権処理をするなら、そのようなやり方が最も適切だ。

マクロ政策について、財政は無理としても、金融の量的緩和や円安誘導、その組み合
わせということも言われるが、それはクッション役にはならない。マクロ理論の枠内
であれこれ言うのではなく、もう少し発想を変えなければならない。

政府紙幣の発行についてはスティグリッツも指摘している。これだけの財政赤字では
どうしようもないという議論をしていた際に、日銀券を発行すればいいが、日銀は対
価なしには発行できない、それならば政府紙幣の発行だという話であった。


                          ──次号へつづく──

●上記の記事はウェブサイトにも掲載されています。
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●TOPIX

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■3/27 プレスリリース:笹川平和財団ニューズレター「言論NPO」の目指すもの
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■3/25 「活動支援者著書紹介」を追加
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