松下 和夫

松下 和夫氏発言

言論NPOに期待する

 2009年秋の政権交代によって、大きく変わった政策分野のひとつが環境政策である。鳩山首相は、マニフェストに基づき、就任直後に温室効果ガス削減中期目標(2020年までに25%削減)を国連総会で表明した。しかしこの目標を達成するための整合的な政策体系の姿と優先順位はいまだ明らかではない。また昨年12月のCOP15では、国際社会は京都議定書に続く新たな国際的枠組に合意することはできなかった。一方世界的な低炭素社会への移行は不可避であり、そのためにわが国としても環境政策と成長政策とを統合した国家戦略の策定が急がれる。

 これらの課題に答えていくためには、具体的な政策提言とその内容に関する情報の公開と共有、そして専門家や利害関係者を含む市民社会での建設的な意見交換と、そのための公論形成の場の役割がとりわけ重要である。言論NPOはこれまで継続的にマニフェストを検証・評価してきた数少ないフォーラムである。


松下 和夫
京都大学大学院地球環境学堂教授 国連大学高等研究所客員教授


1971年東京大学卒、環境庁(環境省)、OECD、国連地球サミット(UNCED)上級環境計画官、(財)地球環境戦略研究機関等を経て現職。国際協力機構(JICA)環境ガイドライン審査役、(財)国際湖沼環境委員会理事なども兼ねる。持続可能な社会を構築するための環境政策を、環境ガバナンスの観点から研究し提言。主な著書に「環境政策学のすすめ」(丸善株式会社、2007年)、「環境ガバナンス論」(京大学術出版会、2007年)、「環境ガバナンス~市民・企業・自治体・政府の役割」(岩波書店、2002年)、「環境政治入門」(平凡社、2000年)など。