【vol.52】 塩崎恭久×林芳正×渡辺喜美『自民党若手議員は小泉改革をどう評価したか(4)』

2003年10月28日

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■■■■■言論NPOメールマガジン
■■■■■Vol.52
■■■■■2003/10/28
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●INDEX
■ 座談会 塩崎恭久×林芳正×渡辺喜美
  『自民党若手議員は小泉改革をどう評価したか 第4回』

■ 言論NPO ボランティア説明会のお知らせ


●TOPIX
■ 10/24 言論NPO 政策評価委員会
  「総選挙公示後のマニフェスト議論に問われる5つの争点」を提案
  「マニフェストおよび政策評価に関するアンケート調査」結果発表
  「第2回政策評価委員会」報告

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■ 座談会『自民党若手議員は小泉改革をどう評価したか 第4回』
  塩崎恭久(衆議院議員)、林芳正(参議院議員)、渡辺喜美(衆議院議員)
                       聞き手 工藤泰志・言論NPO代表
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次の総選挙の争点はどう描かれるのか。自民党の3人の政治家が今回の総裁選や小泉
改革を評価し、マニフェスト型政治を巡る議論に参加した。派閥政治についての見解
や日本の新しいガバナンスのあり方に加え、マニフェスト政治の実現に必要な条件
や、今後争点とすべき政策の柱について、3氏それぞれの主張をぶつけ合う。


●政策の優先順位についての決断を政治はできるのか

工藤 基本的に小泉改革は今のままで続くことは少しまずいという認識だということ
   が分かりました。私たちも小泉改革の政策評価をしているのですが、政策だけ
   で見ると厳しくなってしまう。一歩引いて、政策の決定プロセスに問題がある
   としても、その公約とも言える経済財政諮問会議の「骨太の方針」は経済的な
   達成目標や時期がほとんどずれてきているわけです。そして、次の展望が出て
   いないという状況もある。今の政策の優先順位を組みかえるという流れが、今
   の政権基盤や状況の中では期待できないような感じがします。「政策強化」と
   いう視点でもいいのですが、総選挙の小泉自民党のマニフェストをつくるとき
   に、これを変えるチャンスはあるのでしょうか。

塩崎 例えば、三位一体の改革も年金の問題も、色々なメニューが出つつはありま
   す。それらは部分的に顕微鏡的に見ると方向も極めて正しいし、インテンショ
   ン(意図)も正しい。そこで、全体のアクセントをどこにつけるのか。政策で
   すから、優先順位のところを変えることは理論的には不可能ではないと思いま
   す。金融再生や産業再生も方向としては進んでいますが、例えば産業再生機構
   は、大きな松林の全体が松くい虫などにやられて茶色くなりつつあるときに、
   立派な盆栽を1つつくって、「どうだ、きれいだろう」と言っているようなも
   の。そう言ってみたところで、松林を救うことにはならない。しかし、そこに
   盆栽をつくる点においては、松をきれいなものに仕立てることについてのエク
   スパティーズはあるわけです。そこの流れを変えてもらう。ただ、先にやるこ
   とではないものを先にやってしまっているところがあることと、例えば金融に
   せよ産業再生にせよ、やはり問題を先送りしてしまって、避けている。問題の
   中核に切り込んでいっていない。結局、これが、バブルが崩壊して今まで12~
   13年やってきたことなのです。竹中大臣になっても、金融でも同じことをやっ
   ている。ただ、一歩は前進しているわけで、そういうところをどう直していく
   のかということを演出し直せば、できないことはない。あとは小泉さんの肚ひ
   とつです。

工藤 そこのところをなぜ先送りしているかというと、コスト(負担)の問題をきち
   んと判断し、国民に説明していないことがあるのではないか。ロスシェアリン
   グ(損失分担)の問題です。金融で言えば、負担するのは預金者なのか国民な
   のか、銀行の株主となる。それに対する覚悟が決まっていない限り、政策はど
   れも中途半端になって、先送りとなる。将来世代での負担を考えると、国民の
   負担を最小限にすることにはならない。ここは総理が腹を固めなければならな
   い局面ではないでしょうか。

塩崎 金融再生にせよ産業再生にせよ、これは個別の銀行や借り手の問題をどう解決
   するのかという問題であり、従って、かなり専門的で技術的な対応が必要で
   す。ここのところをなぜ先送りしているのかが、結局、一番大きなテーマで
   す。「痛み」を伴う改革と言ったときの「痛み」を耐えるかどうかということ
   です。また、今の痛みを将来に送ったときに、最終的に総和としての痛み、つ
   まり国民に回ってくるツケとどちらが大きいのかということについての評価
   を、短期的な判断で先送りをしてしまっている。経営の世界でも今どき球団を
   売ろうかと言っている某流通業がありますが、これは典型的な例だと思います
   ね。最終的に、元気ではない経済を引っ張っていくことの国民的コストも考え
   なければならないのです。

工藤 この話は、まさに政治レベルの判断で、官僚では判断が無理。それについてど
   ういう戦略を伝え、国民にきちんと説明するかということが、集中再生の意味
   だったと思う。

渡辺 金融問題というのは、預金の切り捨てをしない限りは財政問題になる。従っ
   て、問題を一気に解決しようと思うなら、政府の役割が一時的に増大し、財政
   が一時的に拡張せざるを得ないのです。それを避けているがゆえに、まやか
   し、はぐらかしの論理になってしまう。今は危機ではないと常々総理がおっ
   しゃる背景には、まさにそういう財政当局の思惑が見え隠れしています。この
   先送りに対して、私のマニフェストの中には金融・産業再生委員会と平成復興
   銀行という構想を盛り込んでおりますが、到底、そういう大構想が採用される
   ような状況にはなっていないと思います。

林  これだけ大きな問題になると問われるのはトップの決断です。青木建設の倒産
   ときに、これは構造改革が進んでいる証だと言った総理が、その次のダイエー
   のときにはツー・ビッグ・ツー・フェール(大きすぎて潰せない)と言う。そ
   のようなことでは、金融を担当している人は何をすればいいのか分らなくなっ
   てしまう。その頃に塩崎、渡辺両氏は官邸に行って、今の案をお持ち込みに
   なったのではないかと思いますが、それに近いものが、今度、竹中金融担当大
   臣になって出てきた。ただ、そのときの党内は反対の方が強く、なかなか難航
   しました。最後は総理が、例えば岸さんが安保をやったときのようなところま
   での覚悟でやる話だと思います。それは本人に強い理解力と信念がなければ、
   なかなか決断できない。

塩崎 小泉さんができるかできないかは、林さんが言われたように、チームによるの
   だと思います。あのときダイエーについて、誰が小泉さんをしてあのように言
   わしめたのかということを考えてみると、恐らく本来あるべきチームではない
   チームがそれを言ったのだろうと思いますね。そこは、まさに政権の生きるか
   死ぬかがかかっているような、政策評価としては極めて重要な問題だったわけ
   です。そのときに国益のため、あるいは長期的な国民のコストとして、どちら
   が本当に日本のためになるのかということを、きちんと政治責任をとる覚悟で
   政策を決め、トップリーダーに説得をするというチームがなかったのだろうと
   思います。

   経済財政諮問会議の民間議員は非常勤の人たちで、週に3日来る人が日本の針
   路を決められるわけはないので、それは毎日いる役人の皆さんの方が強い。役
   人は、いい悪いの問題以前に、過去との連続性が極めて大事だという世界共通
   の判断基準を持っているわけです。方向転換というのはまさに政治決断です
   が、たった1人の総理が政治決断をするということはあり得ない。例えば、大
   統領制なら明らかに補佐官がたくさんいて、なおかつアメリカのCEA(大統領
   経済諮問委員会)は常勤の人が構成してアドバイスをするわけです。

   議会制民主主義の国においてこの二、三十年は、最終的に選挙で落選や政権交
   代という形で責任をとる政治家が政策を決めるために、役人は役人のベストの
   選択肢を出すために政治家のサイドに立てるチームをつくっていくという歴史
   だったのです。その仕組みがない中で今のようなことが起こってしまってい
   る。役人の悪口を言ってもしようがないので、やはり政治家がそのようなベス
   トな政策を選べる仕組みをきちんと持つということです。最終的な判断は小泉
   さんでできないことはないと思いますが、残念ながら、周りに十分それをサ
   ポートするだけの人がチームとしていないのではないかというのが私の判断で
   す。


●政策決定プロセスの変革は正しい方向に進んでいるのか

工藤 これまでの議論は既にマニフェスト型政治というテーマに入っているのです
   が、小泉さんのもとで行われている政策決定プロセスの模索について、その限
   界はどこにあって、枠組みをどう変えなければならないのでしょうか。

渡辺 結局、小泉内閣においても、従来型の政治モデルは踏襲されています。つまり
   橋本派や反小泉陣営に加担した人達は徹底的にほされる一方、副大臣や大臣政
   務官という小泉総理がつきあいのないレベルの人達を選任する場合は、派閥均
   衡、年功序列の人事が歴然と行われている。年功を積んだ人から偉くなるとい
   うシステムは、まさしく30年かけて総理大臣をつくる永田町モデルと、30数
   年かけて役人のトップをつくる霞が関モデルのコインの裏と表の関係になって
   いるわけです。今、過去の経験が通用しない右肩下がりの経済に突入している
   にもかかわらず、経験を積んだ人たちが最終的な判断をしますから、平時モー
   ドの昔のやり方を踏襲し、その延長線で物事が決められている。だから、何を
   やってもうまくいかないわけです。今回安倍幹事長というスター選手を作った
   ことが、「派閥解体」と「世代交代」につながらなければ、元の木阿弥になっ
   てしまいます。

   チームをつくるというのは大変結構な話ですが、やはりこれは最終的にトップ
   の決断が必要になるわけでして、この内閣では私は問題解決が覚束ないのでは
   ないかという悲観論に傾いています。やはりトップリーダーというのは厳しい
   危機認識を持ち、その危機認識を国民と共有する、そういう説明能力がないと
   駄目なのです。国民の方に、「ああ、この人だったら、ある程度までお任せで
   いいか」という信頼関係があれば、コミュニケーションは極めて容易になる。
   しかし、残念ながら、そういう信頼関係は今はない。つまり、小泉さんの内閣
   は支持します。でも、小泉さんでは経済はよくなるわけはないと、みんなが考
   えている。このどこに信頼関係があるのでしょうか。要するに、小泉さん以外
   に誰もいないから、王様は裸だと言わないだけなのです。この不幸な状況は持
   続可能ではない。これは何らかの形で必ず破局が来ざるを得ない。私は、アメ
   リカが落ち込むときがそのポイントではないかと思っています。

林  私は、塩崎金融担当相と渡辺蔵相にでもなれば、随分明るい展望が見えてくる
   なと思いながらお聞きしていました。ある意味で竹中さんの評価とにもつなが
   るかもしれませんが、方向性としては、最初は非常にいい方向性でスタートし
   たにもかかわらず、竹中さんも「君、党内をそれでまとめてくれないか」と総
   理に言われてしまうんですね。それは普通の大臣ならばそうだと思います、自
   分の所掌ですから。しかし、あのような外から来た人でバッジもついていない
   人にそのようなことをお願いしてはいけないと思います。

   どこが一番のポイントで、どこは絶対に言ってはいけないという判断をトップ
   ができないと、なぜ党内の人がそんなに反対をしているのか、ではどこまでは
   譲っていいのかということはわからないのではないか。政策が間違っているか
   どうかは別として、責任は自分でとる、党内を押し切るといった方がわかりや
   すいと思います。そのようなことにはあまりご関心がなく、外向けにプレス
   リー風のアクションをやることの方が、総理本人がどうかはわかりませんが、
   ご関心が強いと見受けられます。それが非常に売れている。選挙ですから、売
   れている以上、普通は看板スターというのは変えないので、それはしようがな
   いことかなと思います。総裁選もそのような結果になり、その結果を受けて総
   選挙もそういうことになれば、それは民主主義における1つの選択です。

   しかし、今、渡辺さんが言われたように、小泉さんでいいが、小泉さんの政策
   が嫌だという世論がある限りは、我々が別のことをやるということが、本当の
   民主主義の中でできるのか、するべきなのかという議論になってしまう。た
   だ、我々は国会議員ですから、世論を自分が正しいと思う方向に説得するとい
   うことをしなければならないと思います。

   ある意味で、このような状況は小選挙区とテレビの組み合わせがその背景にあ
   るようにも思えます。これは非常に大きな問題ですが、では、ロックをやめろ
   と言うわけにいかないので、エレキもあるが、本当に音楽をやる人というのも
   我々は提供するし、見る側にもそれをきちんと評価してもらうということを積
   み重ねていかなければならない。

   ただ、それをしている時間の余裕がないので、結論は塩崎金融担当相、渡辺蔵
   相にお願いするということですね。(笑)


                          ──次号へつづく──

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■ 言論NPO ボランティア説明会のお知らせ

言論NPOでは皆様に私共の活動をよりご理解いただきご協力をお願いするために、
ボランティア活動を希望する方を対象に説明会を予定しております。興味のある方
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 1) 下記の「ボランティア登録ページ」にて必要事項を記入する
https://www.genron-npo.net/x_form/volunteer_form.php

 2) 「ボランティア登録ページ」最後の欄
   『■ 言論NPOへのご意見等ございましたらお書きください。』に
   下記のいずれかの日時を記入する。
   
 3) 登録完了後、事務局から登録確認のメールが送信されます。

 ■日時:11月4日(火) 18:30-20:00
     11月5日(水) 18:30-20:00

 ■場所:日本財団 第8会議室
     東京都港区赤坂1-2-2 日本財団ビル 2階
http://www.nippon-foundation.or.jp/org/profile/address.html

 ■担当・日原


皆様のご参加をお待ち申し上げております。

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●TOPIX

■ 10/24 言論NPO 政策評価委員会
  「総選挙公示後のマニフェスト議論に問われる5つの争点」を提案
https://www.genron-npo.net/forum/policy/031024_01.html

  「マニフェストおよび政策評価に関するアンケート調査」結果発表
https://www.genron-npo.net/forum/policy/031024_03.html

  「第2回政策評価委員会」報告
https://www.genron-npo.net/forum/policy/031024_04.html


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