田中 弥生

田中 弥生氏発言

 私は言論監事というお役目を預かって、仕事をさせていただいています。言論NPOの活動の政治的な中立性を証明するには、どうやったらよいのだろうかということで、私のところに相談にいらっしゃったのが工藤さんでした。

 政治的な中立性などというものはだれにも説明できないわけです。しかし、たまたま米国の内国歳入庁が非宗教性、非政治性をチェックするシステムを持っていて、それを言論NPO版と言うのでしょうか、日本版につくらせていただきました。

 世紀の大転換といわれる政権交代が起こりました。新政権に対する人々の期待は大きいのですが、政府も新しい動きをつくるべく、様々な社会実験を行うでしょう。それは成功することも失敗することもあると思いますが、それを正常な方向に向けるべく、牽制する機能を発揮するのは個々の有権者、市民からなる市民社会です。まさに健全な市民社会なくして健全な政府は育たないのです。それ程、市民社会のあり方が問われているということです。

 言論NPOは新たに「市民を強くする言論」サイトを立ち上げることになりました。まさに時節を得たプロジェクトです。大いに期待するとともに、私も参加者の一人として頑張りたいと思います。

田中 弥生
独立行政法人大学評価・学位授与機構教授、NPO学会会長


東京大学社会基盤学専攻 寄附講座国際プロジェクト助教授、(株)ニコン、笹川平和財団、国際協力銀行をへて現職。国際公共政策博士(大阪大学)、政策メディア修士(慶応大学)。外務省ODA評価有識者委員、内閣府公益法人制度改革委員会有識者委員、政府税制調査会特別参考人、参議院行政改革委員会 参考人などをつとめる。日本NPO学会会長。専門は非営利組織論と評価論。ピーター・F・ドラッカー氏に師事。主な著書に『NPOと社会をつなぐ ~NPOを変える評価とインターメディアリ~』(東京大学出版会 2005年)、『NPO 幻想と現実 ~それは本当に人々を幸福にしているのか』(同友館、1999年)、『アジアの国家とNGO』(重冨真一編、分担執筆、明石書店2001年)、訳書にドラッカー・スターン著『非営利組織の成果重視マネジメント ~NPO、公益法人、自治体の自己評価手法~』(ダイヤモンド社、2000年)、『NPO新時代―市民性創造のために』(明石書店、2008年)ほか。