「政治の崩壊」を有権者はどう直視すべきか アドバイザリー・ボード会議における議論を公開中

2011年6月16日

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【Topics】━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「政治の崩壊」を有権者はどう直視すべきか
    ~アドバイザリー・ボード会議における議論を公開中~

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いつも言論NPOの活動にご理解とご協力を賜り、ありがとうございます。
言論NPOでは6月2日、言論NPOのアドバイザリー・ボード会議を開催し、
増田寛也氏(野村総研顧問)、宮内義彦氏(オリックス株式会社 取締役兼代表
執行役会長グループCEO)、武藤敏郎氏(大和総研理事長)が現在の政治状況に
ついて議論を行いました。

議論が行われたのは、奇しくも菅首相に対する不信任決議案が提出、否決され
るまさに直前。3氏は現在の政治状況をどう見たのか。ここでは議論の抜粋を
ご紹介しますので、ぜひご覧ください。

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「政治の崩壊」を有権者はどう直視すべきか
    ~第2回 言論NPOアドバイザリー・ボード会議~
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まず、最初に、今の政治の現状について、みなさんはどのように判断している
のか、ということから始めたいのですが、増田さんお願いします。

増田:今、日本が抱えている危機は、4つか5つぐらいあるわけです。津波被
害、その被害を受けて、サプライチェーンも寸断されました。経済が非常に打
撃を受け、途方もない被害が出ています。それから、原発の事故。東だけでは
なく、西日本を含めた途方もなく電力が喪失される可能性がある。それから風
評被害。こういった危機の時には、強い政治が求められていると思うのですが
、それに対して、今の政治は全く対応できない。
 ただこれらは3月11日によって危機が生じたわけではなくて、実は、それ以
前から非常に大きな問題を抱えていた。3月11日を経て、様々な問題が顕在化
して、日本の政治の弱さが明らかになった。こういうことだと思います。
 現状をそう捉えたときに、私は政治に直接言いたいことが山のようにありま
すけど、結局、最後は、我が身の不明を恥じるしかない。我々がたった2年前
に政権交代によって選んだ政権です。それが、今はこんな体たらくだと。それ
を単に、おかしい、おかしいといっただけでは、本当の意味での責任は出てき
ません。私は、我が身の不明を恥じるということに結局戻らなければいけない
と思います。端的に言えば、今、色々政治のゲームにうち興じている政治家に
は、二度と国政を託したくないな、というのが率直な思いです。


〈問われているのは、この国の「統治の崩壊」〉


宮内:震災によって色々なことが顕在化したという、増田さんの話はその通り
だと思うのですが、その中で、政治というものが何だろうなということを考え
ますと、1つは統治機構という形、もう1つは、統治機構の中で政治を行うの
は、具体的に言うと、政党なのですね。そして、政党の思いを実行するのが行
政なのです。そういうものが、うまくつながっていないと政治というのは動か
ないのだけれども、私はそれらが潰れてしまっているのではないか、と思えて
なりません。
 まず、統治機構の形ですが、考えてみると1947年施行の新憲法の時から形は
変わっていないわけです。その後、世界はもの凄く変わりました。同じ頃に戦
争に負けたドイツでさえ、東西統一以降も憲法を十数回改定しています。日本
は硬い統治機構で、結局、総理大臣は大臣間の議長みたいな立場でしかないと
。終戦直後は、権力の分散がいいことだということでやっていたのが、分散し
過ぎて、誰が責任をとるのかがわからない。日本は総理が悪いというけれども
、本当は統治機構が悪いのであって、総理に権力を持たさなかった、というこ
とではないかと思います。いずれにしろ、統治の形を変えないといけないとい
うことが1つです。
 それから、2つ目ですが、その形を実行するのは政治家であり、その集団が
政党だということになると、政党の在り方が問われなくてはならない。
 今の政権政党は本当に政党なのだろうかと。言うなれば、綱領のない政党で
す。綱領がないのに集まるというのは何なのだろうか。この指止まれというけ
ど、何に止まっているかわからない、いわゆる烏合の衆なのです。綱領がない
政党はあり得ない。綱領らしきものはマニフェストということで選挙を戦って
きたけれども、勝った途端にそこに書かれたものはどれもこれもダメだと言わ
れている。自民党もそうだったし、今の民主党も政治を行うには相応しくない
集団になっているのではないか、というのが実態だと思います。これは、全て
やり直さなければいけない。

 私は政治と行政がぴったりとくっつかないとうまくいかないと思っています
。政治は国のグランドデザインをつくり、そして方向性を定めて、必要な法律
の手当をして、行政にやりなさいと指示する。そして、行政がきちんとやって
いるかどうかをチェックする。このサイクルができないといけないのですね。
現在の政治と行政の関係はそうではなくて、政治主導というものが出てきて、
ものの見事にうまくいっていない。だから、行政の方は、何をしたらいいかわ
からない、あるいはやるなと言われている。この統治機構、政党、政治と行政
の3つが、その全部がダメだと。でも、そういう政治を選んだのは国民なので
すね。だから、我々も国民の1人として情けないし、責任ある国民として少し
でも変えないといけないと思います。


〈この局面は国民に信を問う段階ではないか〉


工藤:今のままでいけば、この国の政治は混乱して、混迷を深めていくという
風にしか見えないわけです。僕は、政治が国民の信を問わざるを得ないという
局面になっているように思います。ただ、そのためには衆議院の一票の格差の
問題がある。そうすると、最終的に、国民の信を問うということを1つのエン
ドとして、その間に何をして、どういう風な仕組みをつくっていくことが必要
なのでしょう。武藤さん、どうでしょうか。

武藤:最も望ましくて、かつ可能なシナリオは、最終的には選挙をするべきだ
と思います。そうでない限り、この問題は整理がつかないと思います。
しかし、今は、先程、増田さんがおっしゃったように、色々な意味で選挙が非
常に難しい。そうすると、不信任案が可決されるにしろ、可決されなくて党が
分裂したとしても、本格的な政権が見えてこないので、何らかの意味で、選挙
までの暫定的な政権をとりあえずつくる。それで、きちんと選挙をする。その
時が勝負になって、そこから新たな政治に転換していく、というのが最も望ま
しい姿ではないかなと思います。
いきなり、現状のままの政治が、新しい、望ましい政権をつくってくれるとい
う風に期待することは、無理があるのではないかと思います。

工藤:その期間にやらなければいけないことは、復興とその財源、それから衆
議院の定数の是正ということでしょうか。

武藤:選挙ができる環境整備をすること。それから、復興については、私は(
選挙があっても)できると思います。色々な問題はあるかもしれないけど、こ
の復興が命取りになって政治がおかしくなるということにはならない。極端な
話をすれば、別に首相がどうであれ、政治がどうであれ、日本国民は必ず乗り
切っていくと思います。その程度のまとまりと、知恵と力はあると思います。
ですから、震災を全ての理由にして、政治の動きをそれによって封じてしまう
ことは、適当ではないと思います。その他にも、(政治が混乱して)経済がど
うなるのだという声もあるけれども、震災前から製造業のなかには海外に出て
行こうかと思っていた企業はかなりあったわけです。震災が起こって、じゃあ
本気で考えようか、という感じで背中を押されたところはあるけれど、その程
度の変化だと思います。
海外移転なんかは、何年も前から言われていることです。それをあたかも震災
のせいにするというのはよくない。

工藤:一部メディアの主張を見ていると、今、こういう震災で大変だから、オ
ールジャパンで力を合わせなければいけない。選挙なんてとんでもない、とい
う見方です。

武藤:それは、現状維持派を前提とすれば、その論理は正しいのですが、そこ
から攻めても、望ましい答えは出てこないと思います。
工藤:どちらにしても、日本は今の政治構造を変えなければならず、課題解決
からは逃げられない、ということです。増田さん、どうでしょうか。

増田:今日、不信任案が可決されても、否決されても、政治空白ができる。可
決されなくても、統治能力を完全に失っているわけですから、震災の対応後に
退陣といっても、だったら早く辞めろよ、という声が強まるに決まっています
。どちらにしても政治空白の状態は起きると思います。
 おそらく、この2年間は正当な選挙はできないだろう、と。だから2年間、
この結果は甘んじて受け入れるしかないと私は思います。
 ただ、今、お二方からも出てきていましたが、いつの時期か、選挙でもって
解決していく他はないと思います。選挙によって解決するしかないのですが、
それまでの期間で、どういう人が首班になるかは別にして、解決するべき課題
、それは今回の大震災に伴う課題を羅列するだけではなくて、そもそも課題解
決を迫られていた社会保障の問題などの根本的な問題、それから大変重要な原
子力の扱いをどうするか。自然エネルギーは頼りになるエネルギーなのか、と
いう問題について、緊急性のあるものから片っ端から片付ける。
そして、次の選挙で国民に何を問うのか、ということを整理する期間とするし
かない。今までのような曖昧な問い方ではなくて、国民にきちんと覚悟を迫る
ような政治側の迫力を出さないと、もう政治は持たないと思います。

工藤:今、不信任を出されてしまっている菅政権が、みんなと一緒に、また暫
定的にやりましょう、ということがあり得るのでしょうか。
 

〈国民は4年間を白紙委任したわけではない〉


工藤:武藤さん、さっきの暫定というのは、そこまで広い概念ですか。今の、
社会保障から含めた課題解決ではなくて、あくまでも震災の復興についてです
か。

武藤:本当は、一刻も早く選挙をするのが望ましいと思います。だから、任期
満了選挙は当然あるのだけど、可能であればその前に選挙をするべきです。

増田:本当にまやかしだと思います。半年以内に、第二次補正予算案や公債特
例法案とかだけ通して、それで辞めますみたいな話ならわかるけど。1つ付け
加えれば、それだけ広い課題をやって暫定政権なのかという話なのだけど、2
年の間に社会保障だって解決しないと間に合わないわけです。選挙ができるよ
うな状況であれば、公債特例法案とか震災でも二次補正ぐらいだけパッとやっ
て、後は退いて、選挙で信を問え、ということになりますが、衆議院の一票の
格差をめぐる定数の是正でも1年以上かかります。

工藤:宮内さん、今までの議論を踏まえていかがでしょうか。

宮内:増田さんはお若いな、と思います。2年間辛抱して待つということは、
私のように歳をとってしまうと、2年は待てないなと思うわけです。

増田:それは、宮内さんこそお若い...。

宮内:2年間待つのかという話なのですが、先程言いましたけれども、メディ
アは、政治的な空白をつくるな、という論調です。しかし、それは本当かなと
思います。確か、第二次世界大戦の最中に、イギリスで総選挙をやって政権交
代をして、チャーチルは負けているのですよ。だから、国が戦争をしている時
でも、そういうことをするというのが民主主義であるとすれば、政治的空白と
いうのは、あまり議論に乗せるべきではないのではないかと。必要であれば、
解散もある。必要であれば、政権の枠組みの変更もあり得るということで、私
は、衆議院選挙で4年間どうぞ、という白紙委任をしたのではないと思ってい
ます。そして、やはり総理には解散権がありますから、解散も1つの方法とし
てあり得ると思います。
 それから、私は、これだけの混乱状態であれば、解散は早くするべきだろう
と思います。その前提として、やはり定数是正をやる。それから、最低限の震
災対策の法案を通す。これは、やる気があれば1カ月、2カ月でできるのでは
ないかと思います。そうして、解散をする。そうすると、実際に震災復興にし
ても、手段さえ与えておけば、行政能力はあるわけですから、きっちりやって
くれると思います。
 私は、これだけ政党政治が崩れている状況になっているのであれば、残念だ
けれども、国民が気付くまで、何度も解散しながら、政党というものをつくり
上げていくということをしないと、本当の2大政党にはならないと思っていま
す。しかし、前の自民党も相当ひどかったけれども、民主党がこんなひどい政
党とは思わなかった。
 2年前、国民の大部分は、自民党よりひどい政党はないだろうと思って民主
党を選んだのに、もっとひどいのが出てきた、という感じですよね。ですから
、今を底にして、国民に何度も何度も考えてもらうというプロセスを続けてい
かないと、日本の民主主義は変なことになってしまうのではないか、と思って
しまいます。


▼議論の全容はこちらから↓
https://www.genron-npo.net/future/genre/cat142/post-145-2.html


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【オープンフォーラム 申し込み受付中!】
 「日本の政治、このままでいいのか
           ~私たちは政治を『白紙委任』したわけではない~」
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言論NPOでは、6月30日(木)、佐々木毅氏(学習院大学教授)、宮本雄二
氏(前駐中国特命全権大使)、松井道夫氏(松井証券株式会社代表取締役社長)
をお招きし、「日本の政治、このままでいいのか ~私たちは政治を『白紙委
任』したわけではない~」をテーマに、オープンフォーラムを開催いたします。

この国の政治や民主主義に対する強い危機感を持つ3氏を迎え、皆様と共に
議論を深めてまいりたいと考えておりますので、お知り合いの皆様もお誘い
合わせの上、ぜひ、皆様にもご参加いただければ幸いです。

ご参加をご希望の場合は、下記詳細をご確認いただき、言論NPO事務局まで
お申し込みください。

たくさんの皆様のご参加をお待ち申し上げております。


-----------「言論NPO主催 オープンフォーラム」開催概要---------------

◆日時  2011年6月30日(木) 19:00~20:30(開場/18:30)

◆会場  都内会議室/宴会場  ※決定次第、お知らせいたします

◆テーマ 「日本の政治、このままでいいのか
          ~私たちは政治を『白紙委任』したわけではない~」

◆ゲストスピーカー
  ・佐々木毅氏(学習院大学教授)
  ・宮本雄二氏(前駐中国特命全権大使)
  ・松井道夫氏(松井証券株式会社代表取締役社長)

  司会:工藤泰志(言論NPO代表)

◆ご参加費 3,000円(予定) ※当日、会場にてお支払い下さい。

◆お申込方法
下記フォームにご記入いただき、言論NPO事務局(info@genron-npo.net)
宛にお申し込みください。

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・ご氏名(フリガナ)【必須】:
・PCメールアドレス【必須】:
・ご所属:
・部署/お役職名:
・ご住所:
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※事務局にて確認後、確認メールを送付させていただきます。締切を過ぎても
届かない場合は、大変お手数ですがご連絡をお願いいたします。

◆申込期限  2011年6月27日(月)

◆お問い合わせ
言論NPO事務局(Tel:03-3548-0511/担当:山下・宮浦)

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