【産経新聞】 マニフェスト格付け 民主の「方向性」評価 財源明示自民に注文

2004年5月13日

2004/05/13 産経新聞

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低い進捗度・雇用対策…与党に辛く
「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)の政権公約検証第一回大会では、経済同友会や連合など六団体が、各政党のマニフェスト(政権公約)の内容や達成度について独自の視点で格付けした結果が公表された。昨年十一月の衆院選で、いち早く「マニフェスト選挙」に着手した民主党を評価する一方、国のビジョンや政策目標達成のための財源の明示を求める注文も多かった。

 


≪経済同友会≫

自民、公明、民主の各党別に表現の「充実度」、同会の考え方との「合致度」で分析、民主を最も高く評価した。

自民には「国の将来像が明確ではなく、政策目標と達成手段も不明確」と注文をつけ、重点政策に具体的な財源などを盛り込む必要を指摘。公明には「構造改革への言及が乏しく、国民への負担の議論を避けている」と批判。自公に「連立政権としてのマニフェストの策定」も求めた。

民主については期限を設けて政権交代に向けた施策を明示し、マニフェストに基づく独自の予算案を策定したことを評価。「方向性はおおむね賛同できる」とした。

≪連合≫
社民を含め、マニフェストを作成した四党を比較、「(日本を)どのような形にしようとしているのかビジョンを示す努力がみられた」と、野党に軍配を上げた。

民主については、特に雇用対策に高得点をつけた。「雇用拡大、失業率引き下げの方針」を明確にし、地域雇用創出やワークシェアリングの推進を掲げた点を理由に挙げた。また、雇用に関する記述が多い社民も「具体的な政策目標が列挙してあり、最も充実」と評価した。与党には手厳しく、自民には「(十五年度)補正予算でも十六年度予算でも、雇用対策の具体策は講じられていない」と烙印(らくいん)を押し、「五百万人雇用創出」を掲げた公明にも「規制改革による成り行き任せ」と政権党としての資格に疑問を投げかけた。

≪言論NPO≫
有識者らでつくる「言論NPO」は内容の妥当性と実際の進捗(しんちょく)度を中心に自公を比較。百点満点形式で四十項目を採点したが、平均点は自民が36・1点、公明も31・9点といずれも落第点だ。

評価が高かった項目は、自民が「歳出削減、予算改革」の65点、公明は「司法制度改革」の70点。自民の道路公団改革は40点、年金改革は20点にとどまるなど、大半が50点を下回った。

マニフェストに書き込むべき問題でも、選挙対策上有利ではないものは排除されていることも批判している。

≪全国知事会≫
マニフェストの今年度予算への反映に注目、政権公約評価研究会が自公の達成度を分析した。

地方自治体の最重要課題である国と地方の税財政「三位一体」改革で、自民は「地方の行財政運営に支障が生じないよう適切な財源移譲を行う」と明記したが、税源移譲額が国庫補助削減額を大幅に下回ることなどを指摘、「地方の行財政運営に大きな影響が出ており、重大な公約違反」と切り捨てた。

≪構想日本≫
非営利独立のシンクタンク「構想日本」も、政府・与党がマニフェストの施策をいかに予算案や法案に反映、実行案を策定したかを検証。自民の達成度は「計画などの作成」が38%、「法案・予算案の提出」が20%、「公約の実現」は10%と低い評価となった。

≪日本総研≫
「小泉改革」に対象を絞り、特殊法人改革、三位一体改革、年金改革の三点について達成度を評価。特殊法人改革について「独立行政法人への組織変更が大半で改革効果は限定的」と指摘、年金改革も「国民の安心を確保するには至っていない」と結論づけた。

≪額賀氏「政権担当 具体的には…」≫
≪北川氏 公約統一「次は考える」≫
≪枝野氏 3党合意「矛盾しない」≫
政権公約検証大会での自民、公明、民主三党との意見交換では党によって対応がわかれた。

自民党の額賀福志郎政調会長は「自民党のマニフェストは数値目標や期限などが不明確で、抽象的な表現が多い」(工藤泰志・言論NPO代表)との指摘に対し、「政権を担っている以上、具体的には書けなかった」と反論。昨秋の衆院選後に重点政策推進委員会を設置して、マニフェスト達成状況の検証に取り組んでいることを強調した。

公明党の北側一雄政調会長は「(自民、公明両党は)連立政権として公約を統一すべきだ」との経済同友会からの注文を受け、「(党内で)自民党と一緒につくるべきだとの意見もあったが時間がなかった」と述べ、「次の衆院選では考えないといけない」と検討を約束した。

また、民主党の枝野幸男政調会長は、年金制度改革関連法案の衆院通過にあたり、自民、公明両党との合意形成に動いたことについて「われわれの考え方に近づく部分に賛成することはマニフェストに矛盾しないと思っている」と釈明。そのうえで「次の衆院選では国民に支持されるマニフェストを示すことが大事」と述べ、次期衆院選でもマニフェストに積極的に取り組む姿勢を示した。

2004/05/13 産経新聞