菅新政権をどう見るか

2010年6月11日

言論NPOの工藤です。
平素より言論NPOの活動にご理解をいただき、ありがとうございます。

言論NPOでは、参議院選挙に向けて政権の実績評価活動を行っております。
6月8日に発足した菅新政権をどう考えるのか。7月に行われる参院選挙で国民に
何を示さなければならないのか、私なりの考えをウェブサイトの工藤ブログで
述べさせていただきました。

是非、ご一読下さい。

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▼菅新政権をどう見るか(聞き手:言論NPO監事 田中弥生氏)
 https://www.genron-npo.net/kudo/podcasting/post_10.html?mel=20100611 
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―前回の「工藤ブログ」を撮影後にすぐ鳩山政権は退陣になりましたね。あっ
 という間に菅政権になってしまいました。疑問に思ったのは、一夜にして民
 主党の支持率がいきなり17%から60%位に上がりました。これはどういうこ
 となのでしょうか。
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工藤:
それはやはり、前政権がひどすぎたのです。鳩山首相は退陣の時に言っていま
すが、小沢さんの問題とか、政治とカネの問題というのは大きかったと思いま
すし、何よりもすべてを選挙目当てにして、党利党略的に動いている感じが見
えました。政治が「古い政治」のままだと感じ、国民はかなり失望しました。
ただ、菅首相が「新しい政治」と言えるのか、この段階ではまだ判断できませ
ん。顔ぶれは変わりましたが、しっかりとしたプランは示していません。

菅首相は「強い経済、強い財政、強い社会保障」を一体的にやりたいと言って
います。もし首相がこのようなことをちゃんと行いたいと言うのであれば、き
ちんとしたプランを出してから選挙に臨むべきです。私は、政権が代わりマニ
フェストを変えるのであれば、解散総選挙をしないという、理由を見つけ出す
方が難しいと思っています。今支持率が回復したので急いで選挙をやるべきだ
との話もありますが、それに乗るだけなら、選挙を意識したただの顔のすり替
えに過ぎません。私はこれから新政権が政策面でどういう提案をするのか重要
視しています。


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―マニフェストに関しては、どう理解すればいいのでしょうか。前のマニフ
 ェストで鳩山政権が生まれましたが、その間に選挙を経ないで政権が変わっ
 た場合は、私たちは何と約束をしていることになるのですか?
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工藤:
前回の選挙で鳩山首相が出したものが、国民との約束なのです。ですので、こ
れを変えるとなると、本当は国民に真意を問うべきです。菅首相はマニフェス
トを変えるような動きや発言をしていますし、さっきの「強い経済、強い財政、
強い社会保障」をやるとすれば、間違いなくマニフェストの大幅な変更は避け
られません。そうだとすれば、前のマニフェストを変えることになりますので、
本来はどうしても国民の信を問わないといけない局面なのです。

ここでもう一つ考えないとならないのは、菅政権の意味をどう考えるかです。
菅さんは鳩山前首相の退陣ということで政権を作りましたが、これは鳩山政権
がすでに行き詰まり、それを修正することが必要、という状況に重なっていま
す。つまり、政治が、本来、日本の政治が取り組まなくてはならない、課題に
戻ったということです。

鳩山政権のマニフェストの約束は本当にバラマキでした。こども手当ての満額
支給も含めて、(このマニフェストに書いてあることを実行するには)16.8兆
円必要で、この額は日本の予算の中で、公共事業、教育関係、防衛の予算のす
べて足したものよりも多いのです。無駄削減だけで(財源を捻出するのは)無
理であり、現実にそれも失敗しています。

それを民主党として認めないといけない段階に来ています。ただ、約束は破た
んしても政治の現実には課題があります。それが財政再建、社会保障や経済の
回復なのです。つまりようやくスタートに戻ったのです。この状況は冷静に考
えれば小泉構造改革の行きすぎを修正しようとした自民党末期の福田・麻生両
政権の状況と何が違うのか、という話なのです。この両政権は財政再建や社会
保障に関してのプランを出し、それに対して消費税の増額も考えて動いていま
した。改革の行き詰まりの修正と、バラマキの修正。修正を迫られたという点
では同じですが、では菅政権のプランは何なのか。自民党末期の政権と比べて
それを上回るプランを菅政権が出せるか。これが最大の勝負です。


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―そのあたりですね。まだあまり具体的な案を出されていないですが、菅政
 権はいつまでにこれを出すべきなのですか?
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工藤:
本来は今度の選挙で出すべきです。選挙で国民の真意を問い直すことです。だ
けどここに大きな矛盾があって、たとえ、プランを出して「菅マニフェスト」
が支持されようがされなかろうが、衆議院は民主党が圧倒的多数ですから、政
権は続くわけです。だから本来マニフェストは政権選択のための公約ですから、
大幅な変更をするのであればどうしても総選挙をしないと理屈が通らないので
す。この前の菅首相の官邸での記者会見を見ていると、解散は「白紙だ」と言
っていましたが、でも一方で財政再建について、国債の発行額の上限をつくる
とか記者に色々質問されていましたが、ほとんど答えていません。他党なども
含めていろんな人と協議をするとか。では自分たちの案は何なのか、と。それ
をまだ説明できない。こういう点を見ていて、まだ煮詰まっていないな、と思
いました。それを見てがっかりしました。鳩山首相は退陣に追い込まれたのは
国民の支持を失ったからです。その厳粛な事実を、まだ理解していないのでは
ないか。まだ覚悟を固めておらず、それに対して私なら、「こういう形でやる」
というところまで来ていません。

―白紙に戻したとして、対案を出さなければいけないですが、それがまだ出て
 いないのですね。

選挙までにそれを作らないといけないのです。しかし選挙の事情を考え、「会
期を延長せずに早く選挙を行なえ」という党内の声に背中を押され、強引に選
挙を行おうとしています。それでは今度の選挙は何なのだ、と言うことになり
ます。

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―もし同じ問題を起こさないとすれば、8カ月の短命で終わった鳩山政権の
 何がまずくて、だから自分たちはどんな風に路線を変えるのかということを
 短時間であっても総括するべきではないですか。
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工藤:
そうです。その結果、あのままでいいという考え方もあり得ます。どっちにし
ても鳩山政権を総括して、そしてこれを継続するのかしないのか、もし変える
とすれば何のために変えるのかをはっきり言わないと国民は混乱します。参議
院選挙の結果に伴い、鳩山首相が辞任した方がすっきりするのです。それを選
挙に影響するので選挙前に退陣したとなれば、それはやはり選挙のために辞任
したと見られます。これは自民党が過去に犯した過ちと同じことになります。

菅首相は「最小不幸」というのを言っていました。不幸の要因も様々あるけど
政治が解決できることをして、それを最小にすると言っています。これは菅首
相が昔出したマニフェストのスローガンです。しかしその頃と今の「最小不幸」
の定義は違います。今の「最小不幸」は政治が課題に関して取り組まないため
にみんなが不幸になっています。若い世代は将来の展望を持てないのです。社
会保障がどうなるのか、この国がどうなるのか、自分の人生が分からない。政
治が国民を不幸にしているという課題にこそ、菅首相が取り組まなければなら
ないのであって、「最小不幸」は国民の中の一部の人たちが困っており、それ
を助ける、というような甘い考えでは困ります。

―なるほど。当時はいわゆる所得が低い層にある程度社会福祉や社会保障が整
 っていた時代の「最小不幸」とは対照の大きさが違うのですね

そうです。これまでの政治が課題から逃げ続けたためにここまで国民を不幸に
してしまったのです。だとすれば菅首相は「強い経済、強い財政、強い社会保
障」について答えを出さないといけない。それを出して選挙をするのが筋です。
それくらい今回の選挙では、国民が見ている視線の重さや強さを、菅政権は感
じるべきです。言論NPOはまさにそういう視線でかなり厳しく評価をします。


文章は、動画の内容を一部編集したものです。
発言内容を全て見るには、動画を御覧下さい。
→ https://www.genron-npo.net/kudo/podcasting/post_10.html?mel=20100611 


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した。そして、昨年9月の民主党政権誕生後、初めての選挙が7月に行われます。
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政治や日本が直面する課題をどう見ているのか、緊急アンケートを行っていま
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