【vol.73】 言論NPOアンケート結果報告「21世紀における世界の潮流と日本に問われるもの」

2004年3月23日

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■■■■■言論NPOメールマガジン
■■■■■Vol.73
■■■■■2004/03/23
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●INDEX
■ 言論NPOアンケート結果報告
  「21世紀における世界の潮流と日本に問われるもの」

■ ウィルスに関してのお知らせ


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■ 言論NPOアンケート結果報告
  「21世紀における世界の潮流と日本に問われるもの」
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言論NPOは、3月16日(火)に開催しました公開シンポジウム「日本のパワーアセスメ
ント──日本の将来設計に向けて」に向け、二つのアンケート調査を実施しました。
その一つ、21世紀の世界秩序や国際情勢、その中で日本に問われてくるものは何かに
ついて、多くの方々に意見を求めた本アンケートの結果を公開します。

以下は多数の意見をまとめたものです。詳しい結果はウェブサイトをご覧下さい。
https://www.genron-npo.net/forum/asia/040322_01.html

●1. 21世紀の国際秩序について 
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21世紀の世界においては、アメリカを中核とする構造は基本的に続くが、世界はより
多極化し、そのバランスの上に世界秩序が維持される傾向が強まる。

●2.「世界のアメリカ化」の潮流について 
──────────────────────────────────────
中産階級を主体とするアメリカ的な消費文明や生活様式で世界を「アメリカ化」する
潮流は、人口の動態変化や所得格差の拡大、あるいは世界各地での独自の価値観の自
覚による挑戦を受けるなど、21世紀において、その進展は阻まれることになる。

●3. 世界の中で相対的地位の向上が著しい国・地域
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20年後には、世界の勢力バランスは中国を中心とする東アジア地域に大きくシフトし
ており、EU地域やインドの台頭も著しいと予想される。

●4. イスラム世界について
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イスラムはアメリカの秩序に取り込まれることはないが、世界の不安定化要因であり
続けるとも考えにくい。イスラム世界への理解を深め、日本を含めた先進各国が国づ
くりなどの支援を進めていくことが、世界秩序の安定の上で極めて重要である。

●5. 2025年の東アジア地域 
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「アジア文明」という共通の基盤を持たず、多様性を特徴とする東アジア地域では、
経済的な統合の先に、現在のEUに見られるような共通の新たなアイデンティティーの
形成が20年後に進んでいるとは予想しがたい。可能性があるとすれば、むしろ、東ア
ジアの中国化の方であろう。

●6. 対中国戦略を考える視点
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グローバル経済に向けた大きな潮流の中で、日本は中国など東アジアの地域的な同盟
をどう考えるか、これと日米同盟との関係をどう位置付けていくのかが問われてい
る。特に、中国との信頼関係に基づいた交流や協力関係の拡大は重要課題である。

●7. 北朝鮮問題を考える視点
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北朝鮮問題を考えるに際して重要なのは、同問題を巡る日本国内での煽動的、感情的
な議論が日本の国際的信用を失墜させてはならないという冷静な視点であり、対応に
当たっては中国をいかに取り込んでいくかがポイントである。こうした基本認識の下
に、拉致問題の解決や、経済制裁による有効な「圧力」の構築に当たるべきである。

●8. 国連をどう考えるか 
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国連の常任理事国入りよりも日本にとって大切なのは、第二次大戦の戦勝国の組織で
ある国連を21世紀の組織に変える国連改革である。それは今後の国際社会の大きな課
題であり、日本がそこでどこまで主導権を握れるかが問われている。

●9. 日本の望ましい安全保障政策の路線について
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日米同盟路線の追求の是非の議論よりも重要なのは、日本がアジアでの安全保障の重
層的な仕組みの構築を主導できるかどうかである。そのためにはまず、自らが国際政
治の中で追求する目標や理念を明確化した上で、日本の安保・外交政策の体系の中に
軍事を明確に位置付けることが問われている。

●10. 日本の防衛力や憲法について
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冷戦後の国際情勢の変化を踏まえれば、安全保障面での国際協調に適切に貢献できた
めの防衛力の整備や運用、それを可能にする憲法の改正が、日本には問われている。
憲法を改正しないなら、現行憲法のなし崩し的解釈ではなく、日本ができることの限
度を明確にすべきである。

●11. 日本の外交路線
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軍事力や政治的なパワーを持たない日本が国際社会の中で「大国意識」を持つのは危
険であり、むしろ、既に民間や草の根レベルで世界に貢献している日本人のメリット
を発揮させる中で日本の存在感を自然に高めていく路線が望ましい。対米協調路線の
追求は、平和主義を唱える日本への期待の大きいアジア・イスラム諸国の期待を裏切
る懸念があることにも留意すべきである。

●12. 日本の国際経済戦略
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日本は、いずれかの国や地域と組むことを考えるよりも、むしろ、少子高齢化を始め
とする「課題先進国」として様々な先端的な知恵やピジネスモデル、システム設計を
生み出すチャンスに直面していることを戦略的に活かし、自ずと存在感を創り出して
いく路線を追求すべきである。

●13. トータルな視点で日本に問われるもの
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2025年の将来に向けてトータルな視点で日本に問われるのは、知的価値の創出に向
けた人的資本の育成と、戦後に形成された社会主義的なシステムをより競争的で資本
主義的なものに転換すべく構造改革を進めることであり、人材を始め外の活力を活か
せるよう、日本自らを真に開国することである。

●14. 日本のアイデンティティーについて
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2025年の将来に向けて、日本は自国の独自性に立脚した地に足のついたアイデン
ティティーを形成すべきである。世界の潮流と、自国の強さ弱さを評価した上で、現
実的に可能なアイデンティティーを描き、それと現実とのギャップを埋める選択肢を
戦略的に議論すべきである。その際、世界の人材を引き付ける「魅力的な日本の形
成」に向けてどのようなアイデンティティーを描くかを議論することが、戦略的に最
も重要である。

●詳しい結果はこちらをご覧下さい。
https://www.genron-npo.net/forum/asia/040322_01.html


●シンポジウムの報告はこちら。
https://www.genron-npo.net/about/history/040316_symoreport.html

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