【vol.84】「与党マニフェストと小泉政権に対する政策評価」アンケート結果報告

2004年6月08日

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■■■■■言論NPOメールマガジン
■■■■■Vol.84
■■■■■2004/06/08
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●INDEX
■ 言論NPO アンケート調査
  「与党マニフェストと小泉政権に対する政策評価」結果報告(ダイジェスト)


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■ 言論NPO アンケート調査
  「与党マニフェストと小泉政権に対する政策評価」結果報告(ダイジェスト)
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言論NPOでは、今年7月の参議院選に向けて政権与党のマニフェストの評価作業を
行っています。その中間的な評価結果については、5月12日の民間臨調の主催による
「マニフェスト検証大会」で公表し、インターネットでも公開したところです。
https://www.genron-npo.net/forum/policy/040512_01.html


こうした評価作業を進めるに当たって、私たちは、有識者の方々にもマニフェスト評
価にご参加いただきたいと考え、そのためのアンケート調査を2004/4/20~5/20実
施し、102の回答をいただきました。その結果を公表いたします。

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I. 総論
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●日本におけるマニフェスト政治の確立度合い [採点:35.3]

日本の政治風土の下では、マニフェスト政治は一過性のブームに過ぎない。少なくと
も現状は、マニフェスト・サイクル定着に向けた動きになっているとはいえない。

●自民党のマニフェストについての全体的なイメージはどうか [採点:28.1]

自民党マニフェストは、党内対立のある問題は避け、各省庁の既定路線を追認してい
るだけであるなど、政治主導的な決断を欠いた選挙対策向けのスローガンの羅列であ
り、国民に本質的な論点を提示するに至っていない。
 

●公明党のマニフェストについての全体的な見方はどうか [採点:23.4]

公明党マニフェストでは、本来自民党とは相容れない要素の強い同党が、どのような
共通理念の下に自民党と連立を組んでいるのかという最も肝心な点が読み取れない。
内容は確かに具体的で分かりやすいが、責任ある与党として問題を直視しておらず、
単なる選挙対策との批判は免れない。

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II. 自民党マニフェスト分野別評価
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●外交政策・日米同盟とイラク問題について [採点:51.6] 

日米同盟やイラク問題を巡る小泉政権の外交路線に対する基本的な反対論も根強い
が、有識者の多数は、自民党マニフェストが日米同盟を基軸にしつつも、国際平和協
力という「国際」安全保障の理念を打ち出してイラク問題に対応したことを評価して
いる。但し、その論理的な正当化や政策体系の提示が不足していることは今後の課題
である。

●外交政策・北朝鮮問題への対応 [採点:42.2]

専ら拉致問題の解決を強調する自民党マニフェストは、政策の優先順位付けや論理的
説明に失敗しており、リアリティーも欠いているが、政府が最大限の努力を払ってい
ることや、日本が日米関係の中から多くの国益を引き出しているという意味での外交
的成果など、評価できる面がある。

●安全保障政策に関するマニフェストの妥当性について [採点:36.4]

安全保障問題は、集団的自衛権など憲法問題を避けて論じることはできないにも関わ
らず、マニフェストでは、この国の基本路線をどうするかの議論は曖昧であり、憲法
草案づくりと言いながらその方向性は全く示していない。戦略的な改憲論議を提起
し、それに基づいて議論が進められるという形を早く実現すべきである。

●構造改革路線について(経済運営全体) [採点:37.2]

日本経済は未だ自立的な本格回復には至っていない。むしろ、現実に採られている政
策は構造改革に反し、金融危機対応型で管理的色彩を強め、社会主義的な経済へと後
退している。構造改革の先にあるのは二極化問題であり、格差拡大の中で活力ある経
済社会をどう描くかについての理念や日本全体のシステム設計の思想が描かれていな
い。こうした中で、為替介入による対米資金供給で景気や株価を持ち上げるマクロ政
策が、何の説明もなく行われている。小泉改革の手法についても、スローガンや
キャッチフレーズで流れだけは作るというやり方は限界に来ており、それを続ければ
国民の不信を強める懸念もある。

●財政分野・プライマリーバランスに関するマニフェストの妥当性について
 [採点:37.0]

財政のプライマリーバランスの達成目標については、その実現可能性の可否について
見方は分かれるとしても、重要なのは、それが実際に公的債務削減につながる道筋を
描くことであり、そのための国民負担を含めた手段の選択肢を政治として国民に問う
ことである。マニフェストがその点を曖昧にしている点は評価できない。

●「国から地方へ」について [採点:25.5]

国から地方への議論で本来求められているのは、分権という「形」の議論ではなく、
地方が真に自立的な再生を展望できる地域になるための機能的な本質論である。その
ためには、国と地方との適切な役割分担と相互依存関係を構築できる全体システムの
設計こそが重要である。現在の議論にはこうした基本理念が欠如している。

●不良債権処理と金融再生について [採点:32.3]

金融の現状は依然として危機管理の範囲内に過ぎず、現状は景気や株価に支えられて
いるだけであり、もう一段高いハードルを設定して不良債権への実質的な取組みを強
化すべきである。今問われているのは、日本経済の新たなシステム設計の中で金融機
能をどのような理念の下に位置付けるかという、全体的な金融の将来ビジョンの提示
である。

●地域金融の強化(リレーションシップバンキング)についてのマニフェストの
 妥当性について [採点:32.8]

地方の中小企業の再生と地域金融機関の強化の両者を目指したリレーションシップバ
ンキングは、目標設定が不明確かつ矛盾しており、これでは地域でのオーバーバンキ
ングの是正につながらないどころか、保護救済型行政を招きかねない。大切なのは、
地域社会の再生ビジョンの中に地域金融機能を位置付け、より広域の経済圏でのリス
クテイクにふさわしい強力な金融機関へと再編していく理念や見取り図を描くことで
ある。

●産業再生について [採点:33.7]

産業再生機構は、あくまで市場の呼び水役であり資本効率のメッセンジャーであっ
て、そこに大きな期待を抱くべきではなく、重要なのは、企業再生市場の拡大による
新陳代謝の自立的なサイクルが生まれることである。今求められているのは、高齢化
社会や地域再生といった今日的な文脈の下に産業再生を意味付ける大きな理念の提示
である。

●産業再生について [採点:33.7]

産業再生機構は、あくまで市場の呼び水役であり資本効率のメッセンジャーであっ
て、そこに大きな期待を抱くべきではなく、重要なのは、企業再生市場の拡大による
新陳代謝の自立的なサイクルが生まれることである。今求められているのは、高齢化
社会や地域再生といった今日的な文脈の下に産業再生を意味付ける大きな理念の提示
である。

●道路関係四公団改革について [採点:25.9]

道路関係四公団改革のスキームを見ると、民営化後の姿は企業ガバナンスの仕組みを
欠いており、45年後の債務完済スキームによって新規建設のハードルも下がるなど、
民営化は、その本来の目的である不採算道路の建設の防止のための適切な手段には
なっていない。本来は手段に過ぎない「民営化」が自己目的化しており、日本の国土
全体のシステム再設計の下で道路をどう位置付けるかという基本理念の議論をこそ先
行させるべきである。

●年金改革について [採点:21.8]

今回の年金改革案は、持続可能な制度設計を描けていないだけでなく、現行方式を前
提にしているため辻褄合わせが目立ち、抜本的改革になっていない。むしろ、税金で
基礎年金や最低保障分を賄い、所得比例の年金と組み合わせるなど、現行制度を抜本
的に見直すことが必要。政治に本来求められているのは、将来の超高齢化社会の姿と
社会保障の全体ビジョンを提示することであり、政党側からその説明は未だになく、
争点を避けている。


●詳しい結果はこちらをご覧下さい。
https://www.genron-npo.net/forum/asia/040322_01.html

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