【座談会】道路公団改革を日本の将来設計の中で組み直す

2003年1月04日

hasegawa_t020327.jpg長谷川徳之輔 (明海大学教授)
はせがわ・とくのすけ

1936年生まれ、1959年東北大学法学部卒。建設省、(財)建設経済研究所常務理事などを経て、1995年より現職。2000から2001年までケンブリッジ大学土地経済学部客員研究員として、『80年代と90年代の不動産金融危機』の国際比較を研究する。主な著書に『東京の宅地形成史』『不動産金融危機最後の処方せん』等。

hayashi_yo020906.jpg林良嗣 (名古屋大学大学院教授)
はやし・よしつぐ

1951年生まれ。名古屋大学工学部土木工学科卒業、東京大学院土木工学専攻博士課程修了。東京大学講師、名古屋大学助教授を経て、現職に至る。運輸政策審議会委員、世界交通学会理事兼ジャーナルエディター、シドニー大学交通研究所外部評価委員、JICAバンコクおよびハノイ都市交通計画等策定調査委員長等、国際的なリーダー役を努める。土木学会論文賞等、国内外6つの賞を受賞。主な著書は『The Environment and Transport』『地球環境と巨大都市』等。

matsutani_a021209.jpg松谷明彦 (政策研究大学院大学教授)
まつたに・あきひこ

1945年生まれ。69年東京大学経済学部経済学科卒業。70年同学部経営学科卒業後、大蔵省入省。主計局調査課長、主計局主計官、横浜税関長、大臣官房審議官等を歴任。97年大蔵省辞職後、政策研究大学院大学教授就任。専門分野はマクロ経済学、財政学、金融論。主な著書は『人口減少社会の設計』『社会資本の未来』等。

yokoyama_y020422.jpg横山禎徳 (社会システムデザイナー)
よこやま・よしのり

1966年東京大学工学部建築学科卒業。設計事務所を経て、72年ハーバード大学大学院にて都市デザイン修士号取得。75年MITにて経営学修士号取得。 75年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社、87年ディレクター就任。89年から94年に東京支社長を務める。2002年6月退職。主な著書に『成長創出革命』、『マッキンゼー合従連衡戦略』、その他訳書、論文多数。東北大学、一橋大学大学院で非常勤講師も務める。

概要

日本の高速道路建設は、80年代にシビルミニマムを達成しており、高度成長時の計画のギアチェンジ、過去の膨大な債務の処理が必要である。日本の将来像をふまえたシステム設計の変更が問われる中で、道路公団改革はどのように進めるべきなのか。3人の大学教授と元コンサルタントが議論を交わした。

要約

道路公団の問題の原因について、横山氏は、20年前に基本的な生活水準を支えるインフラ整備を終え、シビルミニマムを達成した後も、それまでと同じように道路建設を続け、経済合理性が失われたためと述べた。林氏は、発展途上では機能を発揮した財政投融資が時代に合わない制度になったと指摘。また土地利用のずさんさが道路行政にしわ寄せされてきたとの認識も示した。

では、どのような考え方で改革すればいいのか。松谷氏は、人口が減少し高齢化が進む日本の経済、社会の動向を見極めた上で、中長期的な視点から道路問題を論じるべきだと主張。長谷川氏は、行財政改革、公共事業全体の中で位置付け、どこにプライオリティー(優先順位)を置くかを議論する必要があるとした。

ただ、道路公団の膨大な借金をどうするかという差し迫った課題がある。これについては国民負担は仕方がないとの意見で一致した。経済の低成長を考え、「次の世代へツケ回しをしてはいけない」(林氏)。道路の建設費だけでなく維持管理費もかさむため、新規の道路建設をやめるとともに、既に建設している道路についても、凍結するものも出てきていいとの見方だ。

地方に権限、予算を移譲することでも一致した。道路建設を要望する知事会議などの議論は「人のカネでつくってもらう発想」(松谷氏)。このため、国が決定するのではなく、地方に道路のほか鉄道や福祉に至るまで幅広く予算を渡す代わり、地域で責任をもって選択し、相応の負担を負う仕組みを導入するという考え方だ。

民営化については慎重な姿勢が目立った。長谷川氏は、政府の民営化委員会の議論に対し、従来の第三セクターとどう違うのかと疑問を述べた。横山氏、松谷氏は公団を設計し直していく上で、民営化すべき部分とそうでない部分を分けるべきだという考えだ。


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