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■■■■■言論NPOメールマガジン
■■■■■Vol.61
■■■■■2003/12/30
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●INDEX
■ 論点「新年も緊張感ある議論を展開します」言論NPO代表・工藤泰志
■ 2003/12/25 毎日新聞「実行過程あいまい」
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■ 論点「新年も緊張感ある議論を展開します」言論NPO代表・工藤泰志
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私たちはこの一年間、政策論争に緊張感を取り戻すこと。さらには日本の将来を巡る
議論を展開しようと考えてきた。マニフェスト評価はその一つの事業である。年末の
政府予算を見て小泉政権の公約実現への準備不足と改革の実行能力に疑念も強まった
が、こうした議論のプレッシャーが新しい政治の可能性を切り開くものだと私は思っ
ている。
言論NPOは、「言論」の力を取り戻そうと様々な議論の展開を行ってきた。私たちが
行ったマニフェスト評価事業は、政治の公約実行の責任の重さを取り戻す作業だっ
た。この選挙を通じて政治と有権者との緊張関係を生み出した背景には、多くのメ
ディアの努力もある。私たちは「マニフェストと報道のあり方」で報道関係者と選挙
後、意見交換を行ったが、メディア側の公約で示された政策を掘り下げ、争点を明確
にしようとした努力がなかったら、マニフェスト選挙がここまで意味を持つものにな
らなかったろう。
https://www.genron-npo.net/debate/contents/031222_c_01.html
その意味で、「言論」側は一定の役割を果した。ただ、それはまだまだ不十分であ
り、先の選挙自体がマニフェスト型政治の実現に向けてのほんの一歩に過ぎなかった
ことは、選挙後のいくつかの小泉政権の決定を見れば、明らかである。
年末の政府予算やイラクの自衛隊派遣などを見ると、マニフェストではその大部分が
曖昧なままで、約束した公約は先送りされたり、実質的に約束を破られ、本来選挙で
問われるべきその決定に国民はほとんど参加もできなかったからである。その結果、
年金の抜本改革は先送りされ、現役世代だけの負担は強まり、道路公団の民営化は実
質的に失敗し、初めからの出来レースのように道路を造るスキームに戻って決着し
た。三位一体改革は1兆円の削減に踏み込んだが、地方の自主性をどう確立するか道
筋がまだ見えない。
しかも重大な公約の変更がありながら、政府側からの公約の実行に対する声も全く聞
こえてこない。小泉改革の先行きに重大な疑念があるのはそのためである。
だが、厳しく言えばこうした状況は私たち有権者が選択した結果とも言える。年金改
革のように抜本改革だけを約束し、その内容を公開できなかった党を再び第一党に選
び、結果的にその政権を信任したからである。その争点化を十分にできなかった「言
論」側にも責任は当然ある。
私たちは今回、いい加減な政権公約を許すことは、私たちの生活や将来を判断する
チャンスを失うことを学んだ。
だが、こうした無責任な政治の選択は繰り返すわけにはいくまい。マニフェストは数
値基準や時限など形式が整えば十分なわけではない。日本では少子高齢化が進み、右
肩上がりを前提にしたさまざまな制度が継続不能な状況になっている。年金や道路も
三位一体もそうした従来型のシステムの転換を伴うからこそ改革の重要課題である。
その現状をどう国民に説明し、それを克服するのか、理念やビジョンを示すべきであ
る。政策課題はそれとの整合性が問われ、その上でその実行プランが公約となるので
ある。それがマニフェストの質であり、こうした課題をこれから検討するというので
は、改革政権というだけでなく、国民に信を問える政党とはいえないはずである。
次の選挙ではその曖昧さを許さない姿勢で私たちも評価作業をする予定である。
さらにマニフェストの実行プロセスが確立していない点も問題である。自民、公明の
政策合意の内容も抽象的なうえ、経済財政諮問会議は形骸化している。結局、与党内
の調整に委ねる旧来型の政策決定が繰り返された。こうした全ての政府の行動は小泉
改革の限界を感じさせている。それとも公明党の躍進など選挙結果からの修正の結果
なのか。いずれにしても私たちはより厳しい監視を行っていこうと考えている。
新年、私たちはこうした政策の評価作業に加え、日本の将来像とそれを実現するため
の選択肢提起のためさまざまな議論を準備している。
04年、私たちの議論に皆さんの参加をお待ちしています。
●上記の記事はウェブサイトにも掲載されています。
https://www.genron-npo.net/debate/contents/031226_o_01.html
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■ 2003/12/25 毎日新聞「実行過程あいまい」工藤泰志・言論NPO代表の話
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04年度予算政府案を自民党のマニフェスト(政権公約)に照らすと、年金改革は抜本
改革されず完全な公約違反。三位一体改革は1兆円削減は評価するが、地方の自主性
を確立する道筋が見えない。道路公団改革は民主化の実質断念であり道路を造るス
キームに戻った。
マニフェスト自体があいまいだった。少子高齢化が進み、右上がりの成長を前提にし
た制度が続けられない現状をどう認識し、克服するかビジョンが示されなかった。こ
の結果、説明が不十分なまま国民負担を強める誌不安になった。
マニフェストの実行過程が確立していない点も問題だ。自民、公明の政策合意が抽象
的で。経済財政諮問会議は形がい化している。結局、与党調整にゆだねる旧来型の政
策決定が繰り返された。
国民は今回、マニフェストにないことが無責任に決められることを学習した。次の選
挙では、政党は統合性あるビジョンと実行過程を示すべきだ。有権者も厳しく点検
し、あいまいな党には投票すべきでない。
工藤泰志・言論NPO代表の話
●上記の記事はウェブサイトにも掲載されています。
https://www.genron-npo.net/about/press/031225_mainichi.html
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