【vol.100】 増田寛也×北川正恭『なぜ今、ローカルマニフェストなのか(5)』

2004年9月28日

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■■■■■言論NPOメールマガジン
■■■■■Vol.100
■■■■■2004/09/28
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■ 10/13 (水)「言論NPOフォーラム」のゲストスピーカー紹介
■ 増田寛也×北川正恭『なぜ今、ローカルマニフェストなのか 第5回』


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■ 10/13 (水)「言論NPOフォーラム」のゲストスピーカー紹介
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●増田寛也/ますだ・ひろや(岩手県知事)
1951年生まれ。1977年東京大学法学部卒業、同年建設省入省。千葉県警察本部交通
部交通指導課長、茨城県企画部鉄道交通課長、建設省河川局河川総務課企画官等を歴
任し、1994年退職。1995年4月岩手県知事初当選。2003年4月岩手県知事三選。


●穂坂邦夫/ほさか・くにお(志木市長)
1941年生まれ。71年埼玉大学経済短期大学部卒業。埼玉県職員、足立町(現志木
市)職員を経て、志木市議会議員、埼玉県議会議員を勤めた後、2001年より現職。
第8代志木市議会議長、第99代埼玉県議会議長を勤め、現在、志木市体育館協会会長
に在任中。77年学校法人医学アカデミーを設立、理事長に就任。81年「医療法人瑞
穂会城南中央病院」を設立、会長に就任。現在は、老人保健施設「瑞穂の里」や訪問
看護ステーション「みずほ」を併設している。


●北川正恭/きたがわ・まさやす(早稲田大学大学院教授、21世紀臨調共同代表)
1944年生まれ。67年早稲田大学第一商学部卒業。三重県議会議員を経て、83年衆議
院議員初当選。90年に文部政務次官を務める。95年より三重県知事。ゼロベースで
事業を評価し改善を進める「事務事業評価システム」の導入や、総合計画「三重のく
にづくり宣言」を策定・推進。2003年4 月、知事退任。

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■ 10/13 (水)「言論NPOフォーラム」    於)日本記者クラブ 10階Aホール
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テーマは「ローカル・マニフェストと地方の自立」。今、国と地方の関係が問われてい
るなかで、小泉政権が進める三位一体改革の動きが始まっています。また地方では地
方の先見的な自治体からは有権者との契約に基づき行政を行うローカル・マニフェス
トの運動も始まっています。こうした中で、私たちは有権者本位の地方の自立を進め
るための課題やその進め方、さらに国と地方をめぐる新しい日本の再設計について議
論を深めたいと思います。

今回は、言論NPO会員以外の方もご参加いただけます。ぜひご参加下さい。

            - 記 -

◆日時       2004年10月13日(水) 午後 6:30~8:00(開場6:00)
◆場所       日本記者クラブ 10階Aホール (東京都千代田区内幸町2-2-1)
◆テーマ      「ローカル・マニフェストと地方の自立」
◆ゲストスピーカー 増田寛也(岩手県知事)
          穂坂邦夫(埼玉県志木市長)
          北川正恭(早稲田大学大学院教授)
◆コーディネーター イェスパー・コール
          (メリルリンチ日本証券株式会社マネージングディレクター)
◆参加費      言論NPO会員:お一人様 2,000円
              一般:お一人様 3,000円


◆詳細、お申込みはこちらからお願いいたします。
https://www.genron-npo.net/about/history/041013_forumanno.html

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■ 対談『なぜ今、ローカルマニフェストなのか 第5回』
  増田寛也 (岩手県知事) 北川正恭 (早稲田大学大学院教授 (前三重県知事))
                       聞き手 工藤泰志・言論NPO代表
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増田 これから先、非常に大きな問題になってくるのは公務員制度です。霞が関をど
   うするかという問題を真正面から問うていかないといけないのではないか。霞
   が関だけではなくて実は自民党の場合、政調という機能を通じて、霞が関イ
   コール永田町の自民党というふうにつながってくるわけです。ここをどうする
   のか。敵は官僚というか中央省庁なんですが、今おっしゃったように自治論も
   含めて、官僚は、自民党の政策立案機能も担っている。また、民主党も同様の
   構造を持っている。そこを変えていかなくてはならない。 一方で、公務員制度
   というのは60歳定年ということで、そこまではずっと守られている。国から地
   方へと小泉さんは簡単に言っていますけれども、では、地方に仕事がたくさん
   来たとき、マンパワーという面でもどうやってそれをこなすかという問題にも
   なってきます。

   その点を、どういう方法でメスを入れていくのかというのは、ものすごく大き
   な問題です。実はカネよりも、ヒトの移譲の問題については最大の抵抗がある
   のではないかと思う。彼らは、カネが細ることに対して警戒心を示してはいる
   けれども、ある程度ハードルが高くなってもカネがあれば自分たちの力を示せ
   ている部分はあるわけです。だから今回、岩手県では公共事業全体の量は少し
   減らしましたけれども、根っこはまだ国が残してあるから、自治体にとってみ
   るとより高いハードルで、県によっては今までよりもさらに頭を深く下げに、
   霞が関に行っているということも見られています。ただ、本当に人を国から移
   しはじめるとなると、またがらりと変わってくるでしょう。ただそれをやらな
   いとだめです。だから、北海道庁には道州制特区についてもっと戦う姿勢を示
   してもらって、真剣にやってもらいたいと思う。

北川 公務員法に限れば、ポリティカルアポインティーをどこまで認めるかというよ
   うな問題がある。これは民主導なんです。民主政治主導、そこに全てがつなが
   らないとならない。だんだんとそういう問題提起がされるようにやっていかな
   くては。当然そこのいわゆる政策立案にかかわる審議官以上の人たちとオペ
   レーションをやる人との公務員制度を二元制にするとか、中央の公務員と地方
   の公務員との流動を自由にさせるとか、そういった法律というものは当然見直
   していく。マニフェストはきっかけだから、これを軸に補助金体制だけが変わ
   るのではなく、制度そのものが全部変わらないと。中央集権から地方分権にオ
   ペレーションができる体制に全部入れかわらないと、一部分だけ変えていても
   全体が変わらない。だからパラダイムシフトが必要なのです。

工藤 結局、国と地方との関係について、どういうシステム設計を描くのか。これも
   マニフェストに問われるべきだと思います。神奈川県などは首都圏連合という
   のをマニフェストに入れているわけですよ。しかし、それがスローガンだけだ
   とマニフェストとして基本的に検証できない。増田知事は東北でも連合を作る
   という考えをしめしています。このように、大きな枠組みの変更についての問
   いかけも始まっているということになると、やはり国と地方との関係という問
   題に対してどういったビジョン、考え方を持っているのかという問題が当然問
   われる。

増田 本来はマニフェストの中に、今、工藤さんが言われたことも理念として書き込
   むべきだと思います。ただ、それを地方選挙、あるいは後の政策実施の中で、
   その結果を地方のレベルだけで問うのはあまりにも酷だと思う。やはり国との
   関係がありますから、首長がいくら地方でそのような理念を問うたからといっ
   て、国が変わらなければどうしようもない。

   ですから、大きな理念としてできるだけ書き込んで、その後の政治行動を有権
   者が見ていくということが必要ではないかと思います。ただ、検証の対象から
   は外しつつも、そういった大きな理念から出てくる個々の具体的な、例えば公
   共事業をどうするかなどというレベルでの検証は必要ではないか。

工藤 北川さんここはどうですか。結構重要な論点ですが。

北川 国とのかかわりが上下主従の関係で、今までは隷属することをもって地方自治
   と言っていたのではないかと、僕はずっと問うてきたわけです。そうではな
   く、自立をしようという動きが出てきたことは、マニフェストの成果だと思っ
   ています。そうすると、例えば具体的な動きとしては、来年特例債で市町村合
   併がかなり起こるでしょう。それが進めば今度は道州制の問題が、いわゆる規
   模の問題、国とのかかわり合いの問題で大きな動きが地方自治体の方から生ま
   れてくると思います。そういう流れにならなければ、そういうビジネスプロセ
   スがリエンジニアリングされなければ、本来の自治は確立しないと思っていま
   すから。やはりロードマップの中で、どこから順番に行くかということがだん
   だんと描かれてきてやっていくべきだと思います。

工藤 ロードマップを描くということは、やっぱり評価の対象になりますよね。

北川 そうです。今、工藤さんが言われているのは一気に飛んで、帰結の姿がどうか
   という点から問うていますが、逆に積み上げていくと、ロードマップが要ると
   いうのがマニフェストの持つ意味であり、いわゆる理念になるわけです。本来
   は、マニフェストはやはり理念で問えばいい。具体的な数値は二の次ですが、
   ただそれを無視してしまうと、今まで荒唐無稽な数値さえ出していなかったの
   が公約ですから、具体的な数値を打ち出して全体の理念が見えるということに
   しておかないと、政治家が信用されない。

増田 例えば道州制ということについては3県でこういうものをつくりますというこ
   とを打ち出し、それで、とりあえず初年度はこういうものを予算として、例え
   ば共通のビジョンづくりのためのものを予算に入れますとか、2年目はそれに
   つながるものとして、3県でアンテナショップをこういうふうに出しますと
   か。実現に向けたロードマップは確かに必要かもしれません。実際、私たちは
   今年の7月に3県共同のアンテナショップを大阪にオープンしましたけれども、
   そういう個々の施策を毎年予算に入れ込めるわけですよね。ですから、そうい
   う部分を政策としてきちんと数値で評価すると同時に、数値としては表せない
   けれども、大きな理念は理念としてやはり評価する。それからロードマップ、
   それにつながる布石を、毎年きちんと予算なり何なりで入れ込めているかとい
   うところは、しっかり検証していくべきだと思います。

工藤 評価を行うために知りたいことですが、財政再建の目標設定の妥当性、ここが
   どうしてもわからない。例えばどういう目標を設定したら正しいと判断できる
   のか。

増田 これは首長によって考え方が分かれる。県内の産業の状況をどう分析するかに
   よって見方が変わってくるかもしれませんが、やはり経常収支比率などのよう
   な指標をどこまで改善するかでしょう。東京は別だと思いますけれども地方の
   場合、借金をある程度前提にしなくてはいけない。そこでどれだけ県内産業に
   頼れるのか、税収に頼れるのかの見方にかかってくるのではないでしょうか。
   要は今の税源移譲の議論そのものにつながってくるわけですが、税源移譲して
   も、やはり地域的な跛行性、格差は出てきます。例えば愛知県はトヨタが非常
   に好調ですし、そのほかにも地域に強い産業を抱えているところなどは、経常
   収支比率を徹底的に改善させようと考えて非常に高い目標を設定する。

工藤 この場合、例えば政府の動きを与件として考えなくてはならない。国も債務が
   膨らみその削減に動くことが予想されます。それを行った場合、危機管理がき
   ちんとできるかという点を軸に入れた場合、そうした指標だけでは足りないの
   ではないかという見方もありえます。

増田 財政の前提となる政府の要素というのは非常に大きくて、今の状況からいう
   と、与件として入れる以外どうしようもないわけです。財政となると、すぐ翌
   年の財政という話になるでしょう。数値で表すということになるから、政府の
   与件としてインプットするしかないので、やはり少なくとも翌年度、それから
   翌々年度までのところは与件として入れて、あとは少しでも数値が改善すれば
   よしとせざるを得ないですね。要するに高い目標設定はおそらく難しい。

工藤 起債制限比率が高く、財政問題が危惧されるところではどういうマニフェスト
   をつくるべきなのかということが出てきますよね。

増田 ここは数年というか、10年単位でそういう企業の成長力に依存できるところ
   と、そうでないところとでは相当違ってくるのではないですか。

北川 これは既存の発想で課題設定していると答えが見つからない。要するに本当に
   分権を進めていこうと思ったら、東京問題が当然議論になってくる。税のあり
   方が根本的に変わらないと答えが出ない。だからこそ、そこへだんだんと収斂
   していく一里塚の一つとして、ロードマップが必要になる。


                          ──次号へつづく──

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