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■■■■■言論NPOメールマガジン
■■■■■Vol.96
■■■■■2004/08/31
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●INDEX
■ 増田寛也×北川正恭『なぜ今、ローカルマニフェストなのか 第1回』
■ 9月8日(水)第1回ローカル・マニフェスト検証大会のご案内
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■ 対談『なぜ今、ローカルマニフェストなのか 第1回』
増田寛也 (岩手県知事) 北川正恭 (早稲田大学大学院教授 (前三重県知事))
聞き手 工藤泰志・言論NPO代表
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工藤 これから半年間に渡り、国と地方との関係について、きちんした議論をしたい
と思っています。ここでは最終的に国と地方をどういう着地に持っていくべき
かというところにまず視点を当てた形で議論を行い、その中で、ローカルマニ
フェストの意義と役割について考えてみたいと思います。
地方にはいま、解決すべき様々な問題があるように思います。日本の構造改革
が進展する中で、経済的な所得格差が地方格差となり始めています。今後この
動きが加速した場合に、現在の国や地方の関係、特に地方に何が問われていく
のかという点について浮き彫りにしてもらいたい。そのためには、国と地方と
の関係をどう構築すべきか。三位一体で少しずつ、という話だけではなく、最
終的にどのように国と地方の関係を構築すべきか。そのためにはどのようなプ
ロセスでそれを実現していけばよいのか。そういう観点から考えた場合、三位
一体という議論の進め方をどう考えるか。 さらにローカルマニフェストを提
示する意味について。既に増田知事のところでもマニフェストを提示して県の
行政を展開する動きが始まっていますが、いまなぜ、ローカルマニフェストな
のかという点と、こうした動きが地方政治にどのような変化をおこしているの
か。さらに、現在のローカルマニフェストが実質的に住民との契約になるため
には、国と地方との関係、また地方自治というのはどういうものになるべきか
という点についての課題をいろいろな形で提起できないかと考えています。
こうした議論は、これから始まる国と地方の改革の基調になる論点だと思うの
で、こういう話を聞かせてもらいたいと思います。
では、まず日本のシステムを大きく変えるこの局面において、地方に問われて
いる課題というのはどのように認識されているのかというところから議論を始
めたいと思います。増田知事から話してもらえますか。
増田 「国と地方」という場合、国というのは中央を意味する言葉で使われていると
思いますが、一つは、中央も地方も含んだ国全体につながる課題ではあります
が、有権者の責任と、その有権者に選ばれた各地方の首長や議員との関係をも
う一度問い直すということを徹底的にやらなければならないと思います。
今まで、やれ国が決めたことだ、やれ中央省庁が決めたことだといって、責任
を相手に押しつけるようなことをずっと繰り返してきました。これは中央が決
めたことだからそっちが悪い、あるいは金をくれない中央が悪いといったこと
が議論のかなりの部分を占めていました。
だから地方の首長と、それをチェックするはずの議会の議員が一緒になって同
じ要望書を作り、中央に頭を下げて金をもらいに行くなどというばかげたこと
が行われているわけです。そして有権者も自らが選んだ首長や議員が陳情する
ことを期待しているという状況がある。
構造改革が進展していく中で、地方こそ、より有権者の責任、これはそういう
国への依存心が強い首長や議員を選んでいるという意味での有権者の責任、そ
れから当然、選ばれている首長や議員の責任についても問い直されているので
はないでしょうか。
こういう状況を反省し、有権者と首長・議員の新しい関係を見出していこうと
したのが、マニフェストではないかと思っています。有権者にきちんと約束を
し、逆に有権者もそれを見ながらより的確な判断をしていく。それだけに有権
者の責任も大きいということを言ったのが、マニフェストだろうと思います。
工藤 陳情型政治というのは、今に始まったことではなく、ずっと続いているわけで
すよね。それが、なぜ今、問われなければならないのか。あるいは有権者の持
つ責任が、なぜ今問われなければならないのか。この点について北川さんはど
う思われますか。
北川 理想と現実とをミックスして説明しないとわかりにくいと思いますが、現実の
世界では、右肩上がりの経済成長が終わったということから、「あれもこれ
も」という政策課題選択から「あれかこれか」の選択へ、好むと好まざるとに
かかわらず、中央も地方も転換せざるを得なくなったという現実があります。
その背景には、2000年4月に施行された地方分権一括法があります。あのとき
は475本の法律の大改正でしたから、財源まで踏み込むととても通らないか
ら、財源は後回しにしようということになった。そこで出てきたのが三位一体
の改革です。現実の流れと理論とが一致して動き始めていたということです。
そこで、これを千載一遇のチャンスととらえて、これを活用して地方が自立し
ていかなければ国に甘えるばかり、国に責任転嫁するだけでは変わらないとい
う志の高い知事たちに私は集まっていただいたわけです。そこで出てきたの
が、マニフェストの話でした。マニフェストは、自分の在任期間中における政
策を契約書という形で情報公開するわけですが、それが書けない知事候補の方
が随分出てきた。なぜかというと、財源を国に握られているから無責任なこと
はできない。よって、歳入の自治なき自治はあり得ないというところまで内発
的に気づいていただいているわけですね。
それをムーブメントにしていこうと補助金返還運動という動きがでてきた。そ
うした時には今、増田さんが言われた自己決定、自己責任という強い気持ちが
ない限り、地域政策は実現できない。補助金に縛られて制度的に補完し合った
体制では、とてもそうした自治が生まれてこないのではないかと考えたわけで
す。
有権者と直接契約をしたマニフェストになると、首長もはっきり自分の責任を
明確にするし、今度は選ぶ側、すなわち有権者の責任も問うことになる。マニ
フェストの持つ「双方向の責任」になることで、国との補完性の原理で動いて
いたこれまでの関係がリエンジニアリングされるのだと思います。
工藤 今の話をもう少し肉づけしたいのですが、増田さんのマニフェストでは理念と
して自立する地方というように、自立ということを問うています。経済成長が
右肩上がり出なくなってしまったと同時に、分配も右肩上がりではなくなって
しまった。そのためには住民との合意の形成が必要となっています。そういう
中での危機感が、自立のまず前提にあると理解していいですか。
増田 結局、右肩上がりの時代の知事というのは、地域の経営者であるということを
意識しないでもよかった。ところが今、経済基調が明らかに変わってきている
中で、本来、地域の経営者であるべき人間がそのことをきちんと意識して行政
を行っていかなくてはいけなくなってきた。県民が株主であり、きちんとした
配当を、金ではなくサービスという形で県民に返していかなくてはならない。
地域経営を行う場合、それだけの自覚を持ってやらなければならないというこ
とを、経済基調が変わったときに初めて自覚させられました。まだ自覚してい
ない自治体もたくさんあるとは思いますが、そのことを自覚したとき、次にど
うするのかということが問われたわけです。
三位一体改革に対する対処の仕方についても、やはり地域の経営者であるとい
うことが意識できているかどうか。それからマニフェストの問題も、書けない
知事がいたという話がありますけれども、地域の経営者ということから言え
ば、マニフェストを書かなければならない。そして書くためには何が必要か、
それは三位一体改革をして、国からの自立を意識しなくてはならないというと
ころにすべて帰着していくのではないかと思います。
工藤 地域の経営をする場合、いまの国と地方との関係では自分のところでなかなか
決定できないというシステムになっています。地方が本当に自立した形で動き
出すためには、どこを組みかえなければならないのか。
北川 国と地方の関係は多面的ですからさまざまな面があると思いますが、例えば今
回、知事の皆さんなり、あるいは市長の皆さんが立ち上がっていただいたの
は、補助金に縛られた体制から自主財源へという発想がある。仮にこれまで
100億円の補助金を受けていたら、100億円以上自主財源をよこさない限りは
納得しないという気持ちだったのが、仮に100億円の補助金が80億円の自主財
源に変わったとしても、自分たちの裁量でやるならウエルカムという点が変
わった。自分たちで裁量して、100億円が80億円になっても、もっといい住民
とのコラボレーション、マネジメントをやろうということで、国に意見を申し
上げ、自分たちが率先実行するということ。これは日本で初めてのことです。
全部補完した制度にできているということからまず見直すなら、補助金で縛ら
れてきた体制、補助金の制度をどう変えていくかということで立ち上がるしか
ない。返還運動が始まったと見ていただいていいと思います。
工藤 地方側から出た補助金の見直しは本質的に返還運動なんですか。
増田 補助金という点から見れば返還運動だと思います。補助金は要りません、その
かわり税源を、ということですが、これはそれを全部よこせということではな
く、補助金に頼ることをやめて自分たちでやっていこう、そのかわり、本来地
方に与えられるべき税源が極めて不十分だということなので、それは求めてい
こう。ただこれは決して取引のようなものではないと思います。それは補助金
があるからそういう形になっていたのであり、それぞれの自治体が自立できる
だけの税制の組み方というのは、本来あるべきだからです。
私は、このローカルマニフェストが想定している自治体というのは、自立した
自治体を前提にしていると思います。財源のところが書けないなどというの
は、まさしく自立ができていないからです。右肩上がりの経済成長が終わった
ときに、その点については私たちも否応なしに自覚させられましたが、実際に
マニフェストを作成していく中で、この問題がさらに明確になりました。こん
なことも書けないような関係では全然だめだと。今度はそれが逆に原動力にな
り、補助金を返そうとか、税源をきちんと確保しようということにつながって
きた。
だから、昨年4月の知事選挙に際して私がローカルマニフェストをつくったと
き、あのときは2月の時点でいろいろと作業をしていましたが、そういったこ
とを痛感したからこそ、こういう補助金は要りませんということを言う、ある
種の原動力になった。もちろんそれがすべてではないですよ。もしそれがすべ
てだったら、あまりにも話がきれい過ぎるのでそこまでは言いませんが、マニ
フェストをつくった体験がそういうことにもつながったのは事実です。補助金
を今までどおりにもらおうという流れに対して逆方向の意見を言うのはものす
ごくリスクも大きいですし、怖いことです。本当に明日からの県政の飯の種を
断ち切っていいのだろうかという思いもあります。ただ、ローカルマニフェス
トをつくった以上はそれをやらないとだめだ、そのためにどこかでその流れを
断ち切っておかなくてはいけないという気持ちはやはり強かった。そしてそう
いうことに賛同した知事が増えたということがあると思います。
北川 歳入の自治なき自治はあり得ないということが明確に理解され始めたと思いま
す。マニフェストで選挙を戦って、有権者と直接約束したでしょう。そこで説
明責任のウエートが、国よりもむしろ県民の方へと変わった。だから、辛いけ
れども、国に対して補助金返還運動といったパラダイムへシフトしていかない
と、本当の自治はもたない、大変なリスクだけれども、頑張ってやろうと。そ
れが運動の始まりでした。
そこで、1人でやるより、ということで今14~15名の知事が名乗りをあげて、
さらに市長の皆さんも50~60名出てきて、いわゆる原則に戻って、本当の自
治とは何ぞやという議論が始まったのです。
工藤 つまり、ローカルマニフェストを取り入れることで、地方分権に魂が入ったと
いうか、本物になったわけですね。
増田 有権者に約束したわけですから、逆に有権者も「マニフェストを比較した上で
的確な判断を下す」という責任はきちんととってほしい。冒頭に私が申し上げ
た話ですけれども、有権者の責任も極めて重く問われる。それが自治だと思い
ます。
──次号へつづく──
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■ 9月8日(水)第1回ローカル・マニフェスト検証大会のご案内
主催:早稲田大学大学院公共経営研究科、早稲田大学マニフェスト研究所
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言論NPO代表・工藤泰志は、9月8日(水)に「ローカル・マニフェストの第1回検証
大会」(主催:早稲田大学大学院公共経営研究科、早稲田大学マニフェスト研究所)
に参加いたします。
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この検証大会は、2003年の知事選挙で当選した知事のマニフェストの進捗状況を検
証し、マニフェストの意義および課題、今後の展望を検討する目的で開催いたしま
す。この検証大会を通じて、ローカル・マニフェストのさらなる進化を目指すととも
に、真の分権改革を進め、「新たな国のかたち」を実現するための主体的な行動と幅
広い連携を求めるメッセージを送りたいと考えます。
●日時 2004年9月8日(水)13:00~17:10
●場所 早稲田大学西早稲田キャンパス14号館2階201教室
(東京都新宿区西早稲田1-6-1)
●主催 早稲田大学大学院公共経営研究科
早稲田大学マニフェスト研究所
●参加方法 FAXまたはメールにて事前申込制
参加費無料、定員700名、定員になり次第締め切り
<お申し込み先>
早稲田大学マニフェスト研究所事務局
〒169-8050 東京都新宿区西早稲田1-6-1
Fax: 03(5286)1663 E-mail: maniken@list.waseda.jp
●お問合せ 早稲田大学マニフェスト研究所事務局(担当:林)
TEL&FAX: 03(5286)1663
E-MAIL: maniken@list.waseda.jp
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シンポジウムなど、多様な活動を展開しています。
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1. 現在のマスコミが果たしていない建設的で当事者意識をもつ
クオリティの高い議論の形成
2. 議論の形成や参加者を増やすために自由でフラットな議論の場の
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