様々な階層で起こった断層をつないで議論し、成果を政治や経済に反映させる取り組みに期待
~言論NPOが20年で果たしてきた役割と、期待すること~
(聞き手:工藤泰志)
工藤泰志:この20年間、言論NPOが日本や世界で果たしてきた役割について、田中さんはどのように見ておられますか。
田中達郎:現在、気候変動や格差問題をはじめとして国境を超える課題は世界で山積みとなっています。しかし国家同士の議論の場合、互いに国益を背負ってしまいますから、どうしても対立しがちです。
その点、国益を背負わない民間同士であれば、議論をしやすい。言論NPOは国際情勢が大きく揺れ動く中でも、「勇気あるリベラリズム」、「ぶれない民間外交」を追求し続け、民間有識者同士が議論する場を作り、提供し続けてきた。ここに大きな意義があったと思います。米国の外交問題評議会(CFR)、イギリスの王立国際問題研究所(チャタムハウス)をはじめとする世界のシンクタンクもそのように評価していると思います。
工藤:今後の言論NPOに対して、どのようなことを期待されていますか。
田中:より大きな役割を果たしてほしいと思いますが、そのためには3つのミッションを達成する必要があります。まず、対外認知度を上げること。日本の民間外交の窓口といえるほどの存在になってほしいですね。
次に、対内認知度も上げることも必要です。最近、特に若い世代の中で考え方の二極化というものが顕著になっている気がしています。日本の自由や民主主義、資本主義、平和主義などが揺らがないようにするためには、言論の力でいろいろな人々を巻き込みながら市民社会を強化していく必要があります。そのためには国内の知名度を上げていく必要があります。
最後に、断層をつなぐこと。現在、有識者と市民、グローバルとローカルなど様々なところに断層が生じているように思います。言論NPOがこうした断層をつなぐ場を作り、そこでの議論の成果を政治・経済に反映させるような取り組みをしてほしいと思います。