【vol.69】 「第一次 小泉内閣の政策評価書・総論(2)」

2004年2月24日

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■■■■■言論NPOメールマガジン
■■■■■Vol.69
■■■■■2004/02/24
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●INDEX
■ 3月17日(火)言論NPO 第3回アジア・シンポジウムのご案内
■ 「第一次 小泉内閣の政策評価書・総論 第2回」


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■ 3月17日(火)言論NPO 第3回アジア・シンポジウム
           「日本の将来を切り開く――2025年の日本の将来設計」
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言論NPOは、昨年のシンポジウムで、日本の改革を進めるため日本を本当の意味で世
界に開くための「新開国宣言」を発し、第一回目の議論を行いました。二年目の事業
として、日本の将来選択に向けた議論を進めてきました。将来の日本の可能性を冷静
に検討しながら、私たちが望む国づくりへの選択肢を提起したいと考えたのです。

今回のシンポジウムは、「2025年の日本」に向けた作業の中間段階(ステップ1及び
2)の議論を公表し、内外の有識者に3つのテーマ(次頁)で議論を行っていただき、そ
れを公開することを目的にしております。


 日時:3月17日(火)午後12時半~6時
 場所:経団連会館 14階 経団連ホール(東京都千代田区大手町1-9-4)
 定員:300人
 入場無料
 申込締切:3/10(水)


○お申し込み、プログラムなど詳細は下記まで
https://www.genron-npo.net/about/history/040316_sympoanno.html

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■ 「第一次 小泉内閣の政策評価書・総論 第2回」 言論NPO政策評価委員会
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本年7月には参議員選挙が予定されています。言論NPOでは第二次小泉政権の評価作
業を3月頃から開始する予定です。それに先立ち、昨年10月、総選挙前に行った「第
一次 小泉内閣の政策評価・総論」を改めて公表します。我々はそこで、ぎりぎりの及
第点をつけましたが、マニフェスト選挙により誕生した第二次 小泉政権に対しては、
より厳しい視点で評価する必要があると考えます。みなさんのご意見を、ぜひお聞か
せ下さい。


●小泉構造改革の成果――動態的評価

小泉改革が目指す理念や方向性は、日本経済がバブル崩壊後の後遺症と少子・高齢社
会の急速な進行など大きな環境変化に晒される中で、資源配分を「官から民へ」、
「国から地方へ」と大胆に変革することを通じて、日本経済の潜在的な成長力を高め
ようというものであり、基本的に妥当性を有すると思われる。戦後の歴代内閣と比べ
た場合、小泉内閣の最大の功績は、国民の目線で政策を行うことをベースに大胆な変
革を志向し、自民党中心・官僚主導の既存の仕組み、システムの破壊を試みた点にあ
る。

だが、与党と政府の政策のねじれ現象ともいうべきこの矛盾は実際の政策を具体化す
る過程では改革進展を阻む障害となって浮上したことも事実である。小泉首相は利益
誘導政治の主役を演じてきた「族議員」を「抵抗勢力」に仕立て上げることで改革に
対する国民の支持を取り付けることには成功したが、骨太の方針も総論から各論、具
体論に進むにつれて党内や各省庁の抵抗が強まり、諮問会議は当初期待された「傘の
頂点」という位置づけから後退し、省庁やそれらの既存の審議会との調整機関化の道
をたどったからである。

こうした障害を乗り越え改革をさらに進めるためには、首相の強いリーダーシップの
発揮や諮問会議の位置付けをどうするかが問われたが、実際の政策課題をクリアーす
る過程では、目標実現のための首相の指導力は必ずしも十分ではなく、また政策目標
や政策間の整合性、達成手段自体の曖昧さも加わって、初期の骨太の目標は十分達成
できたとは言い難い。

その中で、あえて評価できる点は、予算編成プロセスの変革である。これは、従来型
の自民党-財務省-各省庁という予算編成プロセスを経済財政諮問会議が予算編成の
司令塔となる形で、中期的な経済予測に基づいた中期的な経済財政計画(「改革と展
望」)を策定し、さらに同会議が策定した骨太方針、予算編成の基本方針に基づき毎
年の予算編成が行われるという新しい仕組みに変革するもので、利益誘導政治を排す
る上でその意義は大きいといえよう。道路公団改革などについても、改革は途上であ
り、後述の通り取り組み上の問題点はあるが、国民に利益誘導政治の実態をさらけ出
したことの意義は大きく、他分野においてもこうした地道な改革努力が続けられるこ
とが、国民の閉塞感の打破につながるものと期待される。

つまり、小泉政権が描いた理念、政策の基本方向は正しいと評価できても、それを実
現する政策のパッケージの提示と優先順位、首相のリーダーシップとその実行体制の
障害がその評価を低いものに止めている。動態的な評価軸を置いた評価の議論が作業
委員会で大きく分かれたのは、その障害を乗り越えるためにはある程度の時間が必要
との認識が一部の委員の中にあるからだ。また硬直化し制度化された政治や政策決定
プロセスを壊しながら政策を進めること自体、「岩盤に水を注いで穴をあける」よう
なものであり、これまでにない大胆な首相のリーダーシップを必要とするのも事実で
ある。だが、あくまでもプロセスの解体はそれ自体が目標ではなく、国民に約束し掲
げた政策を実現するための大きな手段といえるものである。この点で言えば、小泉構
造改革の象徴ともいえる道路公団改革や郵政民営化は、それに帰属する既得権益や政
治の構造を壊す突破口にはなったが、政策論から言えば不必要な高速道路の新規建設
をストップする、或いは資金の流れを「官から民へ」反転させるという本来の目的が
見失われ、「民営化」そのものが自己目的化している感が強い。

小泉内閣はある意味では既存の政党、官システムの枠内でその枠組みを壊すことに政
策課題の優先順位をつけた政権でもある。それが公約した政策の評価と乖離を生み出
すことにもなったが、それを改革の過度的な状況と見るのかで評価委員の意見は分か
れた。この二つの重層する課題で十分な評価をえるためには、より強い指導力や政策
への理解が首相や内閣全体に問われた。

既存の政権に対する外部評価はかなり厳しいものになりがちだが、私たちはこの二年
間半で進めた小泉改革の政策の枠組みが、まさにこれからが実行するという段階だと
いう状況を十分理解し、その実行に期待を込めながらも現段階では「方向性は正しい
が公約とその実行責任から見れば決して十分ではない」と評価せざるをえない。


                          ──次号へつづく──


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