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■■■■ 言論NPO メールマガジン
■■■■ 2011年5月30日
■■■■ 発行:認定NPO法人言論NPO<https://www.genron-npo.net/>
【Topics】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「日本は原発から本当に脱却できるのか」
言論スタジオで3氏が日本のエネルギー政策について激論!
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言論NPOの工藤です。
いつも言論NPOの活動にご理解とご協力を下さり、ありがとうございます。
さて、言論NPOでは、5月23日、「言論スタジオ」に松下和夫氏(京都大学大学
院地球環境学堂教授)、明日香壽川氏(東北大学東北アジア研究センター教授
)、藤野純一氏(国立環境研究所主任研究員)をゲストにお迎えし、「原子力
に依存しないエネルギー政策は可能か」をテーマに議論を行いました。三氏に
よる議論では、現在稼働中の原発のみで電力需要を満たす可能性は十分にある
という点が指摘されたほか、中長期的には原発に頼らないエネルギー政策は十
分に可能との共通認識が明らかにされています。
少し長くなりますが、今回は「第2部 日本は原発から本当に脱却できるのか
」をお届けします。ぜひご一読いただき、ご意見、ご感想をお寄せいただけれ
ば幸いです。
皆様からのご意見、ご感想をお待ちしております。
▼当日の議論を動画でご覧頂く場合は、こちらから。
https://www.genron-npo.net/future/genre/cat185/518n.html
▼「第1部 原子力に依存しないエネルギー政策は可能なのか」をテキストで
読む場合は、こちらから。
https://www.genron-npo.net/future/genre/cat185/518n-2.html
▼「第3部 中長期的に原発脱却をどう進めるのか」をテキストで読む場合は
、こちらから。
https://www.genron-npo.net/future/genre/cat185/518n-4.html
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【第2部 日本は原発から本当に脱却できるのか】
工藤:それでは引き続き議論を行っていきたいと思います。政府は2030年まで
に原発を14基造るというエネルギー基本計画を見直しする、と決めています。
このエネルギー政策をどういう風に変えるのか、ということにいろいろみなさ
ん、悩むことがあるわけです。その際に原子力は電力の30%を供給しているの
で、それがなくなると大変なことになるぞとよく言われます。それが本当なの
かということをまず皆さんにお聞きしたいと思います。それから、ではどうい
う風にして原子力発電から脱却できるのかということが、二つ目のテーマにな
ります。
その議論をする前に、エネルギー基本計画というのはそもそも何で、政府がそ
れを見直すと言っているということはどういうことなのか、ということを藤野
さんから説明していただけませんか。
<エネルギー基本計画の見直しとは>
藤野:エネルギー基本計画というのは、経済産業省が取りまとめている2030年
までの日本のエネルギーの需要と供給のバランスをどうやって、やっていこう
かというのをシュミレーションして、有識者で決めて、最後閣議決定されてい
るものです。去年の6月に閣議決定されました。その中の1つとして、原子力
発電所を2020年までに新たに9基、2030年までに14基建設するというところを
ベースにしながら、再生可能エネルギーもある程度増やしますけど、あと石油
をどうやって確保していくとか、石炭をどうやって確保していくとか、そうい
うのを組み合わせていって、2030年の需要と供給がこういう風にバランスしま
すよ、という風に分析して、それを国の基本政策にしているというようなもの
です。
工藤:これは14基増やすということはエネルギーの比率から見れば、原子力の
利用はどれぐらいの比率になるのでしょうか。
藤野:発電の中で確か50%前後占めていたと思います。
工藤:ある意味で、それくらい日本のエネルギー政策は原子力中心に大きくド
ライブ、舵を切ったということですね。
藤野:その時はそうでした。
工藤:だけど、これを見直すというのは、要するに、原子力発電の新規を止め
るということと捉えていいのですか。
藤野:新規を全部止めるかどうかまでは分かりませんけども、2020年9基、20
30年14基と建てていく、という前提についてはメスが入るという意味だと捉え
ています。
<現状の原発抑制のままで大丈夫か>
工藤:なるほど。すると、本当にエネルギーの仕組みを変えないといけないと
いうことになります。まず1番目として原子力を30%使っているのをこれから
止めるとなると大変なことになっちゃうとよく言われているのですが、それに
ついてはみなさんどう考えていますか。明日香先生どうでしょうか。
明日香:今、原子力発電所はかなり止まっているのですが、みなさんそれほど
計画停電をやっていないですよね。なので、やはり脅しの部分があると思いま
す。
工藤:脅しね。大変だぞ、大変だぞ、という。
明日香:そうですね。プロパガンダという言葉はちょっとよくないかもしれま
せんが、それはあると思います。結局、夏の平日の昼の2時、3時に電力消費
量が極端に上がります、日本の場合は。そこの全体の電力をまかなうためには
、原発も必要だというような議論になっているのですが、そのピークをちょっ
とずらせばある意味で原発がなくても大丈夫だとはある程度は言えます。それ
が結局、省エネということになりますし、ピークは減らして他の所で消費を増
やせばいいので、全体的には電力消費量が変わらなくても、ピークが下がるこ
とによって、原発ないし発電所を建てなくていいっていうことは言えます。
工藤:ということは、新規をどうするかということと、今現在ある原発をどう
するのか、という問題があります。ただ、今も全ての原発が動いているわけで
はない。
明日香:もちろん、動いているやつもありますし、動いていないやつもありま
す。だから、そういう意味で今動いていないやつはなくてもいい、ということ
がある意味では言えるわけです。
工藤:なるほどね。すると、今の原発の稼働の状況下でもピークを移せば何と
かなるということをおっしゃっているのですか。
明日香:もちろん、それはどうやって移すかとか、安全を考えてバックアップ
の電源をどうするかとか技術的・制度的に解決することは考える必要はありま
す。ですが、不可能ということはありませんし、これから原発を14基、9基増
やすことに比べると、より現実的な選択肢かと思われます。
工藤:そうですか。今の意見に対して松下先生どうでしょうか。
松下:1つは今年の夏をどうやって乗り切れるか。もし乗り切れれば、それは
1つの社会的なシステムとして制度化していけば、まず第1に省エネルギー、
節電ですね。それで、できるということがわかれば、それを来年さらに拡大し
、進化させればいいということですね。それはもう現実に、いろいろな形で節
電が、いわばボランタリーなベースも含めて始まっている。それをもう少し社
会的に制度化してインセンティブを作る、とかそういうことでやっていく。だ
けど、長期的にはそれに加えて、過渡的措置としてLNGを増やすとか、省エ
ネをやるということと、再生可能エネルギー。
それから、今議論されているのはスマートグリッドという形で消費者と電力を
供給する側とが双方向でコミュニケーションして電力の需要を調整してピーク
をシフトする、カットするとかそういうことを組み合わせていけば、エネルギ
ーの転換はできるのではないかという風に思います。
<新しい原発建設はなぜ必要だったのか>
工藤:藤野さん、2030年までに原発を14基新設するということですが、どうし
てそれを新設しなければいけなかったのですか。原発の比率をそもそも上げな
ければいけなかったのでしょうか。
藤野:実はエネルギーの需要自体は、確かにまだ伸びますけど、大体もう飽和
状態で頭打ちです。そういう意味だと、先程の世界の事例に出ましたように、
日本だってエネルギー需要が落ち着いてきています。そういう中で、原子力発
電所を新しく建てる必要があるかどうかという所で議論があるのですが、石油
なり天然ガスなり化石燃料への依存度をどうやって減らしていくか。それから
、もう1つはCO2問題で、2030年にエネルギー基本計画で30%削減すると謳
っているのですが、それを実現しようとするとやはり原子力14基に頼ることで
そのかなりの部分あてにしていた、という意味で14基が想定に入っていました
。
工藤:ということは、エネルギーの需要量から必要なのではなくて、その構造
から、CO2を出す化石燃料への依存を変えたいというのが目的だったという
ことなのでしょうか。
藤野:それと、需要のスタイルの変化で電気の割合が今後増えていくというよ
うな予測がありました。今、オール電化というのもありますけど、家庭内での
電力化率というのですけど、電気の割合が増えているのですね。だから、需要
全体はちょっと減り気味だけど、電力の消費量は上がり気味という予測があっ
て、その中で老朽化する原子力の話もありますけど、それを原子力に頼ろうと
いうような狙いもあります。
明日香:老朽化する火力発電所もありますので、それをどう埋めていくのか、
という問題もあります。もう1つ、システムの問題として大きかったのは、電
力会社の電力確保を決める時に総括原価方式と言いまして、コストがかかれば
かかるほど、それにある一律の割合でマージンが上乗せされるので、発電所を
造れば造るほど儲かるのですね。なので、そういう意味では発電所を造るため
の需要も拡大しないといけない。どんどん電気を使ってくださいというのが電
力会社の本音だったのです。
工藤:発電所というのは原発じゃなくてもいいのでしょ。原発の方がいいので
すか。
明日香:原発は一度造ってしまうと、すごく儲かるのですよ。燃料コストがほ
とんどいらない、ほとんどいらないと言ったら変ですけど。
工藤:核分裂がどんどん連続していますからね。
明日香:かつ、一度造る時にはいろいろ国からのサポートもあり、壊す時にも
国のサポートがありますので、やはり、原子力発電所を造るということは電力
会社にも旨味があった。先程も藤野さんがおっしゃったように、地方でも旨味
があった。ある意味で誰が悪い、というわけではなく、もちろん全体で過疎対
策にもなりますし、電力会社の今の地域の特性を維持するような利益構造を維
持するようなシステムが今までずっとあった。それを壊すのはみんなタブーだ
と思ってとてもできなかったけど、残念ながら今回、こういう事故があってよ
うやく変わりつつあるのかもしれません。
<原発の電力供給自体を止められるのか>
工藤:基本的な質問に話を戻しますと、今現在の原子力発電をベースにした形
、まあ、さっきのピークをどう平準化するのか、という話もあったのですが、
その原子力で作った電気が供給されているわけですよね。それがなくなると、
普通の足し算と引き算で考えると、その30%分を他の所で埋めないと足りなく
なると普通考えるのですね。それについてはどうでしょう。
藤野:さっき明日香さんもおっしゃったのですけど、電気の使用量が減ってい
ますよね。確かに、経済活動も若干落ちているのかもしれませんけども、それ
以上に電気を使わなくても何とか生活できるということがわかった。省エネが
まず最初なのですが、省エネ、省電力というところで夏になると冷房需要が発
生しますのでまだまだ厳しい所もありますけど、まずはその2020年、2030年に
向けて先程そのエネルギー需要がフラットだと言いましたけど、もうちょっと
下げていける余地があるかもしれません。
工藤:それは経済活動を落とすということを前提にしていないのですか。
藤野:していないです。
工藤:普通の今までの日本の経済活動をベースにして、例えば、製造業も車が
あっても、なだらかに下げることが可能だって話なのですか。
藤野:そうですね。やはり、効率をいかに上げられるかですね。経済活動を上
げながらも、例えば、スウェーデンとかで起こっている例というのは、GDP
が相当増えていてもCO2は減っています。
松下:スウェーデンとかデンマークですよね。
工藤:つまり、経済活動を活発にしながら、CO2とかエネルギーの消費量を
減らしている。そういうモデルもあるわけですね。
藤野:あります。
工藤:すると、今、よく議論になっているのは、原発が大変なので、早く火力
発電に移さないといけないとかいろいろ議論されていますよね。それはほとん
ど意味がない議論なのですか。
藤野:いや、意味がないわけではなくて、今すぐに変われるものと変われない
ものがあって、省エネとかまたは電球をLEDにして白熱灯からエネルギーを
10分の1で済むようなものに替えるとか、そういうことは今すぐやることが大
事です。産業活動でそのスウェーデン・デンマーク型というのはかなり第3次
産業など、知識的な産業で都市の計画を作ったりすることでお金を作り出して
いるのですけど、やはり、第2次産業というかエネルギー投下型の産業という
のを、今後、どこまで日本の中に残していくのか。やはり、中国とか韓国とか
または東南アジアとかでそういうものがどんどん発達していっていますよね。
その中でどうやって競争力を持たせるか。今では第2次産業でも、かなり世界
の中でも省エネが産業になってきていますけど、元がやはりエネルギーをたく
さん使いますから、最終的にはそこも変わっていく。それはでも、10年、20年
のサイクルかもしれません。
工藤:今の話は凄く本質的な議論なので、確かに日本の産業構造はエネルギー
投下型から新しい構造、社会の仕組みに変えなければいけないということは、
考えないといけないのですが、その話はちょっと置いておいて、今の話を聞い
て驚いていたのですが、原子力発電が仮になくても、省エネとか何かの組み合
わせの中で、十分今の状況を維持していくことは可能だという理解でいいので
すか。
藤野:完全に可能かどうかということはありますけど、まず省エネで減らしま
すよね。その後、3年、5年または10年かけて再生可能エネルギーがそれを埋
め合わせていくというようなことを今、徹底的にやるしかない。
工藤:やっていけばできるっていうことですか。
明日香:火力発電所の中で、例えば、今まで使っていなかった火力発電も使い
始めていますので、そういう意味では...。
工藤:使っていないやつを使うってどういうこと。もう一回火をいれて動かす
ということですか。
藤野:止めていたのを動かすだけです。
工藤:それは可能ですか。
藤野:可能です。今、それはやっています。
松下:自家発電のようなものなので。
藤野:それをやっているから今、大丈夫なのです。
工藤:ああ、そうなのですか。
藤野:ある意味で発電所はたくさんあって、おおざっぱなのですけど、2割~
4割ぐらいは動いていないのですよ。
工藤:私も他の人の議論とか本とか読んだのですが、発電の設備容量というの
ですか、それベースで見れば別に原発がなくてもエネルギーの需給が見合って
いたという、線を描いている図がよくあるのですが、あれは本当なのですか。
そういう風に見ていいのですか。
明日香:まあ、ギリギリくらいだと思います。だから、ある程度安全マージン
を取っておく必要はあると思います。ですが、結局、計画停電はなかったです
し、これから省電をどうするかにもよるのですが、ある意味では、原子力発電
所がなくても今、止まっていた火力発電所を稼働させることによって、需要は
キープできると。
工藤:今のお話を聞いていると頭の構造を変えなければいけないのですが、原
発にこだわる理由がわかりませんよね。
藤野:やはり、安いのですよ。動いているやつをそのまま動かすことは。
松下:電力会社にとっては世界でも断トツに安い。それから、原発の場合は24
時間フル稼働していますから。止めることはできないので、夜間も余剰電力を
使うわけです。
工藤:使わないといけない。
松下:それで、オール電化の家を造るとか、夜間電力で揚水発電といって夜の
間に水をダムの上に上げておいて、昼間また落とす。すごくロスが多いのです
が、原子力発電は揚水発電とセットにしないと、電力需要の調整に対して対応
できない。そういう弱点があります。
<今動いている原発を全て止めても本当に大丈夫か>
藤野:ただ、話を元に戻すかもしれないですけど、今、停まっているものとま
だ動いているものは区別して考えなければいけなくて、今動いているものをあ
る程度まで動かし続けるか、それともそれも止めるかどうか、というところは
考えないといけませんし、そこまで止めてしまうと僕は相当厳しいと思います
ね。
工藤:つまり、今、動いている原発っていうのはそもそも何基あるのですか。
藤野:54基。
工藤:そのうち、今、動いているとなると。
明日香:半分くらい。
藤野:今、定期点検とかに入っているのもあるので、半分くらいでしょうか。
工藤:じゃあ、半分は動いているのですね。
藤野:ただ、今は電力需要が季節的には一番低い時です。最近暑くなってきた
ので需要が上がりつつありますし、地震の時も暖房需要が必要だったので、そ
の時に計画停電のようなことが起こって不幸だったのですが、その後はずっと
計画停電がないというのは季節がよくて、エネルギーをあまり使わなくていい
季節だった。
工藤:ちょっと涼しいですからね。
藤野:それが暑くなって30度とか越えてくるとやっぱり暑いですし、今、早い
段階で暑くなっているのでちょっとそこは心配です。
工藤:なるほど。原発の稼働が今のままであっても、夏になるとピークの時は
厳しいので、それはさっき明日香先生が言ったようにピークをちょっと移動し
たり、色々な形でできるのではないかと。しかし、今、動いているところも止
めるという話になるとちょっと厳しいのではないかということですか。
明日香:もちろん、色々な人がいるのですけど、今、動いている原子力も全て
止めるべきだ、という人はそんなに多くないと思います。
藤野:まあ、それも議論すべきだと思います。
工藤:議論はどんどんしていきたいのですが、今、あるものを停めるというこ
とになるとどうなるのですか。
藤野:今、動いているものを止めるとなると、それぞれの所で、今、東京電力
管内の所だけで節電のトライアルをしていますけど、今度は中部でもそういう
話があります。中部の方は浜岡だけなのでまだ関東ほどは深刻ではありません
が、それぞれでそういうことが起こっていきます。
明日香:日本の場合、もう1つのシステムなんですけど、地域独占で1つの電
力会社が地域ごとに固まっているのですね。中部電力というのは、原発への依
存度は多分1割くらいです。省エネをすればある程度できるのですが、他は難
しい所もある。場所によって違います。そこで融通できないというまた別の問
題があります。
工藤:ありますよね、周波数の問題が。ということは、今のところを変えると
なると色々な問題があるかもしれない、ということが少しわかったけども、そ
れに対していろいろな対応策が考えられるということなのでしょう。じゃあ、
ちょっともう一回休息します。
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しの議論につなげたいと考えています。そして、今回の復興に何が問われてい
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