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■■■■■言論NPOメールマガジン
■■■■■Vol.91
■■■■■2004/07/27
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●INDEX
■ 佐々木毅×北川正恭『国民は日本の将来から逃げられない 第2回』
■ 締切り迫る!「言論NPO会員フォーラム」ご案内
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■ 対談『国民は日本の将来から逃げられない 第2回』
佐々木毅(東京大学総長)北川正恭 (早稲田大学大学院教授 (前三重県知事))
聞き手 工藤泰志・言論NPO代表
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マニフェスト(政権公約)型の政治を日本に定着させるためにも、昨年の総選挙に続
く今回の参院選は極めて重要な意味合いを持つ。政治学者の佐々木毅東大総長と、前
三重県知事の北川正恭早稲田大大学院教授は、今回の参院選をどう位置付けるのか。
両氏とも、年金制度改革などでみられた政治の現実をいい教材にすると同時に、参院
選は日本の将来に向けて国のあり方が問われる選挙であるため、今の政治が説明責任
を果しているのか見極めることが重要であるとの認識を示した。そしてマニフェスト
をめぐって政治と有権者による契約型システムを確立することが必要と指摘してい
る。(この対談は参議院選挙前の04/6/16に行われました。)
●年金改革対応めぐり政党に不信
工藤 今の日本の政党は、有権者と約束をして政策を実行するという腹が本当の意味
で固まっているのかどうか、その点はどう考えますか。
北川 政党は、今までは利害調整が中心だったから、理念なんか掲げたら選挙に不利
になるという範囲や分野が、特に与党には多い。特に年金の問題等々、昨年11
月の総選挙で明確に与党が年金のあり方を社会保障も含めて提示したかと言え
ば、あいまいにして予算の時期に送って、なし崩しにやってきたというところ
に、この国の将来に対して、こんなことでいいのかという不信感から、いわゆ
る政党不信が国民や有権者に広がっていると思う。
したがって、政党は選挙の前に、苦い薬も入るけれども、将来のために、とい
うのを断固書いたら、その政党は、特に与党は圧倒的に強くなるのに、与党な
どは理解していないというか錯覚している。今回の参院選では年金などわけの
わからないままなので率直に国民の審判を仰ぐ必要がある。
工藤 有権者と政党の関係について、建前は確かに有権者が主権在民で決めるのです
が、有権者が政党と契約で合意したもの、つまり有権者本位で政治を組み立て
てチェックを受けます。これ自体、歴史的に見て、かなり大きな転換のような
気がしますが、それは可能なのでしょうか。
佐々木 戦後かなりの時期は、今お話があったように、実質的にはさまざまな団体の
間で利害調整をやるのとセットで、国民全体としては、具体的な約束を求める
よりも、お任せをしておけば何とかうまくやってくれるという状況に甘んじて
きた。例外的に、新しい税金を導入するとか、あるいは税率を上げるとかと
いったときには結構大きな争点になったけれども、例えば消費税のときでも、
選挙前には言わないようにしておいて、選挙が終わった後にその実現を図ると
いうやり方が、これまでの政治の体質だった。
そういう意味で、国民の無関心というか、お任せ気分と、政治家の方も利害調
整を政治のほとんどの内容と心得ている。この表裏が何となく共存してきたと
いうのがこれまでの長い現実だった。
ところが、ここへ来て、もう任せていてもうまくいくという時代ではなくなっ
てきた。つまり、1つは政治が自由にできる資源が非常に少なくなってきた。
無尽蔵に富が生み出されて、それを分配して、みんなを満足させられるという
時代ではなくなってきたわけだが、その場合、無限責任というのがとても負い
切れない、限定的責任しかない。
そうすると、結局、これをやるから選んでくれという話にだんだんなっていか
ざるを得ない。同時に、何を約束した、何をめぐって争われたかわからないよ
うな選挙というのは不明朗だし、不透明だし、選挙として余り魅力がないとい
う話が一般的なパーセプションとしてもあり、そこで具体化という話になっ
た。
となると、具体的な話についての具体的な責任、そして、その範囲内について
は必ず責任を問われる。そのかわり、あらゆることについては、あなた方を
ハッピーにしてあげるなどというあいまいな約束は、もはやできなくなってい
る。
●選挙後に実行を約束する契約が重要
方向としては、具体的な約束と具体的な責任という方向へ行く以外に手はな
い。北川さんの言われた話で言えば、事前約束明示型で行くしかなくなってき
ているとは思う。ただ、それでもできるだけ玉虫色的にして、自分たちの調整
の余地をキープしておきたいという話を、政治がやればやるほど、今度の年金
問題がそうであるように、結局、後になって不満がバーッと出てくるというこ
とになる。
正直言って、年金の法案の審議なんかを見ていると、あれは本当に通した方が
いいと与党は思ったのか思わなかったのか。それは通さなければいかんと思っ
たのだろうと思うが、結局、政治的なリスクを背負い込む結果になったと思
う。
したがって、事前明示型で、選挙が終わったらすぐ実行に入るという、ある
種、政治というものが契約型に移行するということについては、まだ腰が十分
落ちついていないということは、否定できない。それと国民の方の無関心が、
それに見合うような格好で、こちらの方も腰の据わりが悪いという状態になっ
ている。一種のなれ合い構造みたいなものが全体として存在しているように私
には見える。
工藤 あるところでの話で、自民党の参院議員会長の青木さんは、選挙では争点を出
すな、選挙の後にしろと言っている、という。そういうことを本気で考える古
い人が参議院には結構います。だから、この前のマニフェストもそうだったの
ですが、選挙飛ばしというか、争点飛ばしという問題が一方であって、国民は
年金法案に対しても何も判断できなかったわけです。それが多分、有権者の不
満になってきている。
今の政党が、ある面で変わらなければ、多分、有権者や国民はもっと政治不信
を強めていくという局面にある気がします。北川さんは、政党は意識改革を図
れるかどうか、どう思われますか。
北川 無理だと思う。業界団体の代表者が参議院の比例区に出てこられるということ
は一体どういうことか。まさに癒着の構造そのままの形が出ていることを国民
が、きちっと審判を下して、それは国のデザインを描く選挙ではないだろう、
利害調整の今までのパトロンとクライアントの関係の延長線上でのことだろ
う、ということにしていかければならない。それは選挙民にも責任があること
だ。
その意味でも、マニフェストを進化させなければいけないが、政党とか地方自
治体の首長が、自らの政権の政策の情報公開をするわけだから、今度は選んだ
方の住民や有権者の責任も問われる。これをもっと明確にしていくには、やっ
ぱり契約がしっかりしていなければならない。マニフェストで約束したら必ず
実行されるのだという契約書を重くする運動は重要だ。その1つの試金石とし
て、私は今度の参院選挙は大きい意味合いを持つと思っている。
工藤 マニフェスト型の政治に実現のためには、政党のガバナンスとか政党の組織
が、そういうふうな契約を国民との間でできるのか、またそうした政策形成の
プロセスを党内でつくり得るのか、それから、できたものを今度は政府と一体
になって実行するという政策の実行プロセスが可能か。今までは小泉政権が首
相主導で改革を進める立場でしたから、こうした仕組みはある程度進むと思っ
ていたのですが、どうもそういうシステム、サイクルがつくられる方向に向
かっていないように思えます。
──次号へつづく──
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■ 締切り迫る!「言論NPO会員フォーラム」ご案内
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言論NPOは、会員の皆様との意見交換の場として新形式による会員フォーラムをご提
供したいと考え検討を進めておりましたが、このたび、メリルリンチ日本証券株式会
社のイエスパー・コール氏、早稲田大学大学院の川本裕子氏をコーディネーターにお
願いし、その時々の話題にふさわしいゲストをスピーカーとして招き議論を展開する
会員フォーラムを毎月1回開催する運びとなりました。
第一回フォーラムは自民党、民主党の政策実現の担当者を招き、参院選終了後の政治
の課題と両党の政策の対立軸について議論を行っていただく予定です。日が迫っての
お知らせになりましたが、万障お繰り合わせのうえ、ご参加くださいますよう、お待
ち申し上げております。
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● 記
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○日時 2004年7月29日(木) 午後 6:30~8:00(開場6:00)
○場所 日本財団(東京都港区赤坂1-2-2 日本財団ビル)2階 会議室
○テーマ 「自民党、民主党の政策の対立軸について」
○ゲストスピーカー 塩崎恭久(衆議院議員、自民党政務調査会副会長)
仙谷由人(衆議院議員、民主党政策調査会長)
○コーディネーター イエスパー・コール
(メリルリンチ日本証券株式会社マネージングディレクター)
○参加費 お一人様 3,000円
※このフォーラムは会員の方のみ、ご参加いただけます。
● 申込方法
言論NPOウェブサイト
https://www.genron-npo.net/about/history/040729_forumanno.html
より、申込用紙(PDFファイル)をダウンロードし、要事項をご記入の上、事務局ま
でFAX(03-3548-0512)または郵送にてお申し込みください。
● 申込締切:2004年7月28日
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言論NPOは、ウェブサイト以外に、出版、政策フォーラム、
シンポジウムなど、多様な活動を展開しています。
●言論NPOの3つのミッション
1. 現在のマスコミが果たしていない建設的で当事者意識をもつ
クオリティの高い議論の形成
2. 議論の形成や参加者を増やすために自由でフラットな議論の場の
形成や判断材料を提供
3. 議論の成果をアクションに結び付け、国の政策形成に影響を与える
この活動は、多くの会員のご支援によって支えられています。
新しい日本の言論形成に、ぜひあなたもご参加ください。
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