「麻生政権の100日評価」結果で考えたこと

2009年1月17日

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◆◆◆◆ 言論NPO コンテンツメールマガジン 
◆◆◆◆ Vol.7(2009年1月17日発行)

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早いもので1月も半分が過ぎましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて、今号では「麻生政権の100日評価」アンケートの結果を受け、「麻生政権
の100日評価結果で考えたこと」と題して、代表工藤がコメントしています。
ぜひ最後までご覧ください。

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麻生政権の100日評価結果で考えたこと

言論NPOは先日、「麻生政権100日評価」のアンケート結果を公表しましたが、
この結果で何が明らかになったのでしょうか。

工藤 こうした調査では消極的な傾向が出やすいのですが、麻生政権に対する
100日後の支持率がここまで低いとは、率直にいって想像外でした。11%ですか
ら。しかも今後への期待もかなり低い。

麻生政権に本来期待されていたのは、なるべく早く「解散・総選挙」をして、
「民意に基づいた政治」を回復させることですが、そのタイミングをズルズル
と失い、経済対策に関してもそれに対する期待や信頼を集めていない、それが
こうした結果になったと思います。

この100日評価は、どんな政権でも100日経ったら有権者の監視にさらされる、
そうした緊張感ある政治を作ろうと3年前から取り組んでいます。

首相の評価は首相の資質と業績の評価の2つに分かれますが、その2つでも
麻生政権は、前の安倍さん・福田さんに比べてもかなり評価が低い。首相の
資質に関しては、たとえば「政策決定のリーダーシップ」とか、「国民に対す
る説明能力」とか、8項目を5段階で評価しましたが、麻生さんは5点満点で
1.8 点でした。こうしたアンケートによる評価は厳しめに出るものですが、
福田さんは2.3点で、安倍さんは2.2点ですから、やはり1点台に落ちたという
のは、非常に大きい事実だと思います。

それから21項目からなる麻生政権の取り組んだ政策課題についての評価では、
評価が相対的に高く、「評価できない」という声と意見が分かれたのは、消費
税の増税を全治3年の後に行うということを明言した点だけです。これに対し
ては一定の評価があったのですが、それ以外の20項目に関しては、ほとんどが
現時点も、今後も評価できないという、かなり厳しい評価になりました。
政権が取り組む課題のほとんどの項目で評価が低い、という状況は今までの
安倍さん・福田さんではなかったことです。

 
今回のアンケート評価では日本の現在の政治状況に関しても聞いていますが。

工藤 今回の評価では麻生政権のことだけがメディアでも取り上げられたの
ですが、今回のアンケート結果の結論で一番私が注目したのは、回答者の多く
が麻生政権にイエローカードを出しただけではなく、日本の政治そのものにも
イエローカードを出したことです。

例えば民主党に政権交代を期待する声が5割以上ありました。これは今の政権
が駄目だから民主党に期待していると思いがちですが、実はそうではない。
民主党の政策を期待しているのはわずかに6.3%で、それよりも多いのは、
政権交代をすることによって確かに政権は不安定になるかもしれないが、
一回、政治の構造を変えない限り、チェンジしない限り日本はもたないだろう
と思っている人たちであり、彼らが7割もいたのです。

今の日本の政治の現状をどう見ているのか。今回はもっと突っ込んでみました。
すると、今の日本の政治の状況については、既成政党の政治の限界がはっきり
して、「新しい政治に向かう過渡期」であるとか、いったん「政権交代によって
これまでの政治を一度壊すべき時期」であると捉えている人がそれぞれ半分以上
もいるわけです。

いまの既成政党に期待していない回答者も半数を越えました。
やはり日本でも政治の変化を求めている。それは既成政党の政権交代では
とどまらない、という見方です。これが、今回のアンケート結果が浮き彫りに
した、非常に大きな傾向です。
 
そこで、私はこの結果に関して自民党と民主党の国会議員に参加してもらい、
こうした回答結果をどう考えるか、座談会を開いて議論してみました。
Webでも公開しているのでぜひ、見ていただきたいのですが、ここで私は、
既成政党には今の政治を変えていく力はあるのか、と聞きました。

今の政治は、党首討論にも見られるように、国会でも今の危機に真剣に向かい
合っているとは思えず、議論は、あなたは定額給付金をもらうか、もらわない
のかとか、補正予算を出すか出さないかとか、そういう話だけで時間がつぶさ
れている。こうした状況が政治への失望感につながっている、と思うのです。
 
それに対する政治家の答えには、正直に言って驚きました。座談会に参加して
いただいた政治家の人は私も尊敬する人ですが、正直に今の政治の状況を話し
てくれたからです。

多くの政治家には、政策を真面目に議論しても、それでは当選には結びつかな
いという無力感があると言うのです。だから目線が選挙だけを意識していて、
日本の未来を考えるような論争が起きない。さらに、自民党の方から見れば、
自民党の政治は限界だというのは何年も前からわかっていた、小泉政権で一度
延命しただけで党を抜本的に変えないとならないことは分かっているが、その
力はいまの政党にはない、とまで言うのです。

では、日本の政治は、なぜ自己革新の力を持たないのか。それに対する政治側
の答えは、かなり強烈でした。有権者がそういうことを求めていない、から。
それが答えです。今の危機は今の日本の社会経済の構造やこれからの日本の未
来にとっても多くの問題を提起しているのですが。日本の将来がどうなるとか
よりも、地方の経済の疲弊は厳しく今のサービスのことだけしか有権者は関心
がない、だからバラ撒きでも公共事業を求める、というような内容でした。

座談会には皆さん、本音で参加していただき私も感謝していますが、こうした
政治家の認識は今の多くの政治家に共通しているように、私には思えます。

私は、この100日評価の結果や議論を見ていて、日本の政治は今、歴史的な岐路
にあるのではないかと痛感しました。

日本の政治は変わらなくてはいけない。それは言論NPOのアンケートの結果でも
期待されていることです。でも、日本の政治を本当に変えさせる、チェンジさせ
るには、有権者がそれを求めないといけない。有権者が求めて、政治に迫って
いくという力を持たないと、日本は変わらない、のです。

つまり問われているのは私たちなのではないか、それをこの「麻生政権の100
日評価」が明らかにしたのだと思うのです。

聞き手:インターン 池田真歩( 東京大学)

詳細なアンケート結果はこちらよりご覧いただけます。
         ⇒https://www.genron-npo.net/aso100days/003380.html

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●座談会『「麻生政権の100日評価」結果をどう読むか』を公開中
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「麻生政権の100日評価」アンケート結果を受けて先月行われた緊急座談会での
議論も公開中です(全5話)。アンケート結果とあわせてご覧ください。

<発言者>
添谷 芳秀(慶応義塾大学東アジア研究所所長 法学部教授)
若宮 啓文(朝日新聞社コラムニスト)
中谷 元(衆議院議員 元防衛庁長官)
仙谷 由人(衆議院議員 元民主党政調会長)
司会:工藤 泰志(言論NPO代表)

◆第1話:麻生政権100日の評価はなぜ厳しいのか
 → https://www.genron-npo.net/aso100days/003383.html
◆第2話:麻生政権が問われた役割とは
 → https://www.genron-npo.net/aso100days/003385.html
◆第3話:与野党協力で危機に対応することはできないのか
 → https://www.genron-npo.net/aso100days/003386.html
◆第4話:求めているのは日本の政治構造の変化
 → https://www.genron-npo.net/aso100days/003387.html
◆第5話:有権者が政治に向かい合うしかない
 → https://www.genron-npo.net/aso100days/003388.html

※議論の内容は、次号からメールマガジンで皆さまにお届けする予定です。

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