対中国を明確にした日米関係で日本は独自戦略を組み立てられるか 緊急座談会

2021年6月16日

4.png 言論NPOは5月21日、今後の日米関係に関して日本総合研究所国際戦略研究所理事長の田中均氏、前自衛隊総合幕僚長の河野克俊氏、慶應義塾大学総合政策学部教授の神保謙氏の三氏と座談会を開催しました。司会は言論NPO代表の工藤泰志が務めました。

 この中で三氏は、4月に行われた菅首相とバイデン米大統領による初の日米首脳会談の後に発表された共同声明が、「対中国」を明確にしたことで、日米関係を大転換させたという認識は一致しましたが、今後の日本の対応については日本独自の戦略の形成に関して意見が分かれました。

 河野氏は、日本が世界の安全保障の最前線に立ったことの歴史的な意味を説明しましたが、田中氏と神保氏は経済的な観点から日米間には国益の違いがある以上、中国との関係については、単に米国に追従するのではなく、自ら独自に考えていかなければならないとの考えを強調しました。

 中でも田中氏は、クリントン・橋本時代の「アジア太平洋」概念と同じように中国を取り込んだ地域協力の戦略が必要になると語りました。

 緊張が高まる台湾海峡についても田中氏は、日中国交正常化以降、日本の立場は平和的解決で一貫しており、そのためにも中国との信頼醸成も含めてトータルな外交努力が不可欠と主張しました。一方、河野氏と神保氏は外交力の必要性は認めたものの、中国の軍事力の増強に伴う米中間の軍事バランスの変化を踏まえ、抑止力の向上のためにも米国の行動に加え、日本の安全保障に関する投資も必要になると強調しました。

 注目を集める「インド太平洋」については、河野氏は海洋法に違反する中国の行動は抑止する必要がまずはあるとしつつ、そこをクリアすれば中国も含めた経済繁栄が実現できると語りました。神保氏は日米豪印だけでなく欧州も加わったことで、国際的な規範形成という点では、このインド太平洋はグローバルな意味を持つようになったとこの地域の重要性を強調しました。

 最後に日本自身が今後なすべきこととしては、米国との戦略協議や安全保障上の役割の拡大といった点に加え、神保氏は、日米関係は転機を迎えており、日本の外交・安保戦略を早期に作り、「衆院選で堂々と国民の信を問うべき」と語りました。

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